2011年7月9日土曜日

13年秋 講評

 今季はジャイアンツが第一期黄金時代の夜明けを迎えたが日本選手権ではタイガースの底力に敵わなかった。
 中島治康が史上初の三冠王を獲得。中島はちょうど半分の20試合経過時点では84打数24安打、打率2割8分6厘でこの時点での首位打者佐藤武夫3割8分6厘に1割離されていて打撃ベストテンに入るか入らないかというところをうろうろしているに過ぎなかった。9月16日のイーグルス1回戦などは延長12回で7打数無安打を記録している。ところが10月17日、タイガース3回戦の5打数4安打で火がつくと六試合で28打数20安打の猛打を見せて打率を3割9分3厘に引き上げ、10月11日の名古屋3回戦から五試合連続ホームランも記録した。11月5日のセネタース5回戦第一打席で第10号ホームランを放ちこの時点で125打数50安打、打率4割を記録したがここをピークに調子を崩し、最終的には3割6分1厘、10本塁打、38打点でトリプルクラウンを獲得した。落合の全盛期が中島に近いものではないか。
 スタルヒンは19勝2敗、防御率1.05、奪三振146個、こちらも投手三冠を達成している。与四球が減少してWHIPが春季の1.03から0.86に良化したことにより安定味が増した。現在のダルビッシュのピッチングを想起させる。

 タイガースは前半もたつき後半追い上げたがジャイアンツを捕えるには至らなかった。日本選手権では西村幸生が復調し、若林忠志が肩の故障から復活し、御園生崇男が相変わらずのキレ味を見せつけてジャイアンツを寄せ付けず四連勝で二年連続チャンピオンに輝いた。
 景浦将は病気欠場(当ブログではサボタージュの可能性を考えているが)が続いたが日本選手権では底力を発揮し、最後は松木謙治郎とのアベックホームランで締め括った。藤村富美男は二塁打11本で第一位、打点33も中島治康に次いで第二位。波はあるが爆発力が素晴らしい。皆川定之が岡田宗芳から九番ショートの座を奪い取り貴重なつなぎ役を果たした。本堂保次も後半セカンドに定着し、日本選手権では攻守に大活躍であった。

 阪急は序盤戦で好投を見せた小田野柏の応召が痛かった。宮武三郎、石田光彦を軸に浅野勝三郎、重松通雄もその時々で好投を見せたが抜け出すまでには至らなかった。打撃陣では黒田健吾、上田藤夫の三遊間コンビの巧打が目に付いた。一方で山下実、宮武三郎、山下好一、ジミー堀尾文人が怪我や病気でシーズンを通して出場できず、終盤息切れとなった。

 名古屋はよく健闘したが終盤息切れして三位を逃した。松尾幸造がコントロールに長足の進歩を見せてエースに成長した点が大きい。桝嘉一が相変わらずの巧打を見せて32四球、出塁率は春季の4割9分3厘には及ばないものの4割1分8厘で中島治康に次いで第二位。中日球団は戦後にかけて本田逸郎、中、谷木、谷沢、田尾、立浪と左の巧打者を数多く輩出していくこととなるが、右の巧打者では桝嘉一は高木守道と双壁である。

 試合巧者セネタースでは金子裕が左のエースに成長、浅岡三郎は相変わらずの巧投を見せ、伊藤次郎も一時エース級の活躍を見せた。打撃陣では3割ちょうどでベストテン三位の尾茂田叶の強打が目を引いた。中島の三冠を阻止するとしたら尾茂田の打点だけであったが後半引き離された。遠藤忠二郎がホームラン5本でバッキー・ハリスと並んで第二位。森口次郎の、巧打も目に付いた。

 ライオンは大健闘であった。高田勝生監督は歴史的に見ると低評価に過ぎる。9月9日のジャイアンツ1回戦で二番セカンドで出場した大友一明は3打席連続三振で途中交代させられている。この日を境に大友はピッチャーに専念して2勝1敗1セーブ2完封、チームも4勝1敗、チーム内に何かの変化があった。高田監督は中京商業vs明石中学の延長25回の試合で明石中学の監督を務めるなど関西球界の重鎮として知られている。3三振の大友に対して高田監督が雷を落としたのか、はたまた懇々と諭したのか、チームのムードを変える何かを引き起こしたのは間違いないでしょう。左のミラクル投手近藤久が終盤戦で突如として奪三振王に変身した。

 イーグルスは期待に反した戦いぶりであった。バッキー・ハリスは3割2分を記録してベストテン第二位であったが今季限りで帰国してしまう。亀田忠の調子が上がらず中河美芳も春季のようなキレ味が無かった。望月潤一が成長してきたので来季は期待できるか。

 初参加となった南海はしぶとい試合運びが印象的であった。中村金次は2割9分でベストテン第四位。歴史的には評価は高くないが浪商-関大のエリートコースを歩んでいる。高野百介も主力打者として活躍した。来季を迎えることなく応召して戦死するので球史には今季のみ足跡を残している。

 金鯱は主力選手の応召が相次ぎ最下位に終わったが、佐々木常助が20個で盗塁王に輝き12年秋島秀之助、13年春江口行男に続き三期連続盗塁王となって「脚の金鯱」の伝統を守った。岡野八郎も15個で第二位となり、春季の一位江口、二位五味芳夫に続いて二期連続盗塁一位二位を独占した。球史では全く語られることの無い常川助三郎がタイガース戦、ジャイアンツ戦で激投を見せて二度の週間MVPに輝いた。


 二シーズン制は今季で終了し、昭和14年からは大リーグに倣って一シーズン制が採用される。但し便宜上春季・夏季・秋季に分けられることとなる。

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