2012年1月23日月曜日

14年 セネタースvs阪急 8回戦


8月23日 (水) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11  計
0 2 0 0 0 1 0 0 1  0   0   4 セネタース 31勝26敗4分 0.544 野口二郎
0 0 0 2 1 0 0 1 0  0   0   4 阪急          42勝20敗1分 0.677 荒木政公 高橋敏


二塁打 (セ)浅岡、村松 (阪)上田


球史に残る好ゲーム


 阪急は21日の金鯱戦から西村正夫が復帰してセンターに入りフランク山田伝を三番セカンドで起用している。21日はこれまでセカンドに起用されていた林信一郎がサードに入ったが本日は黒田健吾がサードに入る。山田は左投げ右打ちですが、プロ野球史上で左投げの二塁手は鬼頭数雄、フランク山田伝、西本幸雄の3人と言われています。鬼頭が左投げの二塁手としてダブルプレーも完成させたことは以前お伝えしていると思います。 

 初回を三者凡退で終えたセネタースは2回、先頭の野口二郎が左翼線にヒット、佐藤武夫が右前打で続き小島二男が送って一死二三塁、柳鶴震の右犠飛で1点を先制、家村相太郎の右前タイムリーで2-0とする。

 野口二郎の前に3回まで三者凡退を繰り返してきた阪急は4回、二死後三番セカンド・フランク山田伝が四球を選んで出塁、山下好一のレフトにゴロで抜けるヒットで山田は三塁に達して二死一三塁、翌日の読売新聞によるとヒットエンドランが掛かっていたとのことです。山下好一が二盗を決めて二死二三塁、上田藤夫が左中間に二塁打を放って2-2の同点に追い付く。

 阪急は5回、二死後西村正夫が四球を選んで出塁、西村が二盗を決めて二死二塁、浅野勝三郎が右前にタイムリーを放って3-2と逆転に成功、山田も右前打で続くが山下好一は遊ゴロに倒れる。

 セネタースは6回、一死後横沢七郎が四球で出塁、尾茂田叶の右前打で横沢は三塁に達す。翌日の読売新聞によると「尾茂田は理想的に二塁右を抜くヒット・エンド・ランで横沢を三進せしめた。」とのこと。尾茂田は二塁を欲張り二死三塁、野口が左翼線にタイムリーを放って3-3の同点に追い付く。

 阪急は8回、先頭の上田のライトフライを家村が落球して無死二塁、苅田久徳監督はライトを村松長太郎に交代させる。このたなぼたのチャンスに黒田健吾主将が左前にテキサス・リーガーズ・ヒット、4-3と再度リードを奪う。

 セネタースは9回、6回から途中出場の浅岡三郎が左越えに二塁打、阪急は先発の荒木政公に代えて高橋敏を二番手に注ぎ込む。柳の投ゴロで浅岡は三進、柳のアウトは「1-6-3」と記録されているので、二走浅岡が飛び出したところ高橋はショート上田に送球したが浅岡はそのまま三塁に走り上田は間に合わないと判断して一塁に転送したか、高橋が弾いた打球を上田がバックアップして打者走者をアウトにしたのであろう。ここで8回の守備からライトに入っている村松が左中間に同点タイムリー二塁打を放って4-4に追い付く。家村の落球を見て即座に村松と交代させた苅田監督の決断がここで生きた。

 セネタースの10回表は三者凡退、阪急の10回裏も三者凡退、セネタースの11回表も三者凡退。

 阪急は11回裏、先頭の高橋敏が右前にヒット、代走に石田光彦を起用、トップに返り西村が流し打ったライナーはサード横沢のグラブに収まり一死一塁、「L5」とスコアブックに記載されている記録だけでは分からないが送りバント失敗の可能性もある。バントの名手西村正夫も復帰二戦目とあって勘が戻っていなかったのであろうか。浅野勝三郎の右翼線ヒットで石田が三塁に達して一死一三塁、山田は一邪飛に倒れて二死一三塁、続く山下好一を敬遠して二死満塁、上田は右飛に倒れてゲームセットを告げるサイレンが高々と鳴り響き延長11回引き分く。4時5分に二出川延明主審がプレイボールをコールして開始された試合は5時50分に終了した。球史に残る好ゲームと言ってよいでしょう。

 野口二郎は11回を完投して10安打4四球3三振であった。


 9回に同点二塁打を放った村松長太郎はこれがプロ入り初の殊勲打となった。村松は浪華商業(後の浪商、現・大体大浪商)のエースとして昭和12年春のセンバツで中京商業(後の中京高校、現・中京大中京)の野口二郎と決勝で投げ合い2対0で完封して優勝投手となった。野口二郎は甲子園に3回出場して昭和12年夏、昭和13年春は優勝しており甲子園通算12勝1敗の記録を残している。すなわち、村松長太郎は野口二郎に唯一の黒星をつけた訳である。プロでは昭和15年に11試合だけ登板するが打者に転向し、昭和17年まで甲子園のライバル野口二郎とチームメイトとなったが戦死することとなる。





            *延長11回引分けを伝えるスコアブック







*9回に代打で登場した村松長太郎がプロ入り初の殊勲打となる同点タイムリーを放った場面。


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