2012年2月28日火曜日

14年 金鯱vsイーグルス 9回戦


9月15日 (金) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 1 0 3 4 金鯱     27勝41敗2分 0.397 大宮清 鈴木鶴雄 中山正嘉
2 0 0 0 0 0 0 0 0 2 イーグルス 21勝48敗1分 0.304 望月潤一 亀田忠  


勝利投手 鈴木鶴雄 2勝2敗
敗戦投手 亀田忠  11勝20敗
セーブ      中山正嘉 3


二塁打 (イ)菅


中山正嘉、3セーブ目


 イーグルスは初回、先頭の岩垣二郎が右前打で出塁、杉田屋守の三ゴロの間に岩垣は二進、太田健一が四球、高須清も四球を選んで一死満塁、菅利雄が左翼線に二塁打を放って2点を先制する。

 金鯱先発の大宮清は2回にも望月潤一に左前打を許すが3回以降6回まではイーグルス打線を無安打に抑える。

 一方、イーグルス先発の望月も翌日の読売新聞によると「可なりスピードの乗った曲直球は金鯱の打棒を完全に抑えつけ」、6回まで金鯱打線を2安打無得点に封じ込める。ヒットを許したのは2回だけで5回に先頭の瀬井清を四球で歩かせるが続く大宮清の二飛に瀬井が飛び出し併殺で切り抜け、残りの4ニングは三者凡退に抑える。

 金鯱は7回、先頭の野村高義が四球で出塁、小林利蔵の左前打で無死一二塁、ここでイーグルスベンチは先発の望月から亀田忠にスイッチ、ところが亀田がボークを犯して無死二三塁、小林茂太の左犠飛で1-2と追い上げる。

 金鯱は7回裏から先発の大宮に代えて鈴木鶴雄をマウンドに送る。鈴木は7回、8回を三者凡退に抑える。

 金鯱は9回、先頭の小林利蔵が左前打で出塁、小林茂太も左前打を放って無死一二塁、山本次郎の左前打で二走小林利蔵は三塁ベースを蹴ってホームに向かうがレフト野村高義からのバックホームにタッチアウト。但し野村には補殺が記録されていないので何か変則的な走塁であったようで、翌日の読売新聞には「小林利の暴走で一死を得た」と書かれている。鈴木に代わる代打中山正嘉が四球を選んで一死満塁、長島進に代わる代打森田実は三振に倒れて二死満塁、佐々木常助の当りは緩いライナーとなってファースト方向に飛ぶがこれを菅利雄が落球して2-2の同点とする。当り損ねのライナーは野手からするとタイミングが外されることがあるが佐々木の落球は正にそんな感じだったのではないか。トップに返り五味芳夫が右前にタイムリーを放って3-2と逆転、濃人渉が押出し四球を選んで4-2とする。

 9回裏の金鯱のマウンドには鈴木鶴雄の代打に出た中山正嘉がそのまま上る。

 イーグルスは9回裏、先頭の高須が四球で出塁、菅は二飛に倒れ、木下政文は三振、伏見五郎が右前打を放って二死一二塁、山田潔に代わる代打古川正男の遊ゴロが野選を誘い二死満塁、しかし最後は期待の亀田が三振に倒れて万事休す。

 金鯱は総勢19人を注ぎ込んでの逆転勝利となった。中山正嘉には当ブログルールにより今季3つ目のセーブが記録されてセーブ王争いの単独トップに躍り出た。






               *金鯱は19人を繰り出して逆転勝ち。







            *中山正嘉二は当ブログルールによりセーブが記録される。



2012年2月26日日曜日

14年 タイガースvs金鯱 9回戦


9月14日 (木) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 3 1 1 2 3 0 1 2 13 タイガース 45勝22敗2分 0.672 若林忠志
2 0 2 0 0 1 0 0 0  5          金鯱 26勝41敗2分 0.388 鈴木鶴雄 内藤幸三 古谷倉之助 磯部健雄


勝利投手 若林忠志  15勝4敗
敗戦投手 古谷倉之助 6勝13敗


二塁打 (タ)皆川、伊賀上
三塁打 (タ)門前2
本塁打 (タ)富松 2号

富松信彦、第2号ホームラン


 金鯱は初回、先頭の五味芳夫が右前打で出塁、濃人渉が投前に送りバントを決めて野村高義四球で一死一二塁、小林利蔵の遊ゴロをショート皆川定之がエラーする間に五味が還って1点を先制、小林茂太の三塁内野安打で一死満塁、瀬井清の中犠飛で2-0とする。

 タイガースは2回、先頭の景浦将が左前打で出塁、二死後富松信彦が右翼スタンドに同点ツーランを叩き込んで2-2、皆川が中越えに二塁打、伊賀上良平が右翼線に逆転二塁打を放って3-2として金鯱先発の鈴木鶴雄をKOする。

 タイガースは3回、金鯱二番手の内藤幸三から松木謙治郎が四球を選んで出塁、ジミー堀尾文人の遊撃内野安打で無死一二塁、景浦の遊ゴロで堀尾が二封されて一死一三塁、門前真佐人の左犠飛で4-2とする。

 金鯱は3回裏、先頭の濃人が中前打で出塁、一死後濃人の二盗と小林利蔵の四球で一二塁、小林茂太が左前にタイムリーを放って3-4、レフト富松からの返球を中継したサード伊賀上良平の悪送球の間に二者進塁して一死二三塁、瀬井が二打席連続犠飛となる右飛を打ち上げて4-4の同点に追い付く。

 ここまではシーソーゲームであったが中盤戦以降はタイガース打線が打ちまくった。

 タイガースは4回、一死後皆川が中前打で出塁、伊賀上が四球を選んで一死一二塁、金鯱はここで三番手として古谷倉之助がマウンドに上る。内藤は3年振りに戦場から戻ってきて2度目の登板となったがまだ体力が回復していないようである。トップに返り本堂保次が左前にタイムリーを放って5-4と勝ち越す。

 タイガースは5回、先頭の景浦が四球を選んで出塁、門前が中越えに三塁打を放って6-4、一死後富松の三塁内野安打で門前が還って7-4とする。

 タイガースは6回、松木が右前打、堀尾が左前打、一死後門前が左中間に二打席連続三塁打を放って9-4、若林忠志の左犠飛で10-4とリードを広げる。

 金鯱は6回、古谷が左前打を放つと代走に岡野八郎を起用、長島進が中前打、佐々木常助の投ゴロの間に二者進塁し、五味が四球を選んで一死満塁、濃人の中犠飛で5-10とする。

 タイガースは8回、一死後門前が死球を受けて出塁、代走に小林吉雄を起用、若林が中前打を放って一死一二塁、富松の遊ゴロで若林が二封されて二死一三塁、ここでダブルスチールを決めて小林が生還し11-5とする。

 タイガースは9回、先頭の伊賀上が右前打で出塁、本堂の投ゴロでランナーが入れ替わり、松木のピッチャー強襲ヒットで一死一二塁、堀尾の左前タイムリーで12-5、カイザー田中義雄の三塁内野安打で松木が還って13-5として大勝する。

 若林忠志は9安打6四球2三振の完投で15勝目をあげる。タイガースは18安打で13得点、秋季シリーズの出だしでつまずき打線の梃入れのためか若林を六番に起用したが猛打炸裂となった。


 8回に代走に起用された山口中学出身・小林吉雄はプロには3年間在籍するが通算9試合、6打数無安打1得点1盗塁の記録を残している。唯一の得点と盗塁が本日記録した富松とのダブルスチールとなったホームスチールである。全得点に占めるホームスチール率10割の記録は、プロ野球史上唯一のものかもしれない。

 富松信彦が甲子園球場でオーバーフェンスのホームランを放った。当時の甲子園は両翼110mで右中間と左中間は膨らみをもつ構造となっており、甲子園ではジミー堀尾文人、景浦将、鶴岡一人(2本)に次いで今季5本目のホームランである。





*2回の富松信彦のホームランは翌日の読売新聞に「2回富松が右翼観覧席へ打込んだ本塁打」と明記されています。


14年 名古屋vsジャイアンツ 9回戦


9月14日 (木) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8  9  計
0 0 0 0 0 0 0 0  0  0 名古屋         25勝42敗3分 0.373 西沢道夫
0 0 0 0 0 0 0 0 1X 1 ジャイアンツ 48勝18敗2分 0.727 スタルヒン


勝利投手 スタルヒン 31勝10敗
敗戦投手 西沢道夫     4勝7敗



三塁打 (ジ)中島

スタルヒンが完封、中島治康がサヨナラ打


 スタルヒンは9回まで名古屋打線を散発5安打に抑えて完封。

 ジャイアンツは9回、一死後白石敏男が四球で出塁、水原茂が左前打で続いて一死一二塁、千葉茂は二飛に倒れて二死一二塁、中島治康が左前にサヨナラ打を放ってジャイアンツが打っ棄る。

 翌日の読売新聞によると「スタルヒンの剛速球に織込む緩曲球の配合は名軍打棒を完全に抑え」とのこと。スタルヒンは5安打6四球2三振の完封で31勝目をあげる。6回に先頭の石田政良が左前打、大沢清を右飛に打ち取り加藤正二は三振、石田が二盗を決めると三浦敏一四球で二死一二塁、中村三郎から三振を奪う。結局奪三振はこの回の2個だけであった。チェンジ・オブ・ペースを駆使して打ち取っていったようです。この日のピッチングにこの年スタルヒンが42勝をあげることができたヒントが隠されています。剛速球一本やりで抑え込むピッチングでは無く、スタミナ配分を考えたピッチングをしていることがうかがえます。

 西沢道夫については「一方名軍西沢も鋭く切れ込むカーブと大きく落ちるドロップで巨人軍の進撃を阻み・・・」とのこと。当ブログでは以前から西沢はカットボールを投げていたのではないかと推測しているとお伝えしてきていますが、本日の読売新聞の記述からもカーブ(当時はドロップ)以外に小さく速く変化するボールを投げていたことがうかがえます。西沢を「カットボールの元祖」とする仮説は当っている可能性があります。

 西沢は8回3分の2を投げて7安打9四球1三振。コントロールが乱れたというよりはピンチを敬遠で凌いできたようで、翌日の読売新聞は「西沢が強打者揃いの後続を或は敬遠し或はカーブで凡退せしめた場面は手に汗を握らせた。」と伝えています。4回は先頭の中島が左中間に三塁打、川上哲治を遊飛に打ち取るとアチラノ・リベラ(アデラーノ・リベラ)と平山菊二は四球、吉原正喜は三邪飛、スタルヒンを投ゴロに打ち取る。8回も先頭の千葉に四球を与え中島の内野安打にエラーが絡んで無死二三塁のピンチを迎えたが川上を二ゴロ、リベラを遊ゴロに打ち取り平山を歩かせて吉原を三振に仕留める。吉原正喜は前節週間MVPに輝いたように絶好調であるが、ジャイアンツ強力打線においては弱点と見られているようで、西沢はリベラ、平山との勝負を避けて吉原で切っている。

 ジャイアンツはシーズン前半は川上の猛打で勝ち進んできたが、後半になると川上が調子を落とし、前半戦は不振に喘いでいた中島が後半になって調子を上げてきた。ちょっと隙が見当たらず、首位固めに入ったと見てよい。





     *スタルヒンは名古屋打線を5安打に抑えて今季七度目の完封勝利を飾る。








*中島治康は4打数3安打三塁打1本、5塁打1打点で9回裏サヨナラヒットを放つ。




14年 ライオンvs南海 9回戦


9月14日 (木) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 1 0 0 0 1 0 0 2 ライオン 23勝42敗5分 0.354 岡本利之
0 0 0 1 0 0 4 0 X 5 南海   29勝37敗4分 0.439 劉瀬章


勝利投手 劉瀬章     6勝8敗
敗戦投手 岡本利之 1勝4敗


二塁打 (ラ)水谷
本塁打 (南)鶴岡 7号

鶴岡一人、景浦に並ぶ第7号


 ライオンは3回、先頭の坪内道則が中前打で出塁、玉腰年男が投前に送りバントを決めて水谷則一の右翼線二塁打で1点を先制する。

 ライオン先発の岡本利之は丁寧なピッチングで南海打線のタイミングを外して3回までパーフェクトピッチング。遊飛が4個、遊ゴロが2個、外野飛球が3個。

 南海は4回、一死後小林悟楼の遊ゴロをショート松岡甲二がエラー、鶴岡一人は中飛に倒れるが小林が二盗を決めて二死二塁、岡村俊昭の遊ゴロを松岡が一塁に悪送球する間に小林が還ってノーヒットで1-1の同点に追い付く。更に吉川義次の捕邪飛をキャッチャー鈴木秀雄が落球するが岡本は吉川を三振に打ち取る。

 ライオンのショート松岡は6回にも2つのエラーを犯して4失策を記録して山本尚敏と交代する。この回は二死満塁となるが中村金次は左飛に倒れる。

 ライオンは7回、先頭の山本の三ゴロをサード鶴岡が一塁に悪送球、この場面を翌日の読売新聞は「名人鶴岡が珍しくも三ゴロを悪投して二塁に生かし・・・」と伝えている。二死後玉腰が四球を選んで一二塁から水谷が右前にこの日2本目のタイムリーを放って2-1と勝ち越す。

 6回まで劉瀬章の左前打1本に抑えられてきた南海は7回、先頭の中田道信が中前打で出塁、劉は三振に倒れるが上田良夫が右前打を放って一死一二塁、トップに返り平井猪三郎が左前打を放つ。翌日の読売新聞によると「鬼頭の本塁送球よく中田を塁前に刺したかに見えたが不運にも背に当って一塁方面のネット際に転々、剰え(あまつさえ=筆者注)捕手からの送球を岡本がファンブルする間に二者の生還を許し・・・」とのこと。この間に二走中田に続いて一走上田も還って3-2と逆転する。中田の生還は平井のタイムリーによるものと判定されて平井には打点が記録されている。平井の二進には鬼頭の悪送球が記録され、平井の三進には岡本のエラーが記録されている。一走上田の生還も鬼頭と岡本のエラーによるもの。一死三塁から小林の遊ゴロの間に平井が生還して4-2、ここで鶴岡が左翼スタンドに景浦将とホームランダービー首位に並ぶ第7号を叩き込んで5-2とする。

 劉瀬章は6安打4四球1三振の完投で6勝目をあげる。


 岡本利之は味方の7失策(本人の1失策を含む)にもめげず粘りのピッチングを見せて8回を完投した。米子中学(現・鳥取県立米子東高等学校)出身の岡本は戦後は山陰高校球界の指導者として活躍し、母校を率いて山陰高校球界史上唯一の甲子園準優勝に導くこととなる。本日見せた粘り強いピッチングこそが、戦後指導者として花開く原点であろう。


 スコアブックに残された記録では7回の4失点は全て自責点となっている。野球規則では「投手の守備上の失策は、自責点を決定する場合、他の野手の失策と同様に扱って、自責点の要素からは除かれる」はずなので、鬼頭と岡本のエラーが絡む上田と平井の生還は自責点とはならないはずです。昭和32年にベースボール・マガジン社から刊行された広瀬謙三著「野球スコアのつけ方」にも「投手の守備上の失策は、他の野手の失策と同様に扱って、自責点決定の場合の要素からは除かれる。」と書かれています。昭和14年当時でも同様の解釈であったと考えられますので記載ミスでしょう。






               *劉瀬章は6安打完投で6勝目をあげる。








*南海の7回の4得点は全て自責点と記録されている。得点を表す「O」の中に「E」(アーンドラン=自責点)が書かれています。4回の得点には「E」はありません。


2012年2月25日土曜日

14年 第18節 週間MVP


 今節はジャイアンツが2勝0敗1分、南海が3勝1敗1分、金鯱が3勝1敗、セネタースが3勝2敗、阪急が2勝2敗、ライオンが2勝3敗、イーグルスが2勝3敗、タイガースが1勝3敗、名古屋が1勝4敗であった。
 阪急とタイガースがもたつき、ジャイアンツが首位固めに入ってきた。






週間MVP


投手部門


 南海 政野岩夫 2


 7日のジャイアンツと引き分けた試合では5回を1失点、8日の金鯱戦では6回3分の2を無失点、11日のセネタース戦では野口二郎と投げ合って1対0で完封。




 金鯱 古谷倉之助 1


 6日のライオン戦では4回3分の2を無失点、12日のセネタース戦は完投で今節2勝0敗。懸河のドロップを駆使して「のらりくらり投法」が冴えわたる。




 セネタース 野口二郎 4


 今節五連投で3勝2敗。6日~8日は三日間三連投三連勝を飾る。






打撃部門


 ジャイアンツ 吉原正喜 1


 今節11打数6安打3得点4打点3四球。秋季シリーズ現在首位打者。




 セネタース 尾茂田叶 1


 今節五試合連続ヒットで17打数7安打1得点5打点5四球。








殊勲賞


 南海 中田道信 1


 11日のセネタース戦で苅田久徳の盗塁を二度刺す。




 ライオン 近藤久 1


 今節代打で4打数3安打1得点1打点を記録する。11日のタイガース戦では代打決勝タイムリーを放つ。「野球の記録で話したい」様によると「登板数が出場試合数の70%を越え、打席数300以上の投手の打撃成績」では通算425打数91安打、打率2割1分4厘1毛の近藤久は22位の澤村栄治2割1分3厘8毛を上回り歴代第21位にランクインしています。



敢闘賞

 セネタース 柳鶴震 1

 今節20打数8安打4得点2打点2四球の活躍を見せる。


 名古屋 村瀬一三 2

 今節五試合連続安打、五試合連続得点を記録。16打数8安打6得点2打点3四球2盗塁。


 内藤幸三 1

 戦場から戻ってきた内藤は11日の名古屋戦で3年ぶりのマウンドに上りセーブを記録する。



技能賞

 金鯱 中村輝夫 1

 6日のライオン戦でホームスチールを決めるなどの活躍。


 阪急 フランク山田伝 1

 9日の名古屋戦で鮮やかにバスターを決めて勝利を呼び込む。












 



14年 金鯱vsセネタース 9回戦


9月13日 (水) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 3 0 0 0 0 1 4 金鯱      26勝40敗2分 0.394 古谷倉之助
0 0 0 0 0 0 0 0 2 2 セネタース 37勝28敗4分 0.569 伊藤次郎 野口二郎 浅岡三郎


勝利投手 古谷倉之助 6勝12敗
敗戦投手 野口二郎  25勝15敗


二塁打 (金)小林茂

懸河のドロップ


 3回までセネタース先発の伊藤次郎に抑えられてきた金鯱は4回、先頭の濃人渉が左前打で出塁、続く野村高義の右飛をライト家村相太郎が落球して無死一二塁、セネタースはここでファーストの野口二郎をマウンドに送りライトは森口次郎に交代、ファーストには浅岡三郎が入る。小林利蔵は野口の代わりばなを捕えて中前打を放ち無死満塁、勝負強い小林茂太が左越えにタイムリー二塁打を放って2点を先制、古谷倉之助が右犠飛で続いて3-0とする。

 6回からセネタースの三番手としてマウンドに上った浅岡に無安打に抑えられてきた金鯱は9回、二死後瀬井清が中前打で出塁、長島進の右前打で二死一三塁、エンドランが掛かっていたか、ここでダブルスチールを決めて4-0とする。

 セネタースは9回裏、先頭の苅田久徳が四球を選んで出塁、横沢七郎の左前打で無死一二塁、尾茂田叶の中前タイムリーで1-4、野口の投ゴロで尾茂田は二封されて一死一三塁、佐藤武夫の遊ゴロの間に三走横沢が還って2-4、しかし最後は本日3安打の柳鶴震が遊ゴロに倒れて万事休す。

 古谷倉之助は久々に快投を見せた。初回、先頭の苅田を三振に仕留めると波に乗り、8回まで柳に許した3安打のみで無失点、9回に2点を奪われたが5安打2四球4三振の完投で6勝目をあげる。


 古谷倉之助の「のらりくらり投法」を翌日の読売新聞は「懸河のドロップと外角を綺麗に切るカーブ、それにインシュート・ボールを交える多種多様の球質を巧みに配合して・・・投げ勝った金鯱古谷の快投は老巧投手としての本領を遺憾なく発揮し・・・」と伝えている。


 4打数3安打とセネタースで一人気を吐いた柳鶴震は1940年にシーズン最多失策の記録を樹立することとなりプロ野球史上最もエラーの多い野手のようですが、強肩と時折見せる強打でショートのポジションを守っている。大和球士著「真説 日本野球史」昭和篇その三に「柳鶴震・・・桐生中、好打、肩の強さでは南海の国久に次ぐ。強肩では関東代表。」と紹介されています。





*懸河のドロップを武器とする「のらりくらり投法」の古谷倉之助は5安打完投で6勝目をあげる。


14年 イーグルスvsジャイアンツ 9回戦


9月13日 (水) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 3 0 0 0 3 イーグルス   21勝47敗1分 0.309 望月潤一 亀田忠 清家忠太郎
0 3 0 1 4 0 1 0 X 9 ジャイアンツ 47勝18敗2分 0.723 中尾輝三


勝利投手 中尾輝三 8勝4敗
敗戦投手 亀田忠  11勝19敗


二塁打 (イ)菅2

中尾輝三、3安打完投


 ジャイアンツは2回、先頭のアチラノ・リベラ(アデラーノ・リベラ)がセンター右にヒット、平山菊二が左前打、吉原正喜が三前に内野安打、これはセーフティバントの可能性が高い。中尾輝三が押出し四球を選んで1点を先制、トップに返り白石敏男の2点タイムリーで3-0とする。イーグルスは3回から先発の望月潤一に代えてサードで先発出場した亀田忠をマウンドに送る。

 ジャイアンツは4回、先頭の平山が右前打で出塁、吉原が中前打、平山はピッチャー亀田からの牽制に刺されるが中尾が四球を選んで一死一二塁、トップに返り白石の遊ゴロで一走中尾は二封されて二死一三塁、水原茂の左前タイムリーで4-0とする。

 ジャイアンツは5回、川上哲治の中前打、リベラの左前打、平山の三塁内野安打で無死満塁、吉原が押出し四球を選んで5-0、中尾は三振に倒れるが白石、水原、千葉茂が三連続押出し四球を選んで8-0、この後は中島治康、川上が連続三振。亀田忠はこの回3連打を浴びて4つの押出し四球を出して3つの三振を奪った。亀田伝説に加えるべきイニングと言えるでしょう。

 イーグルスは6回、一死後寺内一隆が四球で出塁、岩垣二郎の一ゴロでランナーが入れ替わり、高須清は四球に歩いて二死一二塁、四番亀田の遊ゴロをショート白石がエラーする間に二走岩垣が還って1-8、なお二死一二塁から菅利雄が左中間に2点タイムリー二塁打を放って3-8と反撃する。イーグルスは6回から亀田を下げて清家忠太郎を三番手としてマウンドに送る。

 ジャイアンツは7回、中尾、白石が連続四球、水原は左飛に倒れるが千葉の中前打で一死満塁、中島の左犠飛で9-3と突き放す。


 中尾輝三は3安打7四球7三振、3失点ながら自責点ゼロの完投で8勝目をあげる。ジャイアンツはイーグルスに9連勝となったがその内中尾が4勝をあげている。中尾はルーキーシーズンのイーグルス戦で自信を付けて通算209勝をあげることとなる。

 3安打に抑えられたイーグルスでは二塁打2本の菅利雄だけが目立った。






              *中尾輝三は3安打完投で8勝目をあげる。



 

2012年2月23日木曜日

14年 阪急vsライオン 9回戦


9月13日 (水) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
5 1 0 0 2 0 0 4 1 13 阪急      45勝22敗1分 0.672 荒木政公
0 0 2 0 0 0 0 0 0  2  ライオン 23勝41敗5分 0.359 菊矢吉男 福士勇 近藤久


勝利投手 荒木政公    9勝1敗
敗戦投手 菊矢吉男 13勝16敗


二塁打 (阪)山下好、田中、西村


石井武夫、6打数3安打3打点


 阪急は初回、一死後西村正夫が中前打、上田藤夫が投前に内野安打、山下好一の右翼線二塁打で1点を先制、田中幸男も右翼線に二塁打を放って二者が還り3-0、ライオンは早くも先発の菊矢吉男をあきらめて二番手に福士を投入する。石井秋雄の右前タイムリーで4-0、伊東甚吉の三ゴロをサード岡本利之がエラーして一死一二塁、日比野武の遊ゴロをショート山本尚敏がエラーする間に二走石井が還って5-0とする。

 阪急は2回、先頭の西村が右中間に二塁打、二死後西村が三盗に成功、田中が四球で歩いて石井の三塁内野安打で6-0とする。

 ライオンは3回、先頭の山本が左前打、福士が四球を選んで無死一二塁、トップに返り坪内道則のタイムリー左前打で1-6、玉腰年男の右翼線ヒットで無死満塁、水谷則一の二ゴロ併殺の間に三走山本が還って2-6とする。

 3回、4回と三者凡退の阪急は5回、田中が四球、一死後伊東が中前打と滝川中学出身のルーキーコンビが一二塁のチャンスを作り、日比野が遊撃に内野安打、更にショート山本の一塁悪送球が加わり二走田中が生還、続く荒木政公の遊ゴロの間に伊東も還って8-2とする。

 阪急は8回、一死後上田が左前打と捕逸で二塁に進み、山下好一の四球を挟んで田中が中前にタイムリー、石井が右前にタイムリー、伊東も中前にタイムリー、日比野の左前打で一死満塁として福士をKO、三番手に近藤久が登板、荒木の二ゴロの間に石井が還りこの回4点を追加して12-2、9回には上田が右前打で出塁するとキャッチャー鈴木秀雄が連続捕逸を犯して上田は三塁に進み、更に鈴木からピッチャー近藤への送球が悪送球となる凡失の間に上田が還って13対2で大勝する。

 阪急打線は18安打を放って13得点。西村正夫、上田藤夫、石井武夫が3安打の猛打賞、田中幸男と石井が3打点を記録した。


 荒木政公は7安打2四球3三振の完投で9勝目をあげる。荒木にとってはこれが今季最後の勝利となる。荒木は今季で兵役に就き還ってくることはなかった。すなわちこの勝利が生涯最後の勝利となる。





       *荒木政公は7安打完投で今季9勝目、生涯最後の勝利をあげる。




2012年2月22日水曜日

14年 ジャイアンツvs阪急 9回戦


9月12日 (火) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 3 0 0 0 0 3 0 4 10 ジャイアンツ 46勝18敗2分 0.719 川上哲治 スタルヒン
1 1 0 5 0 0 0 0 0  7  阪急       44勝22敗1分 0.667 重松通雄 森弘太郎 石田光彦 高橋敏


勝利投手 スタルヒン 30勝9敗
敗戦投手 石田光彦    8勝6敗


二塁打 (ジ)川上、吉原
三塁打 (ジ)川上2、水原 (阪)山田

スタルヒン30勝!


 ジャイアンツは川上哲治が先発。第二試合でタイガースが敗れたのを見て余裕ができたか。阪急の先発は8月6日にタイガースを完封した以来の登板となる重松通雄。

 阪急は初回、先頭のフランク山田伝が四球で出塁、西村正夫の二ゴロはセカンド千葉茂からショート白石敏男に転送されるが白石が落球、上田藤夫が一塁線に送りバントを決めて一死二三塁、ワイルドピッチで山田が生還して1点を先制する。

 ジャイアンツは2回、一死後川上が左中間に三塁打、アチラノ・リベラ(アデラーノ・リベラ)の二ゴロの間に川上が還って1-1の同点、リベラには打点が記録される。セカンド伊東甚吉のエラーによりリベラも一塁に生きて、平山菊二の右前打でリベラが三塁に走りライト西村からの三塁送球の間に打者走者の平山も二塁に進み、このチャンスに吉原正喜が中前に2点タイムリーを放ち3-1と逆転に成功する。

 しかし川上はストライクが入らなかった。阪急は2回裏、先頭の田中幸男が四球で出塁、日比野武の投ゴロの間に田中が二進、送りバントは記録されていない。重松も四球を選び、トップに返り山田は三振に倒れるが西村も四球に歩いて二死満塁、ジャイアンツ藤本定義監督は川上をファーストに回しファースト永澤富士雄に代わりスタルヒンがマウンドに上る。しかし肩ができていなかったのか上田は押出し四球で2-3、山下好一は三振に倒れてスリーアウトチェンジ。

 阪急は4回、一死後山田が右前打から二盗に成功、西村の左前打で一死一三塁、上田の右前タイムリーで3-3、三人の流し打ちで同点に追い付く。山下好一が四球を選んで一死満塁、山下実が中前に逆転の2点タイムリーを放って5-3、伊東甚吉の投ゴロで山下実が二封されて二死一三塁、伊東が二盗を決めて二死二三塁、田中の一塁内野安打が2点タイムリーとなって7-3とする。阪急は逆らわないバッティングで苦手スタルヒンを遂に攻略した、かに見えた。

 阪急先発の重松は3回、4回を無失点で切り抜けるとお役御免となり5回から二番手として森弘太郎がマウンドに上る。森は5回、6回と1安打ずつを許しながら無失点で切り抜けるが7回に捕まった。

 ジャイアンツは7回、一死後千葉、中島治康が連続四球、川上が左中間に三塁打を放って二者還り5-7、リベラの二ゴロの間に川上が還って6-7と1点差に追い上げる。

 ジャイアンツの8回は三者凡退。阪急は8回裏、先頭の山田が左中間に三塁打、西村の一塁線内野安打で山田は動けず無死一三塁、これは西村のドラッグバントの可能性が高い。西村が二盗を決めて無死二三塁、しかし上田と山下好一は連続三振、山下実は四球、これは敬遠でしょう、伊東が遊ゴロに倒れて無得点に終わる。このチャンスを活かせなかったことが逆転負けにつながった。

 ジャイアンツは9回、先頭の水原茂が左中間に三塁打、阪急ベンチはここで森に代えて三番手として石田光彦をマウンドに送る。しかし千葉が中前にタイムリーを放って7-7の同点、中島は三前に内野安打、藤本監督は送りバントを使わないので中島自らの考えでセーフティバントの可能性が高い。もちろん失敗しても最低二塁にはランナーを送る腹だったのでしょう。ここで川上が右中間を破り千葉を迎え入れて8-7と逆転してなお無死二三塁、阪急ベンチは石田に代えて高橋敏を四番手としてマウンドに送り込むが、リベラの右犠飛で9-7、二死後吉原の左中間二塁打で10-7とする。

 スタルヒンは阪急の最終回を三者凡退に退けて7回3分の1を8安打2四球5三振5失点、自責点5ではあったがシーズン記録としては我が国初の30勝目を記録する。因みに二シーズン制の昭和12年は澤村栄治が春24勝・秋9勝で年間通算33勝、野口明が春19勝・秋14勝で33勝、昭和13年はスタルヒンが春14勝・秋19勝で33勝を記録しています。


 川上哲治が5打数3安打3打点、二塁打1本、三塁打2本。吉原正喜が5打数3安打3打点、二塁打1本。アチラノ・リベラ(アデラーノ・リベラ)が4打数無安打ながら3打点の活躍を見せた。川上の2本の三塁打は何れも左中間を抜いたものである。千葉茂の自伝「猛牛一代の譜」によると川上の打者転向のきっかけは藤本監督と三原脩が話し合ってピッチャーとしては使えなさそうなので打撃練習をさせたところ「三原好みのセンター中心に打球が鋭く集中した」からで、「左中間にさかんに好打して、打撃の川上としてスタートをきるのであります。」と書いている。本日の試合のことを言っているのかもしれません。





                 *スタルヒンが30勝目を記録する。






2012年2月20日月曜日

14年 南海vsタイガース 9回戦


9月12日 (火) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 0 9 0 0 0 0 0 10 南海         28勝37敗4分 0.431 劉瀬章 宮口美吉
0 3 0 1 1 0 1 0 0  6 タイガース 44勝22敗2分 0.667 木下勇 三輪八郎


勝利投手 宮口美吉 7勝11敗
敗戦投手 木下勇     1勝1敗


二塁打 (南)吉川2 (タ)堀尾、本堂、伊賀上
三塁打 (タ)景浦
本塁打 (タ)景浦 7号 

景浦将、孤軍奮闘


 南海は初回、一死後小林悟楼が四球を選んで出塁、鶴岡一人の左前打で小林は三塁に走り一死一三塁、岡村俊昭の左前タイムリーで1点を先制する。

 タイガースは2回、先頭のジミー堀尾文人が左翼線に二塁打、二死後木下勇が右前にタイムリーを放って1-1の同点、伊賀上良平が左前打で続いて二死一二塁、トップに返り本堂保次が左中間に2点タイムリー二塁打を放って3-1と逆転する。

 南海は3回から先発の劉瀬章をあきらめて宮口美吉をマウンドに送る。

 南海は4回、岡村三振、中村金次は二ゴロに倒れて二死無走者、ここから吉川義次の左中間二塁打、中田道信の四球、宮口の右前打で二死満塁、上田良夫の遊ゴロをショート岡田宗芳が痛恨のエラー、三走吉川と二走中田が相次いでホームに還り3-3の同点とする。トップに返り平井猪三郎の三塁内野安打で二死満塁、小林のピッチャー強襲ヒットで宮口に続いて二走上田も還って5-3と逆転、ワイルドピッチで二死二三塁、鶴岡が中前に2点タイムリーを放って7-3、鶴岡が二盗を決めて岡村の右前タイムリーで8-3、中村が二塁に内野安打、吉川がこの回2本目の二塁打を左中間に放って二者を迎え入れ一挙9点、10-3とする。

 タイガースのピッチャーは5回から木下勇に代わり三輪八郎が登板する。木下は10失点で降板したが自責点は初回の1点だけである。4回の南海があげた9点は二死後岡田のエラーから始まっているので、岡田のエラーがなければスリーアウトチェンジになっていたはずであることから以降の失点は自責点とはならない。

 タイガースは4回裏、先頭の門前真佐人が四球で出塁、岡田の左前打で無死一二塁、木下に代わる代打カイザー田中義雄の遊ゴロは「6-4-3」と転送されるがセカンド上田からの一塁送球が悪送球となる間に二走門前が還って4-10とする。田中は故障のため永く戦列を離れていたが久々に復帰してきた。

 タイガースは5回、一死後景浦将が左翼スタンドにホームランを放って5-10、7回には景浦が四球で出塁した本堂を一塁に置いて左中間に三塁打を放ち6-10とするが以降を宮口に抑えられて二連敗を喫す。


 タイガースは今季三連覇を逃すこととなるが、この連敗を含み今節1勝3敗としたことが優勝を逃す大きな要因となった訳である。

 景浦将は5打数3安打2打点、三塁打1本、本塁打1本と孤軍奮闘であった。甲子園球場では今季鶴岡一人、ジミー堀尾文人に次いで3本目のホームランとなった。後楽園球場では今季ここまでに80本のホームランが出ています。翌日の読売新聞によると7回の三塁打は「左翼ブリーチャーへワンバウンドの三塁打」とのことで、甲子園球場のグラウンド・ルールではエンタイトル・スリーベースであることが分かる。後楽園球場のグラウンド・ルールでもエンタイトル・スリーベースであることが確認されていますので、当時はどの球場でもワンバウンドでフェンスを越えた場合は三塁打となっているようです。


 硬式ではワンバウンドのフェンス越えしか起こらないと思いますが、軟式ではツーバウンドでフェンスを越えることがあります。私の高校2年の夏、(神奈川軟式です。)神奈川県予選準決勝、強豪日大藤沢に6対1とリードして迎えた8回裏、猛反撃を喰らい6対5まで追い上げられましたが辛くも逃げ切りました。6対4とされて二死一二塁で左バッターに右中間を深々と破られました。ライトのポジションからボールを追っていた私は「入れ、入れ」と叫びながら走っていましたが、何と打球はツーバウンドで横浜平和球場の外野フェンスを越えてエンタイトル・ツーベースとなったのです。振り返ってみたら一塁ランナーは既にホームイン、打者走者は三塁に達していましたが、トボトボと三塁と二塁に戻されました。スタンドに入っていなければ6対6の同点に追い付かれて二死三塁ですから逆転されていたと思います。このピンチを切り抜けて同日の午後に行われた(当時の神奈川軟式では準決勝と決勝は同日に行われていました。)決勝で強豪光陵高校を破って進出してきた湘南高校に6対1で楽勝して優勝しました。光陵のショートは私が神奈川No1と見てマークしていたのですが、大学の準硬式野球部で同僚となりました。東京六大学準硬式野球リーグでも守備ではNo1でベストナインに2回、リーグ選抜チームにも選出されており当然我々の世代のキャプテンです。因みに今年から東京六大学準硬式野球リーグ戦の後援はこれまでの東京中日スポーツからスポーツ報知に変わります。情報によると写真入りで大々的に報道してもらえるようです。ソフトボールからもプロ入りしているのですから、準硬も負けてはいられません。




              *景浦将はホームランと三塁打を放ち孤軍奮闘。




2012年2月19日日曜日

14年 イーグルスvs名古屋 9回戦


9月12日 (火) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 イーグルス 21勝46敗1分 0.313 亀田忠
1 1 0 3 0 0 0 2 X 7 名古屋       25勝41敗3分 0.379 繁里栄


勝利投手 繁里栄 10勝14敗
敗戦投手 亀田忠 11勝18敗


二塁打 (イ)岩垣、筒井 (名)芳賀
三塁打 (名)加藤


繁里栄、5安打完投で10勝目


イーグルスは初回、先頭の岩垣二郎が右翼線に二塁打、杉田屋守の一塁線バントが内野安打となって無死一三塁、寺内一隆の右犠飛で1点を先制する。


 名古屋は1回裏、一死後石田政良の二ゴロをファースト菅利雄がエラー、二死後石田は二盗に成功、加藤正二が左中間に三塁打を放ち1-1の同点に追い付く。翌日の読売新聞によると「左翼塀に直接叩きつける物凄い三塁打」とのこと。当時の甲子園球場は左中間、右中間が膨らみをもつ広さで昭和9年に来日したベーブ・ルースですら「甲子園は広すぎてホームランは打てない」と降参した程です。今季はここまで甲子園では鶴岡一人とジミー堀尾文人の2本しかホームランは出ていません。因みに後楽園球場では80本出ています。

 名古屋は2回、先頭の中村三郎が四球で出塁、芳賀直一の遊ゴロでランナーが入れ替わり、繁里栄は三振に倒れるが村瀬一三が右前打を放って二死一二塁、ここでダブルスチールを敢行、キャッチャー伏見五郎は三塁ではなく二塁に送球するがこれが悪送球となる間に二走芳賀が生還して2-1と逆転する。芳賀と村瀬には盗塁が記録されている。

 名古屋は4回、先頭の芳賀が右翼線に二塁打、繁里が一塁に内野安打、村瀬の左前タイムリーで3-1、トップに返り桝嘉一の遊撃内野安打で無死満塁、石田の中前タイムリーで4-1、大沢清の右犠飛で5-1とリードを広げる。名古屋は8回、先頭の村瀬が四球を選んで出塁、桝の右前打で無死一三塁、続く石田の中飛で三走村瀬はそのままですが一走桝がタッチアップから二塁に進んでいます。恐らく村瀬がタッチアップから擬走してセンター寺内がバックホームした隙に一走桝がタッチアップから二塁に進んだものと考えられます。一死二三塁から大沢の二ゴロの間に村瀬が還って6-1としてなお二死三塁、伏見のパスボールの間に桝が還って7-1とダメ押す。

 名古屋先発の繁里栄は2回まで5安打を許すが3回以降イーグルス打線を無安打に抑え、5安打3四球4三振の完投で10勝目をあげる。

 イーグルスの敗因の一つに1回裏のファースト菅利雄のエラーがあります。春季、夏季シリーズに全試合出場した中河美芳は秋季シリーズに入って姿が見えません。ケガであればこれだけの人気選手ですから何か報道があってもおかしくはないと思われますが読売新聞にはケガを報じた記事は見られません。とすると憲兵隊に尋問されている可能性があります。であれば読売新聞が報道できるはずはありません。当時の選手の多くは兵役延長のため大学に籍を置いていましたが、中河はこれで憲兵に兵役逃れとして目を付けられていたと言われています。「タコ足中河」として人気があったため目立ってしまったようです。察知した球団或は聯盟が中河の出場をストップさせていたのかもしれません。





2012年2月18日土曜日

14年 ライオンvsタイガース 9回戦


9月11日 (月) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
3 0 0 0 0 0 1 3 1 8 ライオン   23勝40敗5分 0.365 福士勇 菊矢吉男 岡本利之
0 0 2 0 0 3 1 0 0 6 タイガース 44勝21敗2分 0.677 若林忠志


勝利投手 岡本利之    1勝3敗
敗戦投手 若林忠志 14勝4敗


二塁打 (ラ)菊矢、玉腰 (タ)松木、富松

近藤久、代打決勝タイムリー


 ライオンは初回、一死後玉腰年男の遊ゴロをショート皆川定之がエラー、続く水谷則一の二ゴロもセカンド本堂保次がエラーして玉腰は三塁に進み一死一三塁、水谷が二盗を決めて鬼頭数雄四球で一死満塁、岡本利之の右犠飛で1点を先制、二走水谷もタッチアップから三塁に進み鬼頭が二盗を決めて二死二三塁、鈴木秀雄が左前に2点タイムリーを放って3-0として主導権を握る。

 タイガースは3回、先頭の富松信彦が四球を選んで出塁、伊賀上良平の遊ゴロをショート松岡甲二がエラー、トップに返り本堂が投前に送りバントを決めて一死二三塁、二番・松木謙治郎が左越えに二塁打を放ち二者を迎え入れて2-3とする。

 タイガースは5回、先頭の富松が左中間に二塁打、伊賀上が左飛に倒れたところでライオンベンチは先発の福士勇から菊矢吉男にスイッチ、本堂とジミー堀尾文人が四球を選んで二死満塁とするが景浦将は右飛に倒れる。

 タイガースは6回、先頭の門前真佐人が四球を選んで出塁、若林忠志が一前に送りバントを決めて皆川の三ゴロをサード井筒研一が一塁に悪送球して一死一三塁、ここでダブルスチールを決めて3-3の同点、富松の左前打と二盗で一死二三塁、伊賀上は浅い左飛に倒れるがトップに返り本堂が左前に2点タイムリーを放ち5-3と逆転に成功する。

 ライオンは7回、一死後松岡が中前打を放って出塁、菊矢が左中間にタイムリー二塁打を放って4-5と1点差に迫る。ライオンは7回から菊矢が下がってセカンドの岡本が三番手としてマウンドに上がりセカンドには伊藤吉男が入る。

 タイガースは7回、先頭の景浦が四球で出塁、門前は三振に倒れるが若林の左前打で景浦が三塁に走り一死一三塁、皆川の右犠飛で6-4と突き放す。

 ライオンは8回、先頭の水谷の遊ゴロをショート皆川がエラー、鬼頭が中前打、岡本四球で無死満塁、鈴木の中犠飛で5-6、井筒の左前打をレフト富松が弾く間に二走鬼頭が還って6-6の同点、記録はワンヒットワンエラー、松岡の遊ゴロで井筒が二封されて二死一三塁、伊藤に代わる代打近藤久が右前にタイムリーを放って7-6と逆転に成功、これが決勝打となった。

 ライオンは9回、先頭の玉腰が左翼線に二塁打、水谷が送って鬼頭のタイムリーで8-6とリードを広げる。

 ライオン三番手の岡本利之は3イニングを投げて2安打3四球2三振1失点でプロ入り初勝利をあげた。セカンドとピッチャーの掛け持ちはかつての大東京・ライオンの大友一明が得意とするところでしたのでライオンの伝統とも言えます。翌日の読売新聞は「一球々々コースを変えてタ軍のミートを狂わせ遂に勝利投手の殊勲を輝かせた。」と伝えている。


 殊勲の代打決勝タイムリーを放った近藤久はピッチングでは今季0勝9敗といいところがないがバッティングはなかなかのものである。人気ブログ「野球の記録で話したい」様の本日のテーマは「投手史上最強の打者は誰か?」で、「登板数が出場試合数の70%を越え、打席数300以上の投手の成績。打率ベスト50。」が掲載されています。近藤久は堂々第21位にランクインしています。通算425打数91安打、打率2割1分4厘1毛で、22位の澤村栄治2割1分3厘8毛を僅かに上回っています。




14年 名古屋vs金鯱 9回戦


9月11日 (月) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 1 0 2 2 0 0 2 8 名古屋 24勝41敗3分 0.369 繁里栄 西沢道夫 松尾幸造 大沢清
2 1 0 0 3 2 0 1 X 9 金鯱   25勝40敗2分 0.385 大宮清 古谷倉之助 内藤幸三


勝利投手 大宮清 2勝7敗
敗戦投手 大沢清 2勝5敗
セーブ   内藤幸三 1


二塁打 (名)服部 (金)濃人、大宮、古谷
三塁打 (名)大沢、加藤 (金)野村

内藤幸三、鮮やかな復活

 同率で並ぶ両チームによる対決。

 名古屋は初回、先頭の桝嘉一が四球を選んで出塁、一死後大沢清が右中間に三塁打を放って1点を先制する。これが大乱戦のスタートとなった。

 金鯱は1回裏、先頭の五味芳夫が四球で出塁するとワイルドピッチで二進、濃人渉の右翼線二塁打で1-1の同点に追い付く。野村高義の右前打で無死一三塁、小林利蔵の二ゴロの間に野村が還って2-1と逆転する。

 金鯱は2回、先頭の大宮清が左中間に二塁打、中村輝夫の右飛で大宮はタッチアップから三塁に進み、佐々木常助が右前にタイムリーを放ち3-1として名古屋先発の繁里栄をKO、二番手として西沢道夫がマウンドに上る。

 名古屋は3回、二死後大沢が四球を選ぶと二盗に成功、加藤正二も四球で二死一二塁、三浦敏一が左前にタイムリーを放って2-3とする。

 名古屋は5回、先頭の村瀬一三が左前打で出塁、トップに返り桝が四球を選び、石田政良が投前に送りバントを決めて一死二三塁、ここで大沢が右前に逆転タイムリーを放って二者還り4-3とリードする。

 金鯱は5回裏、先頭の五味が四球で出塁、名古屋ベンチはここで西沢に代えて三番手として松尾幸造を送り込む。しかし松尾は又もストライクが入らず濃人四球で無死一二塁、野村は二ゴロに倒れるが小林利蔵も四球で歩き一死満塁、小林茂太が左越えに逆転二塁打を放って5-4としてなお一死二三塁、瀬井清の遊ゴロで三走小林利蔵がホームを突くがショート村瀬からのバックホームにタッチアウト、しかし大宮に代わる代打荒川正嘉が四球を選んで二死満塁、中村輝夫に代わる代打磯部健雄が押出し四球を選んで6-4とする。名古屋は松尾を退けてファーストの大沢が四番手としてマウンドに上る。キャッチャーの三浦がファーストに入り、松尾に代わって服部受弘が入ってキャッチャー。

 金鯱は6回から先発・大宮清の代打に出た荒川がライトに入りライトの小林茂太に代わって古谷倉之助をマウンドに送る。

 名古屋は6回、一死後芳賀直一が右前打で出塁、服部が左中間にタイムリー二塁打を放ち5-6、村瀬が左前に同点タイムリーを放って6-6と追い付く。

 金鯱は6回裏、一死後濃人が四球を選んで出塁、野村が右中間に三塁打を放って7-6と三度リード、小林利蔵の右犠飛で8-6とリードを広げる。

 リードを奪ったところで岡田源三郎監督は内藤幸三を三番手としてマウンドに送り込む。戦場から戻ってきた内藤はこれが三年振りのマウンドとなった。同時に岡田監督はライトの荒川をセンターに回してセンターの佐々木をライトに回す。内藤は大沢を右飛に打ち取り復活の狼煙を上げる。岡田監督はここで再びセンターとライトを入れ替えて元に戻す。大沢の右打ちを見切った岡田采配である。当然岡田監督は荒川の守備より佐々木の守備を買っている訳です。内藤は加藤には四球を与えるが三浦を三ゴロ併殺に打ち取り無難な立ち上がりを見せる。8回は中村三郎、芳賀に連続四球を与えて無死一二塁のピンチを迎えるが服部を中飛、村瀬を左飛に打ち取り桝から復帰後初三振を奪う。因みに内藤は昭和11年には澤村栄治を抑えて初代奪三振王となっています。

 金鯱は8回、先頭の五味が四球から二盗に成功、濃人も四球を選び、一死後小林利蔵が左前にタイムリーを放って1点追加、9-6とする。この1点が効いた。

 名古屋は9回、一死後大沢が四球を選んで出塁、加藤が左越えに三塁打を放ち、レフト野村からの返球を中継したショート濃人の三塁送球が悪送球となる間に加藤もホームに還って8-9とする。しかしここは戦場で鍛えられた内藤が踏ん張って三浦は三振、最後は天野竹一に代わる代打村松幸雄が二ゴロに倒れて金鯱が9対8で大乱戦を制す。


 名古屋は15人、金鯱は14人を注ぎ込み総勢29人が出場した。金鯱の岡田源三郎監督は7回、内藤をマウンドに送ると共に、5回に代打に出て6回の守備からライトに入っていた荒川正嘉をセンターに回して守備のいいセンターの佐々木常助をライトに回した。この回の先頭打者・大沢清の右打ちに備えたものである。内藤が予定通り大沢を右飛に打ち取ると再び佐々木と荒川を入れ替えて元に戻した。策士・岡田源三郎の真骨頂である。「日本プロ野球記録大全集」のテーブルスコアにはこのシフトが記載漏れとなっていますのでご注意ください。翌日の読売新聞のテーブルスコアには荒川が「右中右」、佐々木が「中右中」と正しく記載されています。

 この試合の勝利投手は大宮清で敗戦投手は大沢清です。ややこしいのでお間違えのないように。現行ルールでは古谷倉之助が勝利投手となります。3イニングを1安打4四球2三振2失点、自責点1に抑えて復活を遂げた内藤幸三には当ブログルールによりセーブが記録される。






*荒川正嘉と佐々木常助のシフトを伝えるスコアブックの記載。佐々木はセンタースタメンで出場し、7回からライトに回り(k)、大沢の右飛を捕球するとセンターに戻ります(l=エルの小文字)。備考欄には「7回*より(再)」と書かれています。左端の欄は「刺殺」の数字です。佐々木はライトの守備で刺殺1を記録しています。










*戦地から戻ってきた内藤幸三は3年ぶりのマウンドの感触をどう感じ取ったのでしょうか。



14年 セネタースvs南海 9回戦


9月11日 (月) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 セネタース 37勝27敗4分 0.578 野口二郎
0 1 0 0 0 0 0 0 X 1 南海      27勝37敗4分 0.422 政野岩夫


勝利投手 政野岩夫 13勝12敗
敗戦投手 野口二郎 25勝14敗


二塁打 (セ)横沢 (南)岡村2

中田道信、苅田を刺す


 南海は初回、一死後小林悟楼が右前打で出塁するが鶴岡一人の三ゴロが「5-4-3」のセネタース併殺網に掛かりダブルプレー。

 嫌なムードが流れたが南海は2回、一死後岡村俊昭が左翼線に二塁打、野口二郎のワイルドピッチで一死三塁、中村金次の遊ゴロの間に岡村が還って1点を先制する。まだ2回とあってセネタース内野陣は前進守備を敷かなかったのであろうがこれが決勝点となった。

 セネタースは3回、二死後苅田久徳が四球を選んで出塁、二盗を試みるがキャッチャー中田道信からの送球にタッチアウト。

 セネタースは6回、一死後再び苅田が四球を選んで出塁、二盗を試みるが又も中田が苅田を刺してピンチを未然に防ぐ。続く横沢七郎が四球を選んで二死一塁、尾茂田叶の左前打で横沢が三塁を陥れ、送球の間に尾茂田も二塁に進んで二死二三塁、しかし期待の野口は三ゴロに倒れる。

 セネタースは7回、一死後柳鶴震、佐藤武夫が連続四球、織辺由三に代わる代打村松長太郎の投ゴロの間に二者進塁して二死二三塁、しかし森口次郎に代わる代打「元祖・意外性の男」家村相太郎は三振に倒れてスリーアウトチェンジ。翌日の読売新聞によると「PH家村がツースリー後のボールと覚しきアウトカーブを空振する」とのこと。

 セネタースは8回も一死後横沢が右翼線に二塁打を放つが尾茂田は右飛、野口は二ゴロに倒れる。9回も先頭の浅岡三郎が四球を選んで出塁するが後続無く、南海が1対0で逃げ切る。


 試合を左右したのは苅田の二盗を2度刺したキャッチャー中田道信の送球であった。

 快速球が冴えた野口二郎は4安打1四球4三振で8回を完投したが1点に泣いた。

 下手投げからの緩球が冴えた政野岩夫は4安打6四球4三振、今季4度目の完封で13勝目をあげる。柔よく剛を制した試合であった。




*苅田久徳は2度二盗を試みるが何れも中田道信に刺される。四球「BB」で出塁した苅田は「2-6B」(キャッチャー中田から二塁ベースカバーのショート小林悟楼に送球されて)タッチアウト。









               *政野岩夫は4安打完封で13勝目をあげる。


2012年2月17日金曜日

14年 名古屋vs阪急 9回戦


9月9日 (土) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 名古屋 24勝40敗3分 0.375 松尾幸造 西沢道夫
0 0 0 0 0 5 0 0 X 5 阪急   44勝21敗1分 0.677 荒木政公


勝利投手 荒木政公 8勝1敗
敗戦投手 松尾幸造 5勝11敗


二塁打 (名)松尾

山田伝のバスターで松尾を粉砕


 名古屋打線は阪急先発・荒木政公の前に4回まで1安打無得点。名古屋は5回、二死後村瀬一三が中前打を放って出塁、松尾幸造が中越えにタイムリー二塁打を放って1点を先制する。

 阪急打線は名古屋先発・松尾幸造の前に5回まで2安打無得点。阪急は6回、先頭の西村正夫が四球を選んで出塁、フランク山田伝の右前打で無死一三塁、この場面を翌日の読売新聞は「山田はバントの構えから突如一塁を破る快打を放ち一三塁の好機となる」と伝えており、バスターエンドランであったようである。当時もバスター戦法があったことは以前にもお伝えしているとおりです。上田藤夫が中前に同点タイムリーを放って1-1、山下好一の中前打で無死満塁、山下実の右前タイムリーで2-1と逆転、日比野武は三振に倒れるが田中幸雄が右前にタイムリーを放って3-1、伊東甚吉の左前2点タイムリーで山下好一と山下実が還って5-1として先発松尾をKO、リリーフに西沢道夫が登板する。西沢はこの回西村に四球を与えただけで7回、8回はパーフェクトリリーフを見せる。

 荒木政公は余裕のピッングで6回以降は2四球無安打無失点、結局3安打2四球無三振の完投で8勝目をあげる。


 阪急は8安打のうち6本をを6回に集中して大量得点に結び付けた。8安打は何れもシングルヒットで日比野武を除く8人全員が1安打ずつを記録した。


 6回にフランク山田伝が見せたバスターが大量得点のきっかけとなった。当時の記事には稀に「バントの構えからヒッティング」という記述が見られます。昭和48年の甲子園で柳川商業が作新学院の江川を苦しめたバントの構えからヒッティングに出る打法は「プッシュ打法」と呼ばれておりまだ「バスター」は使われていません。私の大学時代(昭和52~55年)には「バスター」と認識して試合でも使っていましたので、昭和50年頃から「バスター」という言葉が使われ始めたようです。

 第三試合の金鯱vsジャイアンツ戦は雨のため4回で中止、ノーゲームとなった。9月11日付け読売新聞によると、10日に予定されていた三試合も雨のため順延された。







               *荒木政公は3安打完投で8勝目をあげる。





2012年2月15日水曜日

14年 南海vsイーグルス 9回戦


9月9日 (土) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 1 0 2 0 0 0 0 0 4 南海           26勝37敗4分 0.413 天川清三郎 宮口美吉
0 0 0 0 4 1 0 0 X 5 イーグルス 21勝45敗1分 0.318 古川正男 亀田忠


勝利投手 亀田忠  11勝17敗
敗戦投手 宮口美吉 6勝11敗


二塁打 (南)小林 (イ)太田、亀田

ラッキーボーイ岩垣二郎


 南海は初回、先頭の平井猪三郎が四球を選んで出塁、小林悟楼が中前打で続いて無死一二塁、鶴岡一人の左飛でタッチアップから二者進塁して一死二三塁、国久松一の中犠飛で1点を先制する。二走小林もタッチアップから三塁に進み岡村俊昭が四球から二盗、中村金次四球で二死満塁とするが吉川義次は遊ゴロに倒れる。

 南海は2回、先頭の中田道信が左前打で出塁、イーグルスベンチはここで先発の古川正男をあきらめて亀田忠をリリーフに送る。天川清三郎の二ゴロの間に中田は二進、トップに返り平井の遊ゴロをショート筒井良武がエラーする間に二走中田が還って2-0とする。更に平井は二盗に成功、キャッチャー伏見五郎の送球が悪送球となって平井は三進、小林は二直に倒れるが鶴岡が四球を選び二死一三塁、ここでダブルスチールを敢行するも伏見からの送球を受けたセカンド高須清からのバックホームに平井はタッチアウト。

 南海は4回、先頭の吉川が四球、中田も四球、吉川の三盗を挟んで天川も四球を選んで無死満塁、平井の右犠飛で3-0、小林の右翼線タイムリー二塁打で4-0としてなお一死二三塁、イーグルスはここでレフトに岩垣二郎を入れてライトの太田を下げてレフトの杉田屋守をライトに回す。次のプレーはスコアブックの記載によると「鶴岡の遊ゴロによりショート筒井良武が無補殺併殺」を記録している。「二走小林が「×6」で二死目、三走天川が「×6」で三死目が記録されて筒井による無補殺併殺が記録されている。二走小林の「×6」だけなら鶴岡の打球が小林が当たり守備妨害でボールデッドとなるので併殺が記録されることは考えられない。恐らく鶴岡の遊ゴロに二走小林が飛び出してショート筒井がタッチ、三走天川の離塁も大きく筒井がそのまま走って天川がタッチアウトになったものではないかと考えられる。

 イーグルスは初回一死後太田健一が右中間に二塁打を放つが無得点。2回も一死後亀田が左中間に二塁打を放つが無得点。

 4点をリードされたイーグルスは5回、先頭の筒井が左前打で出塁、しかし杉田屋守の左邪飛に筒井が飛び出して「7-6-3」と渡ってダブルプレー。二死無走者となったが岩垣の遊ゴロをショート小林がエラー、寺内一隆が左前打を放って二死一二塁、高須の三塁内野安打で二死満塁、菅利雄が中前に2点タイムリーを放って2-4、木下政文が中前にタイムリーを放って3-4、南海ベンチはここで先発の天川に代えて宮口美吉をリリーフに送るが亀田が中前に同点タイムリーを放って4-4と追い付く。

 イーグルスは6回、二死後岩垣が四球を選んで出塁、寺内の遊ゴロをショート小林が二塁に送球するがセーフ、野選となって二死一二塁、高須が中前に決勝タイムリーを放って岩垣が生還、5-4と大逆転に成功する。

 亀田忠は5回以降を3安打2四球無失点に抑えて11勝目をあげる。

 イーグルス・キャッチャーの伏見五郎は3つの盗塁を許したが4つの盗塁を刺した。

 4回途中に岩垣二郎がレフトに入った途端、試合の流れはがらりと変わった。岩垣が入った直後にショート筒井良武による変則無補殺併殺が見られる。5回の攻撃では一走筒井が左邪飛で併殺を喰らう珍しいプレーが出たが直後に岩垣が遊失に生きると一気に4点を取り返して同点とする。6回も二死無走者で岩垣が四球を選んで出塁すると続く寺内一隆の遊ゴロが野選を誘い高須清のタイムリーで岩垣が決勝のホームを踏んだ。




           *岩垣二郎がレフトに入った途端、試合の流れは一変した。







*4回に記録された筒井良武による変則無補殺併殺。



2012年2月14日火曜日

ベースボールの原風景 その2


 2010年8月8日付けブログで世界大学野球選手権・決勝戦を題材に「ベースボールの原風景」をアップさせていただきました。何とこの試合を語ったブログを見つけましたのでご報告させていただきます。

 SHEILA(シェイラ)のオフィシャルブログ、2010年8月24日付けに「アルフレッド・デスパイネ☆背番号54」が掲載されています。デスパイネはこの試合でサヨナラホームランを放った四番打者です。

 SHEILAはご存じのとおりキューバと日本のハーフでMLB中継にもよく登場しています。

 愚ブログではキューバ先発のゴンザレスが先制点を奪われたシーンを「8回表アメリカは一番セカンド右打者マジーの右翼ホームランで1点を先制。ゴンザレスがマウンドを降りてくる際グラブで顔を隠していました。恐らく泣いていたのだと思います。」と記述させていただきましたが、SHEILAは「8回表、アメリカに先制されてしまったあの瞬間のキューバベンチの愕然とした姿。そして先発のミゲル・ゴンザレス投手がグローブで顔を覆いながら(申し訳ない気持ちで)ベンチに戻ってきたあの時。」と書いています。

 このシーンはあの日神宮球場にいなければ書けませんので、SHEILAも神宮で観戦していたのでしょう。

 同ブログによると「キューバで生中継されていたこの試合は国中が大変なことになっていたようです。因みにこの試合は朝の5時に中継されていたんですが、視聴率は70%近くまで上ったそう。」とのことです。



14年 タイガースvs名古屋 9回戦


9月8日 (金) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 1 1 3 5 タイガース 44勝20敗2分 0.688 木下勇 若林忠志
0 0 0 0 0 0 0 2 0 2 名古屋   24勝39敗3分 0.381 大沢清 繁里栄


勝利投手 若林忠志 14勝3敗
敗戦投手 繁里栄       9勝14敗


二塁打 (タ)本堂、木下
三塁打 (名)村瀬

門前真佐人、決勝タイムリー


 前半戦はタイガース先発の木下勇、名古屋先発の大沢清が好投。タイガースは6回まで3安打で無得点、名古屋は7回まで2安打で無得点であった。

 タイガースは7回、一死後木下が左中間に二塁打、伊賀上良平のピッチャー強襲ヒットで木下が還り1点を先制する。

 名古屋は8回から大沢に代えて繁里栄をマウンドに送る。大沢はファーストに回りファーストの三浦敏一がキャッチャーに回りキャッチャー服部受弘のところに繁里が入る。小西徳郎監督お得意のローテーションである。

 タイガースは8回、先頭のジミー堀尾文人の遊ゴロをショート木村進一がエラー、景浦将の左前打で堀尾は三塁に進み無死一三塁、ここで景浦が二塁に走りタッチアウトとなる間に三走堀尾が生還して2-0とする。堀尾には盗塁が記録されておらず景浦には盗塁失敗が記録されているので、ディレードスチールの可能性が高い。景浦はこのところ走者に出るとこの手のトリックプレーを見せている。

 名古屋は8回裏、先頭の村瀬一三が右中間に三塁打、タイガースベンチはここまで好投を続けてきた木下を下げて若林忠志をリリーフに送る。木村に代わる代打村松幸雄の遊ゴロをショート皆川定之がファンブル、村瀬は三塁から動かず無死一三塁、村松の代走に天野竹一が起用される。門前真佐人の捕逸で天野は二進、村瀬は動けず無死二三塁、ここで村瀬がホームスチールを決めて1-2、桝嘉一の三ゴロの間に二走天野は三進、石田政良の遊ゴロの間に天野が還って2-2の同点に追い付く。

 タイガースは9回、先頭の松木謙治郎が四球を選んで出塁、本堂保次の投前送りバントは正直過ぎて繁里は二塁に送球するが二塁ベースカバーに入ったセカンド中村三郎がダブルプレーを焦って二塁ベースタッチは認められず一塁もセーフで無死一二塁、記録は中村のエラー、堀尾の送りバントは内野安打となって無死満塁、景浦は三振に倒れるが門前が中前に決勝タイムリーを放って3-2、皆川が押出し四球を選んで4-2、二死後若林が左前にタイムリーを放って5-2として試合を決める。

 若林忠志は9回の名古屋の攻撃を1四球無失点に抑えて14勝目をあげる。




 8回裏に代打で起用された村松幸雄はシーズン開幕から好投を見せていたが肩の故障で温泉治療に専念して久々に復帰してきた。村松幸雄を伝える進藤昭著「戦場に散ったエース 村松幸雄の生涯」には「4月18日のライオン戦を最後に村松の登板はプッツリ途絶えた。肩の故障を直すためしばらく休養することとなった。・・・治療は、藤枝の中心街からほど遠くない山すそにある志太温泉での湯治が中心だった。志太温泉は白濁した塩味のする湯が特徴で・・・」と書かれています。但し実際の休養前最後の登板は4月19日のタイガース戦で7回から先発の松尾幸造をリリーフして3イニング投げた時です。





*木村進一の代打に村松幸雄が起用された。木村(後の西村進一)は右手首を失っただけで戦場から戻り戦後は母校・平安高校の監督として全国制覇を達成するが、村松は戦場から戻ることはなかった。



2012年2月13日月曜日

14年 南海vs金鯱 9回戦


9月8日 (金) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 1 0 1 0 0 2 0 0 5 南海 26勝36敗4分 0.419 宮口美吉 政野岩夫
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 金鯱 24勝40敗2分 0.375 中山正嘉


勝利投手 政野岩夫 12勝12敗
敗戦投手 中山正嘉 17勝14敗


二塁打 (南)宮口 
三塁打 (金)野村

完封リレー


 南海は初回、二死後鶴岡一人が三遊間を破るとレフト野村高義がこれを後逸する間に三塁に進み、国久松一がセンター右に先制タイムリーを放って1-0とする。

 金鯱は1回裏、二死後野村が汚名返上の三塁打を右中間に放つが小林利蔵四球後小林茂太は一飛に倒れて無得点。金鯱は2回も中山正嘉、瀬井清が連続四球、長島進の三ゴロ後、佐々木常助も四球を選んで一死満塁とするが五味芳夫、濃人渉のくせ者2人が連続して二飛に倒れて無得点。

 南海は2回、一死後吉川義次が四球で出塁、宮口美吉が左中間にタイムリー二塁打を放って2-0とする。

 金鯱は3回、先頭の野村が右前打を放って出塁、小林利蔵も右前打で続くが野村が三塁を欲張ってライト岩出清からのバックサードにタッチアウト。しかし小林茂太、中山が連続四球で一死満塁、南海ベンチはここで先発の宮口から政野岩夫にスイッチ、瀬井は三振、長島に代わる代打荒川正嘉も三振、政野の見事なリリーフが光る。

 南海は4回、先頭の中村金次が左前打で出塁、一死後政野も左前打を放ち岩出の遊ゴロで政野が二封されて二死一三塁、トップに返り平井猪三郎が右前にタイムリーを放って3-0とリードを広げる。

 南海は7回、一死後小林悟楼が左前打から二盗に成功、鶴岡四球、国久左前打で一死満塁、岡村俊昭が中前に2点タイムリーを放って5-0と突き放す。

 3回途中から登板した政野岩夫は6回3分の2を投げて1安打無四球3三振無失点の好リリーフを見せて12勝目をあげる。翌日の読売新聞は「政野は・・・なだらかに内外角を流すカーブをもって逸る金鯱打者を幻惑しつくした、正に柔よく剛を制したものである。」と伝えている。






                *南海は宮口美吉、政野岩夫の完封リレー。


14年 セネタースvsライオン 9回戦


9月8日 (金) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 計
0 0 0 0 0 0 0 2 0  0   1   3 セネタース 37勝26敗4分 0.587 浅岡三郎 野口二郎
0 0 0 0 0 2 0 0 0  0   0   2 ライオン     22勝40敗5分 0.355 岡本利之 


勝利投手 野口二郎 25勝13敗
敗戦投手 岡本利之   0勝3敗


二塁打 (セ)尾茂田 (ラ)鈴木、玉腰、坪内

野口二郎、三連投!


 翌日の読売新聞は「浅岡の軟投と岡本利の緩曲球は共に絶妙のコントロールをもって相譲らぬ一騎打ちを演じ・・・」と伝えている。

 セネタース打線は4回までライオン先発・岡本利之の前に無安打無得点に抑え込まれる。5回、先頭の柳鶴震が左前に初ヒットを放ち浅岡三郎が送って一死二塁とするが村松長太郎は一飛、織辺由三は一ゴロに倒れる。6回は三者凡退。

 ライオンは2回、二死後玉腰年男が左前打で出塁、山本尚敏も四球を選んで二死一二塁とするが井筒研一は右飛に倒れる。3回は先頭の九番・鈴木秀雄が右翼線に二塁打を放つが坪内道則は左飛、西端利郎は中飛、水谷則一は二飛に打ち取られる。浅岡の緩急にタイミングを外されている様子がうかがえる。4回は鬼頭数雄の四球と玉腰のピッチャー強襲ヒットで一死一二塁とするが山本三振、井筒は三ゴロで無得点。5回も鈴木、水谷、鬼頭の四球で二死満塁とするが岡本が投ゴロに倒れてスリーアウトチェンジ。

 ライオンは6回、先頭の玉腰が左中間に二塁打、山本の送りバントが内野安打となって無死一三塁、井筒は浅い左飛に倒れて一死一三塁、セネタース苅田監督はここで浅岡をファーストに回してファーストの野口二郎をマウンドに送る。野口二郎は6日に開幕した秋季シリーズに入って三日間で三連投、翌日の読売新聞は「一死後又しても鉄人野口を一塁から呼び迎える羽目に陥った」と伝えている。苅田監督は、続く鈴木秀雄は九番ながら本日二塁打と四球で浅岡にはタイミングが合っていると判断したのであろう。鈴木の二ゴロで三走玉腰がホームを突くがセカンド苅田久徳からのバックホームにタッチアウト、二死一三塁からトップに返り坪内がセンター左奥に二塁打を放って二者を迎え入れ2点を先制する。

 セネタースは7回、二死後柳がこの日2安打目となる中前打を放つが続く浅岡は三振。8回、先頭の村松が三塁に内野安打、織辺由三に代わる代打森口次郎は三振に倒れるが村松が二盗を決めて苅田四球で一死一二塁、横沢七郎は二飛に倒れるが尾茂田叶が左中間に二塁打を放ち二者を迎え入れて2-2の同点に追い付く。

 セネタースは9回表、先頭の佐藤武夫が四球で歩くが後続無し。ライオンは9回裏、二死後西端が中前打で出塁するが勝負を賭けた盗塁がキャッチャー佐藤からの好送球に阻まれて延長戦に突入する。

 セネタースは10回表、先頭の森口が右前打を放って出塁、トップに返り苅田が送って一死二塁、横沢は左飛に倒れ尾茂田四球で二死一二塁、しかし期待の野口は遊ゴロに倒れる。ライオンは10回裏、二死後岡本の右飛をライト森口がエラー、しかし玉腰は三振に倒れる。

 セネタースは11回表、一死後柳がこの日3安打目となるヒットを左前に放って出塁、浅岡の中前打で柳は三塁に走り一死一三塁、翌日の読売新聞によるとエンドランが掛かっていたとのこと、ここで村松が決勝の右犠飛を打ち上げて3-2とする。

 野口は11回裏、先頭の山本に代わる代打菊矢吉男を三振、井筒に代わる代打近藤久には右前打を打たれるが鈴木を三邪飛、6回に二塁打を打たれた坪内を一邪飛に抑えてセネタースが接戦をものにして9連勝を飾る。野口は9連勝中7勝をあげており残りの2勝は浅岡三郎の完封と応召前最後のピッチングとなった金子裕の完封である。金子裕の応召を目の前で見て、気合いが漲っているようだ。


 ライオンは前半押し気味に試合を進めたが浅岡三郎を崩すことができず野口に出番を与えてしまった。水谷、鬼頭、岡本のクリーンナップトリオが無安打であった。岡本利之は11回を完投して7安打6四球6三振の力投を見せる。ピッチングに専念したのか5打数無安打であった。


 野口二郎は9月6日に開幕した秋季シリーズに入って三日連投で3連勝、北の狼・火浦健みたいです。水島新司著「野球狂の詩」の「狼の恋」をご参照ください。読んだことのない方は「北の狼・南の虎」を先に読んでおくことをお薦めします。水原勇気登場前のマガジンで月一回程度読み切りで不定期連載されていた頃の話です。






            *三日間三連投三連勝を記録した野口二郎。








2012年2月12日日曜日

14年 ジャイアンツvs南海 9回戦


9月7日 (木) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11  計
1 1 0 0 1 0 0 0 1  0   0   4 ジャイアンツ 45勝18敗2分 0.714 中尾輝三 スタルヒン
0 1 0 0 3 0 0 0 0  0   0   4 南海             25勝36敗4分 0.410 劉瀬章 政野岩夫


二塁打 (ジ)中島 (南)吉川

中島治康、起死回生の同点タイムリー


 ジャイアンツは初回、先頭の白石敏男が四球を選んで出塁、一死後アチラノ・リベラ(アデラーノ・リベラ)の右前打で白石が三塁に進み一三塁、中島治康の遊ゴロをショート小林悟楼がエラーする間に白石が還って1点を先制する。

 ジャイアンツは2回、先頭の千葉茂の三ゴロをサード鶴岡一人が一塁に悪送球、一死後吉原正喜が右前打、中尾輝三も右前打で続いて一死満塁、トップに返り白石の三ゴロで二走吉原が三封される間に三走千葉が還って2-0とする。

 南海は2回、一死後吉川義次が左中間に二塁打、国久松一の遊ゴロをショート白石が一塁に悪送球する間に二走吉川が還って1-2とする。

 ジャイアンツは5回、二死後水原茂が四球を選んで出塁、リベラが左前打を放って二死一二塁、中島の左前タイムリーで3-1とする。

 南海は5回裏、先頭の岩出清が四球を選んで出塁、一死後小林が左前打、岡村俊昭が四球を選んで一死満塁、鶴岡が死球を受けて押出し、2-3とする。ジャイアンツベンチはここで中尾からスタルヒンにスイッチ、吉川は二飛に倒れて二死満塁、国久がセンター右に逆転の2点タイムリーを放って4-3とする。

 南海は7回から先発の劉瀬章に代えてジャイアンツに強い政野岩夫を投入する。政野は期待に応えて7回、8回を無失点に抑える。

 ジャイアンツは9回、先頭の白石は一直、水原は投飛に倒れて二死無走者、当っているリベラがこの日3安打目となる右前打で出塁、中島が右中間に起死回生のタイムリー二塁打を放って4-4の同点に追い付く。更に川上哲治四球、千葉に代わる代打楠安夫も四球を選び代走に山本栄一郎を起用、二死満塁とするが平山菊二に代わる代打井上康弘はカウントツースリーから二ゴロに倒れてスリーアウトチェンジ。南海の9回裏は三者凡退に終わり延長戦に突入。

 10回、11回と両チーム無安打で延長11回、4対4で引き分く。