2012年10月31日水曜日

15年 ジャイアンツvsセネタース 5回戦



6月15日 (土) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0 ジャイアンツ 25勝14敗 0.641 中尾輝三 泉田喜義
0 0 4 0 0 4 0 0 X  8 セネタース   24勝13敗3分 0.649 野口二郎

勝利投手 野口二郎 15勝4敗
敗戦投手 中尾輝三    9勝5敗

二塁打 (ジ)平山 (セ)野口
三塁打 (セ)小林

勝利打点 野口二郎 1


セネタース首位奪還

 水原茂を故障で欠くジャイアンツは千葉茂も病欠となり、二番セカンド平山菊二、八番サード楠安夫を起用する非常事態となった。

 ジャイアンツは初回、先頭の白石敏男が中前打で出塁するが、平山の投ゴロは「1-4-3」と渡ってダブルプレー。

 セネタース1回裏、先頭の苅田久徳が四球を選ぶがその後は三者凡退。2回も先頭の山崎文一が一塁への内野安打で出塁するが柳鶴震の遊ゴロは「6B-3」と渡ってダブルプレー。

 セネタースは3回、先頭の織辺由三がストレートの四球で出塁、トップに返り苅田の三ゴロの間に織辺は二進、横沢七郎の三ゴロをサード楠が一塁に悪送球する間に織辺は三進、打者走者の横沢も二塁に進み一死二三塁、野口二郎の右前打で織辺が還って1点を先制してなお一死一三塁、ここで「戦前随一のクラッチヒッター」小林茂太が中越えに三塁打を放って3-0、山崎の三ゴロで小林がホームに突っ込み楠はバックホームするがこれが悪送球となって4-0とする。心配されたサード楠の守備が露呈してしまった。

 セネタースは6回、一死後佐藤武夫がツースリーから四球を選んで出塁、織辺もストレートの四球で一死一二塁、トップに返り苅田のピッチャー強襲ヒットで一死満塁、横沢が右前にタイムリーを放って5-0、ジャイアンツベンチはここで先発の中尾輝三をあきらめて泉田喜義をリリーフに送るが、野口が三塁線を破って7-0としてなお一死二三塁、小林の三ゴロの間に三走横沢が還って8-0とする。

 野口二郎は6安打無四球12三振の快投を見せて完封、15勝目をあげて亀田忠とスタルヒンに2勝差を付けた。野口の連続自責点ゼロ記録は63回3分の1に伸びて継続中である。ジャイアンツのレフトに起用された鈴木田登満留は三打席連続三振であった。


 セネタースはジャイアンツのサード楠安夫の守備に付け込み右打者が引っ張り回してサードを狙い打ちしたようで、楠は6補殺3失策、ショートの白石も5補殺であった。中尾輝三の単調なピッチングではセネタース打線はサードを狙い打ちし易かったのではないか。むしろ川上哲治を起用するか、どうせなら意表をついて泉田喜義を先発に起用しても良かったのではないでしょうか。


 セネタースは24勝13敗3分で勝率6割4分9厘としてゲーム差無しながらジャイアンツを勝率で8厘上回り首位の座を奪還した。







*野口二郎は128球を投げて無四球12三振で今季4度目の完封、連続自責点ゼロ記録を63回3分の1に伸ばして15勝目をあげる。














     *野口二郎と小林茂太が3打点を記録して首位の座を奪還したセネタース打線。












 

2012年10月30日火曜日

15年 タイガースvsイーグルス 6回戦



6月15日 (土) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 0 0 1 0 0 0 0 0  1 タイガース  22勝16敗2分 0.579 木下勇
0 0 0 0 0 0 2 0 X  2 イーグルス 22勝16敗1分 0.579 中河美芳

勝利投手 中河美芳 3勝6敗
敗戦投手 木下勇     8勝7敗

勝利打点 岩垣二郎 2


中河美芳、88球で4安打完投勝利

 タイガース木下勇、イーグルス中河美芳という左右の軟投派による対決。

 3回まで中河はパーフェクトピッチング、木下勇も1安打無失点で序盤戦は両軍無得点が続く。

 タイガースは4回、一死後宮崎剛が三塁線にセーフティバントを決めて出塁、松木謙治郎のショートへの内野安打で一死一二塁、この日プロ入り初の四番に入った伊賀上良平の二ゴロで松木が二封されて二死一三塁、中田金一が左前にタイムリーを放って1点を先制する。

 6回まで木下勇の前に2安打無得点に抑えられてきたイーグルスは7回、先頭の菅利雄が左翼線にヒット、代走に太田健一を起用、木下政文の三ゴロでサード伊賀上は二塁に送球するがこれをセカンド宮崎が落球、この時ランナーと交錯して一走太田が怪我をしたのか代走に玉腰忠義が起用される。清家忠太郎が送りバントを決めて一死二三塁、タイガースベンチはライトを藤村隆男から森国五郎に代えて守備を固めるが、山田潔が一塁線にスクイズを決めて1-1の同点、更にファースト松木のエラーが重なり一死一三塁、トップに返り岡田福吉は一飛に倒れて二死一三塁、岩垣二郎がタイムリーピッチャー強襲ヒットを放ち2-1と逆転、これが決勝打となった。

 中河美芳は88球で4安打1四球3三振の完投、3勝目をあげる。木下勇も8回を完投して79球で5安打2四球1死球2三振2失点ながら自責点ゼロであった。両投手の好投により試合時間は1時開始、2時4分終了で1時間4分であった。

 好調イーグルスは4連勝で名古屋を抜いてタイガースと並び四位タイに浮上した。












*中河美芳は4安打完投で3勝目をあげる。公式スコアブックには時々投球数が書かれている。

















          *雑記欄には「中河88、木下79(8回) 計167球」と書かれている。








 

15年 南海vs名古屋 6回戦



6月14日 (金) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 0 0 0 0 0 2 0 3 南海     11勝26敗2分 0.297 天川清三郎
0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 名古屋 21勝16敗2分 0.568 河村章 村松幸雄 松尾幸造

勝利投手 天川清三郎 1勝4敗
敗戦投手 河村章        1勝1敗

二塁打 (名)桝
三塁打 (名)三浦

勝利打点 清水秀雄 5


天川清三郎、投打に活躍

 南海は昭和13年夏の甲子園優勝投手の天川清三郎、名古屋は左腕河村章の先発。

 南海は初回、一死後藤戸逸郎が四球で出塁、国久松一は左飛に倒れるが吉川義次が左前打を放って二死一三塁、翌日の読売新聞によるとエンドランが掛かっていたとのこと、清水秀雄が右前に先制タイムリーを放って1-0とする。

 名古屋は4回から河村に代えて村松幸雄をマウンドに送る。

 2回~7回を3安打無得点に抑えられてきた南海は8回、先頭の天川が左前打を放って出塁、前田貞行の投前送りバントをピッチャー村松がお手玉、犠打エラーが記録されて無死一二塁、トップに返り岩出清の二ゴロで前田が二封されて一死一三塁、岩出が二盗を決めて一死二三塁、ここで藤戸がスクイズを決めて2-0、なお二死三塁で国久が左前にタイムリーを放って3-0とする。

 名古屋は8回裏、先頭の三浦敏一が右中間に三塁打、芳賀直一に代わる代打高木茂の遊ゴロをファースト清水が落球、三走三浦は動けず無死一三塁、村松に代わる代打岩本章が左前にタイムリーを放って一矢を報いるがここまで。


 天川清三郎は昨年1勝でこれがプロ入り通算2勝目、昭和14年4月2日のイーグルス戦で5安打完封勝利を飾っているが、本日も5安打完投である。変化球を主体とした打たせて取るタイプで、2四球無三振のピッチングであった。打っても3打数2安打の活躍を見せて2点目のホームを踏んだ。











              *天川清三郎は5安打2四球無三振の完投で1勝目をあげる。














     *天川清三郎が3打数2安打を記録した南海打線。











 

2012年10月28日日曜日

15年 ライオンvs阪急 5回戦



6月14日 (金) 西宮

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
2 0 0 0 0 0 0 0 0  2 ライオン 10勝28敗1分 0.263 福士勇 菊矢吉男
1 0 0 2 0 2 0 1 X  6 阪急      21勝14敗3分 0.600 浅野勝三郎

勝利投手 浅野勝三郎 2勝2敗
敗戦投手 福士勇        4勝11敗

二塁打 (ラ)戸川、鬼頭 (阪)上田

勝利打点 黒田健吾 4


阪急クリーンナップトリオが8安打

 ライオンは初回、先頭の玉腰年男が中前打から二盗に成功、坪内道則は一飛に倒れるが鬼頭数雄が右前にタイムリーを放って1点を先制、戸川信夫の右翼線二塁打で1点を追加して2-0とする。

 阪急は1回裏、先頭の西村正夫が死球で出塁、中島喬の二ゴロの間に西村は二進、フランク山田伝が右前にタイムリーを放って1-2とする。

 阪急は4回、先頭の山田が二遊間に内野安打、上田藤夫の三ゴロは「5-4-3」と転送されたが二塁はセーフでセカンド西端利郎からの一塁送球は悪送球、野選と失策が記録されて無死一三塁、上田が二盗に成功、キャッチャー伊勢川眞澄からの送球を捕球した西端は三走山田のリードが大きいと見て三塁に送球するが又も悪送球となって山田が生還し2-2の同点として上田も三塁に進み無死三塁、黒田健吾が左前にタイムリーを放って3-2と逆転に成功する。

 ライオンは5回から先発の福士勇に代えて菊矢吉男をマウンドに送り、セカンドも2失策の西端に代えて前田諭治を起用する。

 阪急は6回、二死後浅野勝三郎が四球を選んで出塁、トップに返り西村がピッチャー強襲ヒット、中島喬の一塁内野安打で二死満塁、山田が左前に2点タイムリーを放って5-2とリードを広げる。

 阪急は8回、先頭の浅野が二打席連続の四球で出塁、一死後8回の守備から中島に代わってレフトの守備に入っている山下好一も四球を選んで一死一二塁、上田の左前タイムリーで6-2と突き放す。

 浅野勝三郎は7安打2四球2三振の完投で2勝目をあげる。


 阪急は三番フランク山田伝が5打数3安打3打点、四番上田藤夫が5打数2安打1打点、五番黒田健吾が5打数3安打1打点と中軸の活躍で快勝する。

 ライオンでは鬼頭数雄が4打数3安打で今季7度目の猛打賞を獲得した。これで三試合連続マルチヒットを記録して夏季シリーズに入って27打数14安打、打率5割1分9厘をマーク、今季通算153打数58安打、打率3割7分9厘でバットマンレースを独走している。










              *浅野勝三郎は7安打完投で2勝目をあげる。













     *クリーンナップトリオが合計8安打を記録した阪急打線。


















 

15年 金鯱vsタイガース 5回戦



6月14日 (金) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
1 0 0 0 0 0 0 0 0  1 金鯱       12勝25敗2分 0.324 中山正嘉
0 0 0 0 1 1 0 1 X  3 タイガース 22勝15敗2分 0.595 若林忠志

勝利投手 若林忠志 9勝8敗
敗戦投手 中山正嘉 5勝12敗

勝利打点 伊賀上良平 1


スモールベースボール

 金鯱は初回、先頭の佐々木常助が中前打で出塁、五味芳夫が三前に送りバントを決めて一死二塁、濃人渉の遊ゴロをショート皆川定之がエラーして一死一三塁、長島進が四球を選んで一死満塁、森田実の投ゴロで三走佐々木が本封されて二死満塁、荒川正嘉が死球を受けて押し出し1点を先制する。

 復調してきた金鯱先発の中山正嘉はこの日も4回までタイガース打線を2安打無失点に抑える。

 タイガースは5回、先頭の山根実が左前打から二盗に成功、若林忠志が死球を受けて無死一二塁、藤村隆男に代わる代打森国五郎の投前バントが内野安打となり、更にピッチャー中山の悪送球の間に山根が生還して1-1の同点に追い付く。

 タイガースは6回、先頭の松木謙治郎がストレートの四球で出塁、カイザー田中義雄が送って一死二塁、伊賀上良平が中前にタイムリーを放って2-1と勝ち越す。

 タイガースは8回、先頭の松木がワンスリーから四球を選んで出塁、又も田中が送って一死二塁、松木が三盗を決めて一死三塁、伊賀上の遊ゴロの間に松木が還って3-1とリードを広げる。

 若林忠志は2回から7回まで毎回ヒットを打たれる苦しいピッチングであったが要所を締めて7安打3四球1死球2三振の完投で9勝目をあげる。7回まで毎回ヒットを打たれて7安打、すなわち1イニング1本までに抑えて連打を許さなかった。


 タイガースは三番松木謙治郎が2四球1盗塁2得点、四番カイザー田中義雄が2犠打、五番伊賀上良平が1安打2打点とクリーンナップトリオによるスモールベースボールで5安打ながら7安打の金鯱に快勝した。










        *若林忠志は7安打完投で5安打の中山正嘉に投げ勝ち9勝目をあげる。













*クリーンナップトリオがスモールベースボールを見せたタイガース打線。6回と8回は先頭の松木謙治郎が四球「BB」で歩き、カイザー田中義雄が送りバント(四角で囲ってあるのが「犠打」を表します)、伊賀上良平がタイムリーと内野ゴロで打点をあげた。













 

2012年10月27日土曜日

ドラフトへの道 2013



 本日は群馬県で開催されている平成24年度第65回秋季関東地区高等学校野球大会を観戦してきました。


 11時半試合開始の銚子商業vs浦和学院戦は高崎城南球場で行われました。銚子商業が秋の関東大会に駒を進めたのは平成9年の第50回大会以来のこととなります。今年は習志野と銚子商業の古豪2校が千葉県代表として関東大会に出場します(2012年10月9日付け「懐古ブーム」参照)。銚子商業は前半押し気味に試合を進め、初回は3安打しましたが送りバントで一塁ランナーが二塁に滑り込まずにフォースアウト。一二塁から三遊間を破るヒットが出ましたが本塁タッチアウトとなって無得点。3回はランナー二塁で右前打が出て三塁コーチャーはストップさせましたが二塁ランナーが強引にホームに突っ込み5メートル手前でボールが返って来てタッチアウト。


 守備ではファーストが大きく弾いた打球をセカンドがカバーして更に一塁ベースカバーのピッチャーに送球してアウトにするプレーがあり、4回はランナー二塁から中前打でバックホーム、筆者は「これは刺せる」と叫んで本塁寸前タッチアウト。但し近くで見ていたスカウトと思われる方は「二塁ランナーが打球が落ちるのを見てからスタートを切っている」と看破していました。


 銚子商業のエースは163センチの左腕で左右のコントロールはいいのですが球威はなくいつ捕まるかという感じで見ていました。終盤は地力の差が出て浦和学院に0対3で敗れました。浦和学院とは体つきが違いました。かつての「黒潮打線」の面影はありませんがこれが県立高校の現状でしょう。



 試合終了と同時に一緒に見に行った友人の車で敷島球場に移動して東海大甲府vs佐野日大戦の観戦です。以前勤めていた会社で前橋支店に勤務していましたので土地勘が役に立ちました。こちらは1時試合開始予定でしたので5回の東海大甲府の攻撃からです。席に着いた時の打席に立っていたのがお目当ての渡邉諒でした。この打席で左中間スタンド中段近くにツーランホームランを叩き込みました。敷島球場は両翼99メートル、センター122メートルなので推定飛距離125~130メートルです。


 筆者が高校野球で目の前で左中間中段のホームランを見たのは保土ヶ谷球場での原辰徳以来のことです。東海大相模で原の同期の村中監督が指導する渡邉諒が2本目というのは感慨深いものがあります。現時点における当ブログの2013年ドラフト一位候補は東海大甲府の渡邉となります。桐光学園の松井は二位候補となります。













      *パンフレットは300円でした。















 

15年 セネタースvsイーグルス 5回戦



6月14日 (金) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 0 0 0 0 1 0 0 0  1 セネタース  23勝13敗3分 0.639 浅岡三郎 金子裕 野口二郎
1 1 1 1 0 0 0 0 X  4 イーグルス 21勝16敗1分 0.568 長谷川重一

勝利投手 長谷川重一 6勝2敗
敗戦投手 浅岡三郎     7勝5敗

本塁打 (イ)谷 1号

勝利打点 谷義夫 5


セネタース、セカンドの穴を狙われる

 この試合ではセネタース内野陣に異変が起きている。セネタースのショートは開幕以来柳鶴震であったが、この試合のセネタースのスタメンはファースト柳鶴震、セカンド野口二郎、サード横沢七郎、ショート苅田久徳となっている。柳は今季プロ野球史上最多失策記録を樹立することとなるが、苅田監督も柳の守備対策を練っているようだ。但しこの試合ではセカンドを狙われることとなり、次の試合からはショートは柳鶴震が務めることとなる。柳が今季ショートのスタメンを外れるのはこの試合と12月1日、12月6日の三試合だけである。なお、当ブログでは「日本プロ野球私的統計研究会」様の「スタメンアーカイブ」を参照させていただいております。

 イーグルスは初回、先頭の好調・岡田福吉が中前打で出塁、岩垣二郎が二塁に内野安打、寺内一隆が一前に送りバントを決めて一死二三塁、中河美芳が四球を選んで一死満塁、谷義夫の投ゴロの間に三走岡田が還って1点を先制する。

 イーグルスは2回、一死後清家忠太郎の二ゴロを“セカンド”野口二郎がエラー、山田潔の右前打で一死一三塁、山田が二盗を決めて一死二三塁、岡田の三ゴロで三走清家は三本間に挟まれてタッチアウト、二死一三塁から岩垣が右前にタイムリーを放って2-0とする。

 イーグルスは3回、一死後谷がレフトスタンドにホームランを叩き込んで3-0とする。

 イーグルスは4回、先頭の山田が左前打で出塁、トップに返り岡田は左飛に倒れて一死一塁、セネタースはここで先発の浅岡をセカンドに回し、セカンドの野口をファーストに回し、ファーストの柳に代わり金子裕が入ってピッチャー、金子のワイルドピッチで山田は二進、岩垣は中飛に倒れるが、寺内の二ゴロを“セカンド”浅岡がエラーする間に二走山田が還って4-0とリードを広げる。

 セネタースは6回、先頭の“ショート”苅田が四球で出塁、一死後野口の三ゴロの間に苅田は二進、小林茂太の中前タイムリーで1-4とする。

 長谷川重一は7回以降セネタース打線を無失点に抑えて5安打7四球1死球無三振の完投で6勝目をあげる。


 谷義夫は5個目の勝利打点を記録して勝負強さを発揮しているが、この日の勝利打点は第二打席のホームランによるものではなく第一打席の投ゴロによるものである。


 イーグルスは苅田がショートに回って弱点となったセカンド方向を狙い打ちした。初回の無死一塁での岩垣二郎の二塁内野安打はセカンド野口二郎が二塁に送球したが間に合わなかったもので、2回の野口のエラーと4回の浅岡三郎のエラーも失点に結び付いた。結局、ショート柳鶴震のファーストコンバートはセカンド苅田久徳をショートに回して結果的にセカンドが穴になるという弊害を招いたこととなり、この日だけで終了することとなる。これが柳鶴震の年間失策記録に結び付く訳である。


 6月13日付け読売新聞は「沢東洋男審判の辞任」を伝えており、沢は近くイーグルスの監督に就任する予定である。沢東洋男は早稲田大学出身なので、河野安通志、山脇正治、杉田屋守と連なるイーグルスの早稲田閥である。河野はゼネラル・マネージャー(もちろん当時はGMの肩書はありません)、山脇は総監督、沢は監督、杉田屋は助監督となる。選手では岡田福吉と岩垣二郎が早稲田大学、太田健一が早稲田実業出身で、昨年限りで応召した望月潤一も早実出身である。










               *長谷川重一は120球で完投して6勝目をあげる。















*柳鶴震をファーストにコンバートしたセネタース打線。苅田久徳がショートに回った穴を狙われたため、次の試合から柳をショートに戻すこととなる。








 

2012年10月26日金曜日

2度あることはサンドバル



 パンダのぬいぐるみを被ったパブロ・サンドバルのファンは、サンドバルの第四打席を4本指を示して迎えました。第一打席はジャスティン・バーランダーから真ん中高目ボール気味のストレートをバックスクリーンの右にソロ・ホームラン、第二打席もバーランダーから外角ストレートを左翼スタンドにツーランホームラン、第三打席はアル・アルバカーキから低目のボールの縦スラをバックスクリーンに三打席連続ホームラン。期待の第四打席は中前打に終わりました。1試合3ホームランは1926年第四戦のベーブ・ルース、1928年第四戦のベーブ・ルース、1977年第六戦のレジー・ジャクソン、昨年第三戦のアルバート・プホルスに次いで4人目、5回目となります。


 サンフランシスコのファンがパンダの被り物で観戦している理由は、人気者のパブロ・サンドバルのニックネームが「カンフー・パンダ」だからです。2008年に公開されたアメリカアニメ映画の主人公をサンドバルのニックネームに名付けたのは本日先発のバリー・ジトです。


 そのジトのピッチングが怪しくなってきてブルペンに向かうティム・リンスカムに大声援が沸き起こりました。リンスカムに人気があるというより、2008年、2009年連続サイ・ヤング賞の右椀が今年は不振でポストシーズンはリリーフに回っていながら力投を続けていることに対する声援です。ジトをリリーフしたリンスカムは7人の打者に対して5三振を奪って声援に応えました。


 本日の先発は2002年サイ・ヤング賞のバリー・ジトと2011年サイ・ヤング賞のジャスティン・バーランダーの対決となりました。ワールド・シリーズ初戦の先発投手がサイ・ヤング賞投手同士というのは1955年のドン・ニューカムvsホワイティ・フォードが初めてとなります。但しニューカムの受賞は1956年の第1回、フォードの受賞は1961年なので、既にサイ・ヤング賞を受賞している投手同士がワールドシリーズ第一戦に先発したのは1995年のオーレル・ハーシハイザーvsグレッグ・マダックスが最初となります。1963年のサンディ・コーファックス(1961年に既に受賞しているホワイティ・フォードと対決)、1968年のデニー・マクレインとボブ・ギブソン、1969年のマイク・クエイヤーとトム・シーバーもワールドシリーズ第一戦に先発していますが同年にサイ・ヤング賞を受賞していますので現在のようにワールドシリーズ終了後にサイ・ヤング賞が発表されていたのであればワールドシリーズ第一戦時点ではまだ未受賞ということになります。


 本日のサンフランシスコ・ジャイアンツはバリー・ジトからティム・リンスカムにリレーしました。ワールド・シリーズにおけるサイ・ヤング賞受賞投手同士の継投は1972年~1974年のオークランド・アスレチックスでもバイダ・ブルーからロリー・フィンガース、キャットフィッシュ・ハンターからロリー・フィンガースというリレーが見られました。但しロリー・フィンガースの受賞は1981年なのでこの時点ではサイ・ヤング賞受賞投手同士の継投とはなりません。1990年代のアトランタ・ブレーブスにはトム・グラビン、グレッグ・マダックス、ジョン・スモルツと3人のサイ・ヤング賞投手が出現しましたが、ジョン・スモルツがまだ先発していましたのでワールド・シリーズにおけるサイ・ヤング賞受賞投手同士の継投は実現しませんでした。



 当ブログにおける「2度あることは」シリーズは2012年7月14日付け「2度あることはサンドピアリス」以来2度目のこととなります。果たして2度あることは3度目が来るのでしょうか(笑)。





 

2012年10月25日木曜日

15年 ジャイアンツvs名古屋 5回戦



6月10日 (月) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 0 0 0 0 1 0 0 0  1 ジャイアンツ 25勝13敗 0.658 スタルヒン
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0 名古屋         21勝15敗2分 0.583 松尾幸造

勝利投手 スタルヒン 13勝6敗
敗戦投手 松尾幸造   4勝5敗

本塁打 (ジ)千葉 2号

勝利打点 千葉茂 6


千葉茂決勝ホーマー

 ジャイアンツvs名古屋の夏季シリーズ第一戦。春季シリーズは2勝2敗の五分であった。名古屋は松尾幸造がジャイアンツ戦5試合連続先発でこれまで1勝2敗、ジャイアンツもスタルヒンが4度目の先発でこれまで2勝2敗である。

 ジャイアンツは初回、一死後平山菊二が二塁に内野安打、二死後川上哲治が四球を選ぶが中島治康は投ゴロに倒れる。

 名古屋は初回、先頭の高木茂の投ゴロをスタルヒンが一塁に悪送球、これはセーフティバントかもしれない。村瀬一三は捕邪飛に倒れて一死一塁、これは送りバント失敗の可能性が高い。続く桝嘉一の打席で高木が二盗に成功、桝は捕邪飛に倒れ、大沢清がストレートの四球で二死一二塁、中村三郎が左前打を放って二死満塁、しかし三浦敏一は右飛に倒れる。

 ジャイアンツは2回~5回は松尾の前に無安打2四球無得点に抑えられる。名古屋も2回~5回は桝の中前打1本で無得点。2回と5回は三者三振、4回も全てのアウトが三振で5回まで9三振。

 ジャイアンツは6回、二死後千葉茂がワンワンからの3球目をライトスタンドに先制ホームラン、この1点が決勝点となった。

 スタルヒンは2安打2四球11三振で今季6度目の完封、13勝目をあげて野口二郎に続き亀田忠と並んでハーラー二位タイとなった。

 松尾幸造は9回を完投して4安打4四球3三振であったが千葉の一発に泣いた。


 千葉茂は昭和33年12月号の「ベースボールマガジン」に連載されていた「栄光は巨人と共に 第7回」で「特にぼくは左腕の松尾がきらいで、あの荒れ気味の球がどうも打ちにくくてならなかった。」と松尾幸造を苦手にしていたことを告白しているが、この日はものの見事にライトスタンドに決勝ホームランを叩き込んだ。











                 *スタルヒンは2安打完封で13勝目をあげる。

















     *千葉茂が決勝ホームランを放ったジャイアンツ打線。












 

2012年10月24日水曜日

15年 阪急vs金鯱 6回戦



6月10日 (月) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
1 0 0 0 0 0 0 0 0  1 阪急 20勝14敗3分 0.588 森弘太郎
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0 金鯱 12勝24敗2分 0.333 中山正嘉

勝利投手 森弘太郎 11勝5敗
敗戦投手 中山正嘉   5勝11敗

二塁打 (金)荒川

勝利打点 なし


内野安打3本

 阪急は初回、先頭の西村正夫の二ゴロをセカンド五味芳夫が一塁に悪送球して西村は二塁に進み、フランク山田伝は三ゴロに倒れ、浅野勝三郎の二ゴロの間に西村が三進、キャッチャー長島進の捕逸で西村が還って1点を先制する。

 阪急先発の森弘太郎はこの1点を守り抜いて5安打2四球3三振で今季5度目の完封、11勝目をあげる。

 金鯱先発の中山正嘉も9回を完投して3安打3四球5三振、自責点0の好投であった。

 阪急の3本のヒットは3回の山田の三塁内野安打、4回の上田藤夫の三塁内野安打、8回の西村の三前セーフティバントで3本とも三塁への内野安打であった。放った安打が全て三塁内野安打は史上空前の可能性がある。1安打試合であれば打たれたヒットが全て内野安打ということもありうるが、3本全てが三塁内野安打はこの日の中山正嘉以外にはないかもしれない。


 1952年6月15日、巨人の別所毅彦は松竹打線を9回二死まで完全試合に抑えながら最後の打者となるはずであった代打の神埼安隆にショートへの内野安打を打たれて1安打完封を記録した。前日の雨でグラウンドが柔らかく、ボテボテの当りとなってショート平井三郎の送球は間に合わなかった。ブルペンキャッチャーであった神埼はプロ生活唯一のヒットが別所の完全試合を阻んだことで歴史に名を残した。この試合は巨人が9対0で松竹を破ったが、川上哲治が満塁ホームランを放っている。









               *森弘太郎は5安打完封で11勝目を飾る。













*阪急打線は放った3本のヒットが全て三塁内野安打であった。二重線は内野安打を表し、西村正夫の第四打席は四角で囲ってありバントヒットを表す。打球方向を表す「・」は全て三塁になっている。














 

2012年10月23日火曜日

15年 南海vsタイガース 5回戦



6月9日 (日) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 南海          10勝26敗2分 0.278 清水秀雄
1 0 0 2 0 0 0 3 X 6 タイガース 21勝15敗2分 0.583 三輪八郎

勝利投手 三輪八郎 5勝0敗
敗戦投手 清水秀雄 6勝9敗

二塁打 (タ)皆川、中田、堀尾
三塁打 (タ)松木

勝利打点 皆川定之 2


タイムリー二塁打3本

   南海はエース清水秀雄、タイガースは三輪八郎と両左腕の対決。

   タイガースは初回、先頭の松木謙治郎がいきなり右中間に三塁打、皆川定之が右翼線にタイムリー二塁打を放って1点を先制する。

   タイガースは4回、先頭のカイザー田中義雄の遊ゴロをファースト伊藤経盛が落球、伊賀上良平の二ゴロをセカンド国久松一がエラー、ジミー堀尾文人が一前に送りバントを決めて一死二三塁、中田金一が左翼線に2点タイムリー二塁打を放って3-0とする。

 南海は8回、先頭の清水がセンター左にヒット、山尾年加寿の三ゴロでランナーが入れ替わり、山尾が二盗に成功、岡村俊昭が四球を選び前田貞行は三進に倒れて二死一二塁、末崎隆行が左前にタイムリーを放って1-3とする。

 タイガースは8回裏、先頭の本堂保次が三塁に内野安打、田中も一塁に内野安打、伊賀上が投前に送りバントを決めて一死二三塁、堀尾が中越えに2点タイムリー二塁打を放って5-1、中田の三ゴロの間に堀尾は三進、宮崎剛が四球を選んで二死一三塁、ここでダブルスチールを決めて6-1とする。

 タイガースは皆川定之、中田金一、ジミー堀尾文人が放った3本のタイムリー二塁打で快勝する。

 鶴岡一人が抜けて内野がボロボロとなった南海に入団した清水秀雄は苦難の日々を送っている。これで6勝9敗であるが、守備さえまともであれば勝ち星と負け星は軽く逆転しているでしょう。

 三輪八郎は3安打2四球8三振の完投で5勝目をあげる。当時の群馬は桐生中学と高崎商業の全盛期で高崎中学の三輪は甲子園とは無縁でした。但しタイガース入団は桐生中学の稲川東一郎監督の紹介によるものです。


 三輪の母校である高崎中学(現・群馬県立高崎高等学校)は地元では「たかたか」と呼ばれる県下随一の名門校で、福田赳夫、中曽根康弘と二人の総理大臣を輩出しています。高崎商業出身者としては群馬県では二人の総理大臣よりも偉人とも言えるサンデンの創業者である牛久保海平氏がいます。伊勢崎市に本社を構えるサンデンは「カーエアコンのサンデン」のラジオCMでお馴染みですが、1990年前後にはテレビCMも打っています。やっくんと結婚する直前の石川秀美を起用していました。石川秀美は紅白には1回しか出ていませんが、松本伊代、堀ちえみ、小泉今日子、早見優、中森明菜を輩出した花の82年組の一員です。






                 *三輪八郎は3安打完投で5勝目をあげる。
















     *3本のタイムリー二塁打で快勝してタイガース打線。














 

2012年10月22日月曜日

挑戦



 当ブログでは、メジャー挑戦を表明した花巻東の大谷翔平について、これまで何回かコメントしています。


 2012年3月18日付け「二人のダルビッシュ」ではセンバツの開幕前に書いたものですが「大谷は身体の割にはフォームが小さいので早いとこ打者に転向した方がいいと思います。」と書いています。

 同年3月22日付け「へなちょこフォーク」ではセンバツ1回戦を見た上で「花巻東の大谷君に当ブログからの忠告として、あのへなちょこフォークは投げない方がいい。ピッチャーとしてやっていくつもりならもう少しスケールの大きなピッチングを心掛けるべきでしょう。」と書いています。

 同年9月13日付け「1年ぶり」では「大谷は打者として生きていくべきであるという考えは今でも変わっていません。・・・あの野手投げではいずれピッチャーとしては限界がくると見ています。」と書いています。

 同年9月15日付け「15勝」では「リスクを背負ってでも全盛期にメジャーに挑戦する若者が増えてくれることを期待しています。・・・その意味で今年の大谷には注目しています。マイナー契約でも構わないのであちらと契約して世間をあっと言わせてほしいものです。プロ野球機構やマスコミは死活問題となりますので徹底的に抗戦してきますが。」と書きました。






 後出しじゃんけんでこれが期待の意味だと言うつもりは毛頭ありません。春の時点では調子を崩していたとの報道があったことは承知していましたが、それにしてもフォームが小さすぎると感じたまでを書きました。これで大投手に成長したら当ブログの無能ぶりを笑ってください。これまでのところ、春の惨敗、夏は甲子園に行けず、AAA世界野球選手権大会でも指名打者としては注目されましたがピッチャーとしては結果は出せずじまいでした。

 

 現時点における当ブログの見解を述べます。160キロを出した一関学院戦の画像はユーチューブで見ることができます。スライダーが外角低めに決まればまず打てませんが、抜ける球と流れる球も数多く見られます。ストレートが抜けて右打者の背中を通ることもあります。但し当ブログが春の時点で「へなちょこフォーク」と形容したフォークは良くなっています。荒削りで未完成ながら魅力に溢れる若者であることは間違いありません。フォームも春に見た時より良くなっています。本人がピッチャー志向なのでピッチャーとして行くのでしょうが、コントロールを付けるには時間がかかりそうです。ごく僅かの画像で判断するには限界がありますが、先ずはピッチャーとしてやってみるべきでしょう。打者転向はその後でも間に合います。









 

15年 イーグルスvsライオン 6回戦



6月9日 (日) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 2 0 0 2 0 2 0 2 8 イーグルス 20勝16敗1分 0.556 長谷川重一
0 0 0 0 0 3 0 0 0 3 ライオン      10勝27敗1分 0.270 近藤久 福士勇

勝利投手 長谷川重一 5勝2敗
敗戦投手 近藤久        0勝7敗

三塁打 (ラ)鬼頭

勝利打点 岡田福吉 3


長谷川重一完投勝利&5打数3安打3打点

 イーグルスは2回、先頭の長谷川重一がセンター左にヒット、木下政文の一ゴロをファースト玉腰年男が二塁に悪送球、清家忠太郎がセンター右にヒット、山田潔は三振に倒れて一死満塁、トップに返り岡田福吉の遊ゴロの間に三走長谷川が還って1点を先制、岩垣二郎の一ゴロを玉腰が一塁ベースカバーのピッチャー近藤久にトスするがこれが悪送球となる間に三走木下が還って2-0とする。

 イーグルスは5回、一死後岩垣が四球で出塁、中河美芳の投ゴロを近藤が一塁に悪送球、ライオンベンチはここで近藤に代えて福士勇をリリーフに送る。谷義夫は三振に倒れて二死一二塁、長谷川の二遊間内野安打で二者還って4-0とする。

 ライオンは6回、先頭の玉腰が右前打で出塁、坪内道則が四球を選んで無死一二塁、鬼頭数雄が右中間に三塁打を放って2-4、戸川信夫は一邪飛に倒れて一死三塁、野村高義の一ゴロをファースト中河美芳は三塁に送球するがセーフとなって野選が記録される。一死一三塁から松岡甲二に代わる代打菊矢吉男も一ゴロ、併殺崩れの間に三走鬼頭が還って3-4と詰め寄る。

 イーグルスは7回、先頭の岩垣が右前打で出塁、中河の投ゴロの間に岩垣は二進、谷が左前にタイムリーを放って5-3、寺内一隆の右前打で一死一三塁、長谷川が右前にタイムリーを放って6-3とリードを広げる。

 イーグルスは9回、一死後谷、寺内が連続四球、長谷川の二ゴロの間に二者進塁して二死二三塁、木下の遊ゴロをショート前田諭治が一塁に悪送球する間に三走谷に続いて二走寺内も還って8-3として試合を決める。

 長谷川重一は5安打9四球2三振の完投で5勝目をあげる。打っても5打数3安打3打点の活躍であった。


 2回に先制の決勝遊ゴロを放った岡田福吉は5打数無安打であったが前日の決勝ランニングホームランに続いて2試合連続で勝利打点を記録した。












             *投打に活躍した長谷川重一は5安打完投で5勝目をあげる。















     *5打数無安打の岡田福吉が2試合連続勝利打点を記録したイーグルス打線。
















 

2012年10月21日日曜日

15年 阪急vsジャイアンツ 5回戦



6月9日 (日) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
1 0 2 0 0 0 0 0 0   3  阪急            19勝14敗3分 0.576 森弘太郎 石田光彦
0 1 3 0 0 7 0 5 X 16 ジャイアンツ 24勝13敗 0.649 澤村栄治 中尾輝三

勝利投手 中尾輝三    9勝4敗
敗戦投手 森弘太郎 10勝5敗

二塁打 (阪)井野川 (ジ)吉原、川上2、中島
三塁打 (阪)浅野 (ジ)川上
本塁打 (阪)上田 1号 (ジ)中島 3号、呉 1号

勝利打点 中島治康 3


中島治康逆転スリーラン

 阪急はエース森弘太郎、ジャイアンツは復帰後2度目の登板となる澤村栄治が先発。

 阪急は初回、澤村の立ち上がりを攻めて一死後フランク山田伝がストレートの四球で出塁、浅野勝三郎がワンボールからの2球目を右中間に三塁打して1点を先制する。

 ジャイアンツは2回、二死後吉原正喜が左中間に二塁打、センター山田からの返球が逸れる間に吉原は三塁に達し、楠安夫の中前同点タイムリーで1-1とする。

 阪急は3回、先頭の西村正夫は三振、山田が左翼線にヒット、浅野は三振に倒れるが、上田藤夫が左翼スタンドにツーランホームランを放って3-1とする。続く黒田健吾は三振。

 ジャイアンツは3回裏、先頭の白石敏男の二ゴロをセカンド上田がエラー、平山菊二は二飛に倒れるが白石が二盗に成功、千葉茂の遊ゴロの間に白石は三進、川上哲治はストレートの四球で二死一三塁、ここで中島治康がレフトスタンドに逆転スリーランを叩き込んで4-3とする。

 ジャイアンツは4回から先発の澤村を下げて京都商業の後輩となる中尾輝三をリリーフに送る。この継投が成功して中尾は6イニングを2安打8四球8三振無失点に抑えた。

 阪急も4回一死後森が呉波にストレートの四球を与えると石田光彦にスイッチする。

 ジャイアンツは6回、先頭の吉原が四球、楠の三ゴロでランナーが入れ替わり、呉は四球、中尾の一ゴロが野選を誘い一死満塁、白石のピッチャー強襲ヒットで5-3、捕逸で吉原が還り6-3、平山の二ゴロをセカンド上田がファンブルと悪送球のダブルエラーで8-3、千葉の中前タイムリーで9-3、川上のタイムリー二塁打で10-3、更に満塁として暴投で11-3とする。

 ジャイアンツは8回、千葉の四球から川上の三塁打、中島の二塁打、楠の四球で一死一二塁、呉がスリーランホームランを放って16-3と大勝する。


 澤村のピッチングについて翌日の読売新聞で鈴木惣太郎は「待望の澤村登場が発表されると嵐の如き拍手を球場に捲き起こしたが澤村は未だ球速がなく・・・澤村は自ら投手を買って出たというが未だ調整を欠いて力投できず無理である。」と書いている。

 中島治康が逆転スリーランを含む5打数2安打2得点4打点で眠れる大砲がようやく目覚めたようだが、中島を目覚めさせたのは澤村を負け投手にさせる訳にはいかないという気持ちからだったのではないでしょうか。












*澤村栄治は復帰後2度目の登板。京都商業の後輩である中尾輝三が好リリーフを見せて9勝目をあげる。














     *中島治康が逆転スリーランを放ったジャイアンツ打線。











 

15年 金鯱vsセネタース 5回戦



6月9日 (日) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 2 0 0 0 0 0 0 2 金鯱      12勝23敗2分 0.343 古谷倉之助
2 0 0 0 1 0 0 0 X 3 セネタース 23勝12敗3分 0.657 金子裕 野口二郎

勝利投手 野口二郎  14勝4敗
敗戦投手 古谷倉之助 4勝9敗

二塁打 (セ)苅田

勝利打点 なし


セネタース、2度のエンドランで辛勝

 セネタースは初回、二死後野口二郎が中前打で出塁、小林茂太の右前打で二死一三塁、小林が二盗を決めて、柳鶴震がツーワンと追い込まれながら粘って四球を選び二死満塁、山崎文一が右前に2点タイムリーを放って2-0とする。

 2回まで3安打を放ちながら無得点だった金鯱は3回、先頭の佐々木常助が四球で出塁、五味芳夫の三ゴロをサード横沢七郎が一塁に低投、更にファースト野口が白球を拾って三塁に送球するがこれが悪送球となる間に佐々木が還って1-2、打者走者の五味も二塁に進む。セネタース苅田監督はここで先発の金子裕を下げてファーストの野口二郎をマウンドに送るが、森田実が野口の代わりばなを捉えて左前に同点タイムリーを放ち2-2とする。

 セネタースは5回、先頭の苅田がストレートの四球で出塁、横沢の中前打で無死一三塁、野口の二ゴロは「4-6-3」と転送されるがファースト荒川正嘉が落球して三走苅田がホームインとなり3-2と勝ち越す。

 3回途中からリリーフの野口二郎は4回以降荒川正嘉のヒット1本に抑える好投を見せ、7イニングを投げて2安打1四球5三振で14勝目をあげてハーラー単独トップに立った。野口の連続自責点ゼロ記録は53回3分の1に伸びて継続中である。


 セネタースの得点は何れもランナー一塁からのヒットで一三塁を作ったものであるが、翌日の読売新聞によると「1回野口と小林が、5回苅田と横沢が敢行した両度のヒット・エンド・ランの奏功こそ苦戦のセ軍が辛勝した所以である」とのこと。セネタースは得意の小技と野口二郎の力投で首位の座を守った。











            *野口二郎は7イニングを無失点に抑えて14勝目をあげる。










 

15年 第9節 週間MVP



 今節はセネタースが4勝1敗、金鯱が3勝1敗、タイガースが2勝2敗1分、イーグルスが2勝2敗、ジャイアンツが2勝2敗、ライオンが2勝3敗、南海が2勝3敗、阪急が1勝2敗、名古屋が1勝3敗1分であった。夏季シリーズが始まって、下位球団の健闘が目立った。



週間MVP

投手部門

 セネタース 野口二郎 2

 今節3勝0敗。25回を投げて8安打7四球23三振、自責点0で防御率0.00であった。現在46回3分の1連続自責点0を継続中である。


 金鯱 中山正嘉 1

 今節2勝0敗1セーブ。春季シリーズは不振が続いていたが今節は金鯱の3勝全てに貢献した。



打撃部門

 セネタース 横沢七郎 1

 今節18打数7安打、3割8分9厘をマーク。勝利打点2個が光る。


 ライオン 鬼頭数雄 1

 今節19打数9安打。今季通算145打数53安打、3割6分6厘でバットマンレースを独走している。


 金鯱 濃人渉 1

 今節12打数4安打1得点3打点4四球、本塁打1本。好調金鯱を引っ張る活躍を見せる。






殊勲賞

 南海 深尾文彦 1

 6月4日のジャイアンツ戦で澤村栄治からタイムリーを放ちプロ生活唯一の打点を記録する。戦地から戻ってきて3年半ぶりの登板となった澤村の唯一の失点でもあった。


 南海 前田貞行 1

 
 6月4日のジャイアンツ戦で澤村栄治から2本の三塁打を放つ。


 金鯱 室脇正信 1

 6月8日の名古屋戦で延長10回、代打決勝タイムリーを放つ。


 イーグルス 岡田福吉 1

 6月8日のタイガース戦で決勝ランニングホームランを放つ。岡田は第5節は19打数6安打で敢闘賞、第7節は一試合3盗塁で技能賞を獲得しており、三賞の常連となってきた。


 南海 岩出清 1

 今節2個の勝利打点を記録する。





敢闘賞

 ライオン 福士勇 1

 6月2日のイーグルス戦で8安打完投と共に4打数2安打3打点で勝利打点も記録する八面六臂の活躍を見せる。


 金鯱 荒川正嘉 1

 今節12打数6安打で夏季シリーズ首位打者。


 ライオン 戸川信夫 1

 今節16打数6安打、3割7分5厘。
 




技能賞

 ライオン 広田修三 1

 6月1日のジャイアンツ戦で4補殺を記録して強肩ぶりを見せつける。一方、7日のタイガース戦では4盗塁を許しているが。


 名古屋 高木茂 1

 6月2日の阪急戦で先制&決勝のホームスチールを決める。






















 

2012年10月20日土曜日

15年 タイガースvsイーグルス 5回戦



6月8日 (土) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 2 0 0 2 タイガース  20勝15敗2分 0.571 若林忠志
0 0 2 0 0 0 2 0 X 4 イーグルス 19勝16敗1分 0.543 亀田忠

勝利投手 亀田忠  13勝8敗
敗戦投手 若林忠志 8勝8敗

二塁打 (イ)岩垣
三塁打 (タ)本堂
本塁打 (イ)岡田 1号

勝利打点 岡田福吉 2


岡田福吉決勝ランニングホームラン

 イーグルスは3回、先頭の清家忠太郎の遊ゴロをショート皆川定之がエラー、山田潔は三振に倒れるがトップに返り岡田福吉が三塁に内野安打、岩垣二郎の二ゴロで岡田が二封されて二死一三塁、中河美芳が左前に先制タイムリーを放って1-0、亀田忠が中前にタイムリーで続いて2-0とする。

 6回までイーグルス先発の亀田の前に1安打に抑えられてきたタイガースは7回、先頭の本堂保次が右中間に三塁打、カイザー田中義雄が左前にタイムリーを放って1-2、松木謙治郎が右前打を放ち、捕逸で二者進塁して無死二三塁、伊賀上良平の右犠飛で2-2の同点に追い付く。

 イーグルスは7回裏、先頭の木下政文は二ゴロに倒れる。ここでタイガースベンチはセンターを山根実から森国五郎に交代、清家は二ゴロに倒れるが山田が右前打を放って二死一塁、トップに返り岡田が右中間を抜いてセンター森がもたつく間に快足を飛ばしてホームに還りランニングツーランホームラン、翌日の読売新聞は「脚力本塁打」と伝えている。

 亀田忠は8回に若林忠志と本堂にヒットを許して二死一二塁とするが田中を右飛に打ち取り、9回は三者凡退に抑えて6安打2四球8三振の完投で13勝目をあげてハーラートップの野口二郎に並んだ。


 決勝のランニングホームランを放った岡田福吉は東邦商業から早稲田大学を経て今季イーグルスに入団。3月17日のセネタース1回戦以来2つ目の勝利打点を記録した。岡田は今季で一旦現役を離れ(おそらく兵役でしょう)、昭和18年にイーグルスから黒鷲、大和と名前を変えていた大和でプロに復帰するがその後戦死することとなる。本日のランニングホームランを翌日の読売新聞は「岡田は右中間を大きく抜き交代早々の中堅手森がリレーに手間取る間に駿足を飛ばして山田と共に生還」と伝えている。リレーに手間取った森国五郎も戦死することとなる。岡田の本日のホームランはプロ野球で記録した唯一の本塁打となった。









            *亀田忠は6安打完投で13勝目をあげてハーラートップに並ぶ。














     *岡田福吉が決勝のランニングホームランを放ったイーグルス打線。











 

15年 ライオンvs南海 5回戦



6月8日 (土) 甲子園

1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
1 0 0 0 0 2 0 0 4  7 ライオン 10勝26敗1分 0.278 菊矢吉男 福士勇
0 0 0 1 0 1 0 0 1  3 南海      10勝25敗2分 0.286 天川清三郎

勝利投手 福士勇        4勝10敗
敗戦投手 天川清三郎 0勝4敗

二塁打 (ラ)鬼頭
三塁打 (南)岡村

勝利打点 なし


鬼頭数雄猛打賞

 ライオンは初回、二死後玉腰年男が四球を選んで出塁、鬼頭数雄の右前打で二死一三塁、鬼頭が二盗を決めて、戸川信夫の二遊間への内野安打で玉腰が還って1点を先制する。

 南海は4回、先頭の国久松一が四球で出塁、一死後国久が二盗に成功、キャッチャー吉川義次の悪送球もあって国久は三塁に進み、清水秀雄の二ゴロの間に国久が還って1-1の同点とする。

 ライオンは6回、一死後鬼頭が右翼線に二塁打、南海はここでセンターを深尾文彦から山尾年加寿に交代させて一息入れる。しかし戸川が中前打を放って一死一三塁、伊勢川眞澄の三ゴロをサード藤戸逸郎が二塁に悪送球する間に三走鬼頭が還って2-1と勝ち越し、これが決勝点となったが伊勢川には打点は記録されていないので勝利打点は「なし」となった。続く菊矢吉男が左翼線にタイムリーを放って3-1とする。

 南海は6回裏、一死後国久が左前打で出塁、吉川が三遊間に内野安打、清水が四球を選んで一死満塁、山尾が押出し四球を選んで2-3、ライオンベンチはここで先発の菊矢から福士勇にスイッチ、福士は岡村俊昭を遊ゴロ併殺に打ち取ってピンチを切り抜ける。

 ライオンは9回、先頭の福士が中前打、松岡甲二の投前送りバントをピッチャー天川清三郎が一塁に悪送球して無死一三塁、井筒研一に代わる代打野村高義の遊ゴロが野選を誘い三走福士が還って4-2、更に無死一三塁から西端利郎の三ゴロで三走松岡がホームを突くがここは「5-2」と渡ってタッチアウト。一死一二塁から坪内道則が左前にタイムリーを放って5-2、玉腰の二ゴロをセカンド国久が失して一死満塁、鬼頭がセンター左に2点タイムリーを放ち7-2として試合を決める。

 南海は9回裏、先頭の山尾の二ゴロをセカンド西端がエラー、一死後天川に代わる代打木村勉が左前打、前田貞行が右前打を放って一死満塁、トップに返り岩出清が左前にタイムリーを放って3-7、本塁打が出れば同点という場面を迎えるが上田良夫に代わる代打伊藤経盛は三振、国久は右飛に倒れてゲームセットを告げるサイレンが高々と鳴り響く。


 現行ルールであればリードしたまま6回途中でマウンドを降りた菊矢吉男が勝利投手となるが公式記録では福士勇に勝利投手が記録されて4勝目をあげる。


 鬼頭数雄は5打数3安打で今季通算145打数53安打で3割6分6厘、ライバル川上哲治に5分の差を付けて首位打者の座をキープしている。









     *鬼頭数雄が3安打を記録したライオン打線。
















 

2012年10月18日木曜日

15年 セネタースvs阪急 5回戦



6月8日 (土) 後楽園

1 2 3 4 5 6 7 8 9  
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0 セネタース 22勝12敗3分 0.647 浅岡三郎
1 0 0 0 0 3 0 0 X  4 阪急          19勝13敗3分 0.594 重松通雄 石田光彦

勝利投手 重松通雄 2勝0敗
敗戦投手 浅岡三郎 7勝4敗
セーブ      石田光彦 1

二塁打 (セ)浅岡
本塁打 (阪)新富 1号


石田光彦パーフェクトリリーフ

 阪急は初回、先頭の西村正夫が二遊間に内野安打、フランク山田伝が中前打を放って無死一二塁、浅野勝三郎の右飛で二走西村はタッチアップから三進、本日四番に入った上田藤夫の中犠飛で1点を先制する。

 阪急は6回、一死後黒田健吾がファウルで4球粘っ右前打で出塁、黒田が二盗を決めて、井野川利春が左翼線にヒットを放ち一死一三塁、新富卯三郎がワンスリーからファウルで6球粘り11球目をレフトスタンド放ったプロ入り初ホームランがスリーランとなって4-0とする。

 阪急先発の重松通雄は7回まで2回に浅岡に許した左翼線二塁打1本だけで無失点。8回、先頭の浅岡に中前打を打たれ、織辺由三に四球を与えて、トップに返り苅田久徳にも四球、無死満塁となったところで石田光彦のリリーフを仰ぐ。石田は横沢七郎を二飛、野口二郎を遊飛、小林茂太を右邪飛に打ち取りピンチを防ぐ。最終回も柳鶴震を左飛、村松長太郎を二飛、最後は佐藤武夫を二ゴロに打ち取り阪急が快勝する。


 重松通雄は7回3分の0を投げて2安打4四球4三振無失点で2勝目をあげる。石田光彦は2イニングをパーフェクトリリーフ、当ブログルールによりセーブを記録する。全くの推論ですが、石田はリリーフに専念したらいいクローザーになるのではないでしょうか。キレのいい速球と変化球があり、何より度胸がいい。気ムラなところがあるので先発で長いイニングを投げるより今日のような場面で使った方が持ち味が生きるのではないでしょうか。

 本日の勝利打点は先制犠飛の上田藤夫となりますが、真の殊勲打者はスリーランホームランを放った新富卯三郎です。








   *重松通雄は7回3分の0を2安打無失点、石田光彦は2イニングをパーフェクトリリーフ。












       *新富卯三郎は第三打席でファウルで6球粘ってプロ入り初ホームランを放つ。