2011年5月31日火曜日

13年秋 第9節 週間MVP

 今節は調子を上げてきたタイガースが4勝0敗、ジャイアンツが2勝0敗、名古屋が3勝2敗、イーグルスが2勝2敗1分、セネタースとライオンが2勝3敗、阪急が1勝2敗、南海が0勝2敗1分、金鯱が0勝2敗であった。



週間MVP

投手部門

 タイガース 西村幸生 1

 タイガース 御園生崇男 1

 今節4連勝のタイガースは西村と御園生が2勝ずつ。ピッチング内容では西村かもしれないが御園生は1完封があるので同時受賞とする。



打撃部門

 イーグルス バッキー・ハリス 1

 名古屋    大沢清 1

 セネタース 今岡謙次郎 1

 ハリスは18打数8安打2得点3打点、三塁打2本、3四球2盗塁。
 大沢は16打数7安打2得点5打点、二塁打1本、3四球1盗塁。
 今岡は18打数7安打2得点、二塁打2本、3四球。

 ハリスと大沢は四番、今岡は苅田久徳と中軸をつなぐ二番打者。それぞれの役割をこなして甲乙丙付け難し。と言うことで三者同時受賞とする。




殊勲賞

 名古屋 倉本信護 2

 11月1日の阪急4回戦で3対3の同点から8回裏に決勝ツーランホームランを放つ。10月19日のサヨナラ満塁ホームランに続いて2度目の受賞となる。



敢闘賞

 名古屋 松尾幸造 1

 今節1完封を含む2勝をマークする。



技能賞


 南海 政野岩夫 1


 イーグルス 古川正男 1


 11月2日のイーグルスvs南海 5回戦で共に延長11回を零封する。共に下手からの軟投派。



















13年秋 イーグルスvsタイガース 3回戦

11月3日 (木) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 イーグルス 12勝14敗4分 0.462 御園生崇男
0 0 0 0 0 1 4 0 X 5 タイガース  18勝11敗       0.621 中河美芳 望月潤一


勝利投手 御園生崇男 8勝4敗
敗戦投手 望月潤一     2勝2敗


タイガース5連勝


 タイガースは1回三者凡退、2回は一死後御園生崇男が左前打を放つが後続無く3回も玉井栄二ゴロ、皆川定之投ゴロで二死無走者、ところがここで先発の中河美芳にアクシデント勃発、翌日の読売新聞によると「指を傷つけて退いた」とのこと。急遽リリーフに出た望月潤一は読売新聞によると「伸びのよいシュート・ボールとアウドロでタ軍打者の手を焼かせ」るピッチングを見せ、松木謙治郎は四球で歩かせるが奈良友夫を遊ゴロに抑える。

 イーグルスは4回、一死後中根之がバントヒットで出塁して二盗に成功、バッキー・ハリスは三振に倒れるが望月が右前にタイムリーを放って1点を先制する。

 リリーフ望月に4回、5回と1四球ずつの無安打に抑えられていたタイガースは6回、一死後藤村富美男が中前打で出塁、二盗を試みるがハリスの強肩の前にタッチアウト、山口政信が四球を選んで二死一塁、続く御園生崇男の当りはショート後方への飛球、読売新聞によると「遊撃山田が深追いしたことが不測の禍根となって同点に盛り返され」る。すなわち、このプレーで一走山口が一気にホームに還り1-1の同点、御園生には打点が記録されている。

 タイガースは7回、一死後玉井の一飛をファースト大貫賢がエラー、皆川は四球、フォアボール目をハリスがパスボールする間に玉井は三塁に進んで一死一三塁、ここでハリスが三塁に牽制悪送球して玉井が還って2-1、トップに返り松木四球、奈良右翼線ヒットで一死満塁、藤村の二ゴロで三走皆川は本封されて二死満塁、山口が中前に2点タイムリーを放って4-1、御園生も右前にタイムリーで続いて5-1とする。

 御園生崇男は5回以降イーグルス打線を3安打無失点におさえ、結局6安打2四球6三振の完投で8勝目をあげる。

 景浦将を欠くタイガース打線であるが四番山口政信と五番御園生崇男が2打点ずつを記録、タイガースは上昇気流に乗ってこれで5連勝。二位阪急に勢いが感じられず、首位ジャイアンツを追うのはどうやらタイガースになってきたようだ。





          *御園生崇男、6安打完投で8勝目





2011年5月30日月曜日

玉腰年男と玉腰忠義

 昨日付けブログ「南海vsライオン4回戦」にkwai様からコメントをいただいたように、昭和13年10月後半から11月にかけてのスコアブックの表記において、別人である玉腰年男と玉腰忠義が混同しているようです。

 当ブログで解読しているスコアブックはB5大の用紙に一試合分両チームが上下に縮小コピーされているものと思われます。オリジナルはコミッショナー事務局にある筈ですが、オリジナルから清書したバージョンも存在しているのではないかと考えています。それを縮小コピーしたものを福室正之助氏が所有されており、数十年を経て私が神田神保町の古書店で購入したものです。縮小コピーは1970年代には登場していたと思われますので(少なくとも私の大学時代にはありました。)、その頃のものでしょう。

 今回の件で、オリジナルからの清書バージョンは後年作成されたものであることがほぼ確実になりました。戦後になって戦前の記録の洗い直しが行われたことは史実ですので恐らくその時ではないでしょうか。記録を洗い直すのはかなり丹念な作業を要しますので、書かれたものを読んでいくよりはワンプレー毎に書き写していく方が正確に洗い直し作業ができると思います。写すことが目的なのでは無く記録を洗い直すことが目的な訳ですから。もちろん保存も目的であったと考えられます。

 写真でも掲載させていただいているとおり、選手名はゴム印で押されいるものと思われます。スコアの清書は山内以九士氏が行ったと推測されますが、選手名はコミッショナー事務局のスタッフがゴム印で押していたのではないでしょうか。ここで玉腰年男と玉腰忠義の混同が生じてしまったのではないでしょうか。山内以九士氏(或は広瀬謙三氏かもしれませんが)が間違えるとも思えませんので、恐らく不慣れなスタッフが、もちろん善意で手伝ったために生じたミスではないでしょうか。

 kwai様が書かれているとおり、玉腰年男が一時忠義に改名していた可能性もゼロではありませんが。因みにkwai様は当時の記録を丹念に調査されている方です。システムトラブルのためか、コメントの返事ができませんのでこちらで失礼させていただきます。

2011年5月29日日曜日

13年秋 イーグルスvsライオン 4回戦

11月3日 (木) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 4 0 0 1 4 0 0 9 イーグルス 12勝13敗4分 0.480 亀田忠
1 0 0 0 0 0 1 0 0 2 ライオン    15勝18敗       0.455 大友一明 近藤久


勝利投手 亀田忠 5勝8敗
敗戦投手 近藤久 2勝5敗


二塁打 (ラ)鬼頭
三塁打 (イ)ハリス
本塁打 (イ)中根 1号


イーグルス打線爆発


 変則ダブルのライオンは第一試合でエース菊矢吉男を使っているので第二試合は大友一明の先発。

 ライオンは初回、先頭の坪内道則が四球で出塁、鬼頭数雄が送って水谷則一の三塁内野安打で鬼頭は動けず一死一二塁、室井豊が中前にタイムリーを放って1点を先制する。

 イーグルスは3回、この回先頭の杉田屋守が中前打で出塁、山田潔四球、漆原進の投ゴロで杉田屋は三封、トップに返り寺内一隆は左飛に倒れるが野村実が中前にタイムリーを放って1-1の同点としてなお二死一二塁、ここで中根之が左中間を抜いて二者生還、中根も三塁ベースを蹴ってホームを駆け抜けインサイド・ザ・パーク・ホームランとなって4-1とする。ライオンは4回から近藤久が二番手として登場。

 イーグルスは6回、中根が左翼線ヒットから二盗に成功、キャッチャー室井の悪送球で中根は三塁に進む。バッキー・ハリスは捕邪飛に倒れるが菊谷が右犠飛を打ち上げて5-1とする。

 イーグルスは7回、この回先頭の杉田屋が右前打で出塁、山田の三ゴロをサード中谷順次がエラー、漆原の三ゴロを今度はファースト玉腰忠義がエラーして無死満塁、トップに返り寺内一隆の二ゴロで漆原が二封される間に杉田屋が還って6-1、野村三振、中根四球を選んで二死満塁、ここでハリスが走者一掃となる左中間三塁打を放って9-1として試合を決める。 

  亀田忠は9安打5四球5三振の完投で今季5勝目をあげる。ここ10試合で18得点、零封が3回と鳴りを潜めていたイーグルス打線は久々に爆発、三番中根之、四番バッキー・ハリスが共に3打点ずつを記録した。


 ライオン先発の大友一明は4失点で自責点は4、二番手の近藤久は5失点で自責点は0。現行ルールでは当然大友が敗戦投手となるが公式記録では近藤に敗戦投手が記録されている。








13年秋 南海vsライオン 4回戦

11月3日 (木) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 0 0 0 0 0 0 0 2  2 南海         7勝22敗3分 0.241 宮口美吉
3 0 0 0 2 0 1 0 X  6 ライオン 15勝17敗       0.469 菊矢吉男


勝利投手 菊矢吉男 8勝8敗
敗戦投手 宮口美吉 4勝9敗


二塁打 (ラ)玉腰


南海、44イニングス振りの得点も単独最下位


 ライオンは初回、先頭の坪内道則がいきなり死球を得て出塁、鬼頭数雄の三前バントが内野安打となって無死一二塁、水谷則一の二ゴロを負傷から復帰のセカンド西端利郎がエラーして無死満塁、四番室井豊は三振に倒れるが玉腰年男の二ゴロを西端が連続エラーする間に三走坪内に続いて二走鬼頭も還って2点を先制する。更に水谷三盗、菊矢吉男四球で一死満塁、中谷順次が中犠飛を打ち上げて3-0とする。

 ライオンは5回、一死後室井が四球で出塁、玉腰が左翼線に二塁打を放って一死二三塁、パスボールで室井が還って4-0、菊谷が四球で歩き中谷が左翼線にタイムリーを放って5-0とする。更に7回、一死後玉腰が四球で出塁、菊谷の三ゴロをサード上田良夫が一塁に悪送球して一死一三塁、6回から中谷に代わってサードに入っている柳澤騰市の二ゴロの間に玉腰が還って6-0とする。
 菊矢吉男は8回まで南海打線を5安打無得点に抑える。

 南海は9回、この回先頭の高野百介が右前打で出塁、中田道信が左前打で続いて無死一二塁、宮口美吉四球で無死満塁、海蔵寺弘司に代わって負傷欠場が続いていた中村金次が代打で登場、中村の二ゴロの間に高野が還って1-6、トップに返り小林悟楼四球で一死満塁、平井猪三郎の二ゴロの間に中田が還って2-6とするが時すでに遅し。

 菊矢吉男は8安打6四球6三振の完投で今季8勝目をあげる。最終回の2点は、点差から考えて確実にアウトを取るために満塁でも定位置で守っていたはずであり内野ゴロによる2失点は致し方のないところ。

 宮口美吉は8回を投げ切り5安打8四球1死球2三振、6失点の内自責点は2と三つのエラーに足を引っ張られた。金鯱と同率最下位に並んでいた南海は再び単独最下位に転落。南海はこれで八試合連続3点以下の得点しか上げていない。二試合連続完封負けの後延長11回を0対0で引き分けておりこの日の8回まで43イニングス連続無得点、9回の得点は10月23日の金鯱4回戦3回裏に上げた1点以来44イニングス振りの得点となった。



 なお、ライオンの玉腰年男については本日のスコアブックでは「玉腰忠義」となっております。10月16日付け読売新聞にプロ入りの記事が載っておりますが「明治(大学=筆者注)の新人として将来を期待された享栄商業出身の一塁手玉腰年男選手(22歳)は今回プロ野球に転向してライオンに入社、聯盟理事会で正式に登録された」と書かれており、10月16日のデビュー戦南海3回戦ではスコアブックの表記も「玉腰年男」となっています。以降「玉腰年男」名で出場していましたが、10月24日のセネタース4回戦から「玉腰忠義」表記に変わっており本日に至っていることに本日気が付きました。昭和13年中は「玉腰忠義」名で出場していますが昭和14年には「玉腰年男」名に再度変わっています。次のゲームからは「玉腰忠義」でお伝えすることとさせていただきます。





          *10月16日に「玉腰年男」でデビュー





          *10月24日から「玉腰忠義」に変更



13年秋 名古屋vsセネタース 5回戦

11月3日 (木) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 1 0 0 1 2 0 0 0 5 名古屋      17勝11敗3分 0.607 松尾幸造
0 0 0 2 0 0 0 0 0 2 セネタース 16勝17敗1分 0.485 浅岡三郎


勝利投手 松尾幸造 10勝4敗
敗戦投手 浅岡三郎    5勝4敗


二塁打 (名)松尾
本塁打 (セ)浅岡 2号


松尾幸造10勝目


 ダブルヘッダーの第二試合は雨模様。名古屋・根本行都監督は第一試合で三度のチャンスに悉く凡退した四番・白木一二を外すという厳しさを見せた。根本監督は中央大学野球部の第二代監督。現在は第十三代の高橋善正(1967年に東映で新人王)監督であることはご存じのとおり。

 名古屋は初回、先頭の戒能朶一の三ゴロをサード磯野政次が一塁に悪送球、二死後大沢清右前打で一二塁、倉本信護がノースリーから打って出て左前に先制タイムリーを放つ。

 名古屋は2回、二死から石田政良が左翼線にヒット、二盗を決めて戒能四球で二死一二塁、鈴木秀雄が中前にタイムリーを放って2-0とする。
 
 セネタースは4回、この回先頭の北浦三男は三球三振に倒れるが尾茂田叶が四球を選んで一死一塁、遠藤忠二郎三振で二死一塁、ここで浅岡三郎が左翼スタンドに同点ツーランを叩き込んで2-2とする。

 名古屋は5回、この回先頭の桝嘉一の三ゴロをサード磯野がこの試合二つ目のエラー、大沢が中前打を放って無死一二塁、倉本が送りバントを決めて村瀬一三四球で一死満塁、三浦の三ゴロ併殺崩れの間に桝が還って3-2と勝ち越す。

 名古屋は6回、一死後戒能がストレートの四球を選んで出塁、鈴木の中前打で一死一三塁、桝が左前にタイムリーを放って4-2としてなお一死一二塁、続く大沢の遊ゴロで二走鈴木が一気にホームに還って5-2とする。エンドランがかかっていたのであろう。

 松尾幸造は7安打4四球6三振、131球の完投で待望の10勝目をあげる。とにかく制球が安定してきた。ハーラーダービーは13勝のスタルヒンが独走中であるが松尾にも目が出てきたか。雨が強くなって第三試合に予定されていたジャイアンツvs阪急戦は順延された。



        *松尾幸造の10勝目を伝えるスコアブック












2011年5月28日土曜日

13年秋 名古屋vsセネタース 4回戦

11月3日 (木) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 1 0 0 0 0 0 1 2 名古屋    16勝11敗3分 0.593 西沢道夫
3 0 0 0 0 0 0 0 X 3 セネタース 16勝16敗1分 0.500 金子裕


勝利投手 金子裕     8勝7敗
敗戦投手 西沢道夫 3勝3敗


二塁打 (セ)今岡
本塁打 (名)三浦 1号 (セ)遠藤 4号


先手必勝


 セネタースは初回、一死後今岡謙次郎がツーワンからの4球目を左翼線に二塁打、北浦三男の三ゴロをサード倉本信護がエラーして一死一三塁、北浦が二盗を決めて一死二三塁、尾茂田叶の三ゴロで今岡がホームを突くが倉本からのバックホームに刺されて二死一三塁、ここで遠藤忠二郎が初球を左翼スタンドに第4号スリーランホームラン、3点を先制する。

 名古屋は3回、この回先頭の三浦敏一がワンワンからの3球目を左翼スタンドにホームランして1-3とする。

  名古屋は9回、二死から三浦がストレートの四球を選んで出塁、西沢道夫に代わる代打繁里栄もワンスリーから四球を選んで二死一二塁、トップに返り戒能朶一が左前にタイムリーを放って2-3とするが最後は石田政良が三振に倒れてセネタースが3A対2で逃げ切る。セネタースは前日の阪急戦でも初回の4点を守りきったがこの日もスミ三を守り抜いての勝利となった。

 金子裕は5安打5四球1死球5三振の完投で8勝目をあげる。156球を投げておりコントロールに苦しんだように見えるが翌日の読売新聞宇野庄治記者の論評は「この日の金子は絶妙の制球力を発揮して崩れんとして崩れず最後までプレートを健守した手腕はなかなか味わうべきものがあった。」と書かれている。


 この時代は四球が多くピッチャーのコントロールが悪いように見えますが、現代と比較してストライゾーンの違いにも起因しているようです。杉浦清著「ユニフォームは知っている」(昭和30年7月初版)によると「審判のことども」の項で「当時はコースにふれても、ストライクを宣告しなかった。その人にもよるが、ベースの二角を通過しなければ、あるいはボールの中心がコースにかかっていなければ、ストライクを宣告しないことになっていたらしい。」「・・・ゆえに選手たちはなるべくボールを選ぶことに集中し・・・いわば消極的な打法で、日本の打撃がアメリカの打撃に劣るのは一に体格のゆえもあるがこの消極的過程を経たことも、見逃しできぬことの一つだとわたくしは思っている。」とのこと。

 現代よりも左右共にボール半個分ストライクゾーンが狭かったようです。


 杉浦清は中京商業の甲子園三連覇時の遊撃手、明治大学でも東京六大学で四連覇している。頭脳も優秀で高等文官試験(現在のⅠ種(キャリア)試験)を受ける予定であったが義を重んじて高級官僚への道をかなぐり捨てて海草中学のコーチを引き受け、それまで甲子園で力を発揮することができなかった嶋清一を指導して準決勝、決勝連続ノーヒットノーランを達成する潜在能力を引き出した。プロ野球に進んだのは30歳を過ぎた戦後の事となるが立派な成績を残している。日本球界が生んだ最高級の人物の一人である。











13年秋 ライオンvsタイガース 5回戦

11月2日 (水) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 ライオン   14勝17敗 0.452 大友一明 菊矢吉男 近藤久
0 0 0 0 0 5 1 0 X 6 タイガース 17勝11敗 0.607 西村幸生


勝利投手 西村幸生 7勝2敗
敗戦投手 大友一明 5勝5敗


二塁打 (タ)西村


西村幸生復調


 3回まで西村幸生に1四球に抑えられていたライオンは4回、この回先頭の鬼頭数雄が右前打で出塁、水谷則一も右前打で続いて無死一二塁、キャッチャー牽制悪送球後、中谷順次の三ゴロの間に三走鬼頭が還って1点を先制する。

 5回まで大友一明に西村の二塁打1本に抑えられてきたタイガースは6回、西村が左翼線にヒットを放って出塁、トップに返り松木謙治郎死球、奈良友夫の送りバントが内野安打となって無死満塁、藤村富美男が押出し四球を選んで1-1の同点、山口政信は三振に倒れるが門前真佐人が左前にタイムリーを放って2-1と逆転、御園生崇男が押出し四球を選んで3-1、ライオンベンチは大友をあきらめて菊矢吉男を投入する。伊賀上良平の遊ゴロで一走御園生が二封される間に三走藤村が生還、更に二走門前も三塁ベースを蹴ってホームに還り5-1とする。伊賀上には打点2が記録されている。このプレーを翌日の読売新聞は「門前の離れ業の走塁」と伝えている。

 タイガースは6回、一死後松木、奈良が連続四球、藤村の遊ゴロで奈良は二封、パスボールの間に松木が還って6-1とする。

 西村幸生は5回以降無安打無得点ピッチング、結局許したヒットは4回の2安打のみ、3四球3三振自責点0の完投で今季7勝目をあげる。打っても3打数2安打1得点。タイガースはようやく西村が調子を取り戻してきた。前日の御園生崇男の完封もあり、ようやく追撃態勢が整ってきた。











2011年5月27日金曜日

13年秋 イーグルスvs南海 5回戦

11月2日 (水) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0   0   0 イーグルス 11勝13敗4分 0.458 古川正男
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0   0   0 南海             7勝21敗3分 0.250 政野岩夫


三塁打 (イ)ハリス

延長11回、引き分く


 イーグルス・古川正男は4安打4四球5三振、南海・政野岩夫は6安打7四球2死球無三振、両アンダーハンドは共に延長11回を完投して無得点に封じた。

 イーグルスは初回、先頭の寺内一隆が投前バントヒットで出塁、野村実が送って一死二塁とするが後続無し。2回も先頭の中河美芳が中前打で出塁するが盗塁失敗。直後に太田健一が四球を選ぶが後続無し。4回にもバッキー・ハリス、中河の連打と太田の四球で一死満塁のチャンスを作るが古川の投ゴロでハリスは本封、山田潔も遊ゴロに倒れる。

 イーグルスは9回、一死後山田が死球で出塁するが漆原進の遊ゴロで6-4-3のゲッツー。11回にも先頭の古川が右前打、山田が送って代打伏見五郎の死球で一死一二塁とチャンスを作るが寺内の遊ゴロは又も6-4-3のゲッツー。

 政野岩夫は再三のピンチを内野ゴロで切り抜け、10月17日のイーグルス4回戦での完封勝利に続いて20イニング連続イーグルス打線を封じ込む。死球2を記録しているように大胆に内懐を突いていたのであろう。遊ゴロが11、三ゴロが3、投ゴロが5個。イーグルスは13残塁を記録する。

 古川正男は南海打線にチャンスらしいチャンスを与えず散発4安打に封じ込む。

 南海・ショートの小林悟楼は11補殺を記録してノーエラー、打っても3打数2安打を記録する。
 



      *古川正男と政野岩夫が繰り広げた投手戦




    





2011年5月26日木曜日

13年秋 阪急vsセネタース 4回戦

11月2日 (水) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 1 2 0 0 0 0 0 3 阪急     17勝9敗2分  0.654 重松通雄 高橋敏
4 0 0 0 0 0 0 0 X 4 セネタース 15勝16敗1分 0.484 浅岡三郎


勝利投手 浅岡三郎 5勝3敗
敗戦投手 重松通雄 3勝1敗


本塁打 (阪)山田 1号


浅岡三郎、完投で5勝目


 セネタースは初回、先頭の苅田久徳が左前打で出塁、今岡謙次郎中前打、北浦三男の中飛で苅田が三塁に進み一死一三塁、尾茂田叶の遊ゴロをショート上田藤夫がエラーする間に苅田が還って1点を先制、佐藤武夫がワンスリーから四球を選んで一死満塁、ここで家村相太郎が右前に2点タイムリーを放ち3-0、佐藤も三塁を陥れてなお一死一三塁、浅岡三郎の遊ゴロの間に佐藤が還って4-0とする。

 阪急は3回、一死後二番フランク山田伝がレフトスタンドにホームランを放って1-4とする。更に4回、この回先頭の大原敏夫の遊ゴロをショート今岡がエラー、重松通雄の二ゴロで大原は二進、西村正夫に代わる代打浅野勝三郎は四球、ピッチャー牽制悪送球で大原は三進、山田は投ゴロに倒れるが黒田健吾が四球を選んで二死満塁、山下好一の遊ゴロを今岡がこの回二つ目のエラー、二者が還って3-4と追いすがる。

 しかし阪急打線は5回の大原の左前打を最後に6回以降浅岡三郎に無安打に抑えられる。5回途中から阪急先発重松通雄をリリーフした高橋敏も4イニングを1安打無失点ピッチング。

 ここ二試合で31失点のセネタースは本日は浅岡三郎が5安打5四球2三振の完投で今季5勝目をあげる。

 首位ジャイアンツを追う阪急は手痛い連敗を喫し、逆に三位名古屋に1ゲーム、四位タイガースに1.5ゲーム差に迫られてきた。










景浦の打球は太平洋に消えたのか

 5月25日付けスポニチ二面、二宮清純氏のコラム「唯我独論」に「澤村や景浦を顕彰すべき」と言う論評が掲載されています。二宮氏はこの手の話を時々掲載されています。澤村と景浦の話となると昭和11年洲崎決戦第一戦の景浦の「太平洋ホームラン」が登場する訳ですが、この日のコラムにも「『東京湾に入る』とまで言われた特大アーチを浴びた」書かれています。流石は二宮氏、洲崎球場の場外ホームランは太平洋まで届くはずはなく飛んでも東京湾までであるという位置関係をご存じなのでしょう。更に「とまで言われた」と断定を避けているあたりは、実は場外ホームランでは無かったという可能性までご存じのようです。


 昭和11年12月10日付け読売新聞には鈴木惣太郎氏の論評が掲載されていますが、ここには「左翼ブリーチャーに飛び込む大本塁打」と書かれています。同じ紙面に試合経過の詳報が記載されていますがここには「景浦ワンスリー後左翼観覧席に入る本塁打を放ち三者生還」と書かれています。


 竹中半平氏著「背番号への愛着」の景浦の項にはこのホームランについて「左翼スタンドの空高く飛び去ったあの一打」と書かれておりこの記述は場外ホームランの可能性を示唆しています。


 大和球士氏著「真説 日本野球史」(昭和篇その二)には「左翼スタンドへホームラン」と書かれています。


 一方、同じく大和球士氏著「プロ野球三国志」第四巻には「景浦の打った球は左翼の木造スタンドの上段にコオンと鈍い音を立てて場外へ去った。」と書かれており、「プロ野球三国志」の記述が「太平洋ホームラン説」の根拠となっていると推察されます。


 以上の記述の中で最も信憑性の高いものは矢張り読売新聞の鈴木惣太郎氏の論評ではないかと思います。「左翼ブリーチャー」とはレフトの外野スタンドのことを言いますので残念ながら洲崎決戦の景浦のスリーランホームランは太平洋(東京湾)に消えた場外ホームランでは無かったと考えられます。


 恐らく他の試合で景浦が洲崎球場で場外ホームランを打った事実はあるのだと思います。それが混同されて洲崎決戦の本塁打が「太平洋ホームラン」として伝わってしまったのではないでしょうか。但し、今更否定しても何のメリットもありません。「太平洋ホームラン」としておいた方が、夢があって良いのではないでしょうか。

13年秋 金鯱vs名古屋 4回戦

11月2日 (水) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 金鯱     8勝24敗      0.250 常川助三郎
0 0 2 0 0 0 2 0 X 4 名古屋 16勝10敗3分 0.615 松尾幸造


勝利投手 松尾幸造     9勝4敗
敗戦投手 常川助三郎 4勝8敗


二塁打 (名)鈴木2


松尾幸造、今季三度目の完封


 名古屋は3回、一死後三浦敏一が左前打で出塁、松尾幸造の右前打で一死一三塁、トップに返り戒能朶一が右犠飛を打ち上げて1点を先制、鈴木秀雄が二塁に内野安打、桝嘉一のピッチャー強襲ヒットで二塁から松尾が還って2-0、更に一走鈴木もホームを突くがバックアップに入ったライト小林茂太からのバックホームに刺されてスリーアウトチェンジ。

 名古屋は4回も二死から倉本信護、村瀬一三の連打が出るが無得点。5回も一走戒能が鈴木の右翼線二塁打でホームを突くが又もライト小林茂太からピッチャー常川助三郎への中継プレーで本塁憤死。

 名古屋は7回、一死後松尾が四球で出塁、戒能は三塁ライナーに倒れるが鈴木が右翼線に二打席連続となる二塁打を放って松尾が生還し3-0、桝の中前タイムリーで4-0とする。

 松尾幸造は制球が安定しており6安打4四球6三振、132球で今季三度目の完封を飾る。松尾は打っても2打数2安打2得点1四球の活躍ぶりを見せる。


 八番三浦敏一が1得点、前述のとおり九番松尾が2得点、一番戒能朶一が1打点、二番鈴木秀雄が4打数3安打1打点二塁打2本、三番桝嘉一が3打数2安打2打点と、4つの得点と打点は八番~三番が記録しているように打線のつながりを見せて名古屋が快勝する。因みに四番白木一二、五番大沢清の國學院大學コンビは共に無安打、主軸が打てない時は周りがカバーすれば勝てます。メジャーでも今季久々に好調を見せているシアトル・マリナーズは豪打に頼っているわけでは無く打線のつながりで勝利を拾っていってます。






       *松尾幸造の今季三度目の完封を伝えるスコアブック






2011年5月24日火曜日

13年秋 南海vsタイガース 4回戦

11月1日 (火) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 南海       7勝21敗2分 0.250 納家米吉
1 0 0 1 0 0 0 1 X 3 タイガース 16勝11敗       0.593 御園生崇男


勝利投手 御園生崇男 7勝4敗
敗戦投手 納家米吉     0勝1敗


三塁打 (タ)松木


伊賀上良平、全得点に絡む活躍


 タイガースは初回、一死後奈良友夫の遊ゴロをショート小林悟楼が一塁に悪送球する間に奈良は二塁に進む。藤村富美男の左前打で一死一三塁、山口政信の三ゴロで三走奈良が突っ込むがサード鈴木芳太郎からのバックホームにタッチアウト、御園生崇男四球で二死満塁、伊賀上良平が押出し四球を選んで1点を先制する。

 タイガースは4回、この回先頭の伊賀上が左前打で出塁、カイザー田中義雄の一塁内野安打で無死一二塁、玉井栄は左飛に倒れるが皆川定之の左前打で一死満塁、トップに返り松木謙治郎の中犠飛で2-0とする。

 タイガースは8回、一死後四番山口が四球で出塁、御園生が中飛に倒れると山口が二盗に成功して二死二塁、伊賀上が右前にタイムリーを放って3-0とする。

 南海は西端利郎、中村金次の主力を怪我で欠き苦しい打線。御園生崇男は4安打8四球と毎回のように走者を出しながら決定力を欠く南海打線を抑え切り3三振で今季初完封。南海は11残塁を記録する。

 伊賀上良平が3打数2安打1得点2打点でタイガースの全得点に絡む活躍を見せる。














13年秋 イーグルスvsライオン 3回戦

11月1日 (火) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 2 0 1 2 0 0 0 0 5 イーグルス 11勝13敗3分 0.458 中河美芳 亀田忠
0 1 0 0 2 0 0 0 0 3 ライオン    14勝16敗       0.467 菊矢吉男


勝利投手 亀田忠     4勝8敗
敗戦投手 菊矢吉男 7勝8敗


二塁打 (イ)中河


ライオン、手痛い4失策


 イーグルスは2回、この回先頭のバッキー・ハリスが左前打で出塁、中河美芳の三ゴロをサード中谷順次が二塁に悪送球する間にハリスが三塁に進み無死一三塁、太田健一は三振に倒れるが大貫賢の投ゴロでハリスがホームに突入するとピッチャー菊矢吉男のバックホームをキャッチャー福士勇が落球、ハリスが還って1点を先制してなお一死一三塁。大貫は盗塁に失敗して二死三塁、山田潔が四球を選んで二死一三塁、今度はダブルスチールを決めて2-0とする。大貫の盗塁失敗もダブルスチールのサインであったのであろう。


 ライオンは2回裏、この回先頭の玉腰年男が四球で出塁、菊矢は三振に倒れるが山本尚敏、福士勇が連続四球で一死満塁、イーグルス先発の中河美芳は1回にも2個の四球を与えておりこれで5四球、降板命令が出て大貫に代わりファーストに入り大貫に代わり亀田忠がマウンドに上がる。しかし酒沢政夫が押出し四球を選んで1-2、坪内道則は三ゴロに倒れてスリーアウトチェンジ。


 イーグルスは4回、この回先頭のハリスが左前打で出塁、二盗を決めて無死二塁、中河の一ゴロでハリスは三進、太田は四球、亀田の遊ゴロをショート酒沢が二塁に送球するがセーフ、野選となる間にハリスが還って3-1とする。


 イーグルスは5回、この回先頭の野村実が四球を選んで出塁、中根之が右前打で続き無死一二塁、ハリスが捕前に送りバントを決めて一死二三塁、中河の遊ゴロをショート酒沢がエラーする間に野村が還って4-1、太田の遊ゴロで中根が本塁に突っ込むと酒沢が今度はホームに悪送球して5-1とする。


 ライオンは5回裏、坪内四球、水谷則一四球から玉腰、菊谷が連続してタイムリーを放ち3-5とするがここまで。


 イーグルス二番手の亀田忠は7回3分の2を投げて4安打10四球4三振。山田潔が四打席連続四球を記録する。


 菊矢吉男も9回を投げ抜き4安打7四球2三振。ライオンは中河、亀田から15四球を与えてもらうが4併殺でチャンスを潰し、守りでは4失策で墓穴を掘った。


 熾烈な五位争いはライオンとセネタースが同率五位、イーグルスがゲーム差なしで七位となった。









2011年5月23日月曜日

13年秋 阪急vs名古屋 4回戦

11月1日 (火) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
2 0 0 0 0 0 0 1 0 3 阪急     17勝8敗2分   0.680 宮武三郎 石田光彦
1 0 2 0 0 0 0 2 X 5 名古屋 15勝10敗3分 0.600 西沢道夫


勝利投手 西沢道夫 3勝2敗
敗戦投手 宮武三郎 5勝2敗

二塁打 (阪)西村 (名)桝、大沢
本塁打 (阪)黒田 3号、山下好 1号 (名)倉本 3号


倉本信護、決勝ツーラン


 阪急は初回、先頭の西村正夫が右中間に二塁打、一死後黒田健吾がノーツーからの3球目を左翼スタンドに叩き込む第3号ツーラン、2点を先制する。

 名古屋は1回裏、二死後桝嘉一がツーワンからファウルで2球粘った後左中間に二塁打、白木一二はストレートの四球で歩き大沢清のピッチャー強襲ヒットで二走桝が還って1-2とする。

 名古屋は3回、この回先頭の鈴木秀雄がツースリーから四球を選んで出塁、桝は一邪飛に倒れるが白木の一塁内野安打で二死一二塁、鈴木が三盗を決めて二死一三塁、大沢が右中間に痛烈な二塁打を放って二者生還し、3-2と逆転に成功する。

 名古屋は4回、この回先頭の三浦敏一が中前打で出塁、西沢道夫の二ゴロをセカンド宇野錦次がエラーして無死一二塁、阪急はここで先発の宮武三郎をファーストに回して二番手の石田光彦にスイッチ、石田は後続を抑えて名古屋はこの回無得点。名古屋は5回、一死一塁に四球の白木を置いて倉本信護が一塁への小飛球、白木が飛び出しておりファースト宮武三郎が一塁ベースを踏んで無補殺併殺を記録する。

 阪急は8回、この回先頭の山下好一が右翼スタンドにホームランを叩き込んで3-3の同点に追い付く。

 名古屋は8回裏、この回先頭の大沢清が右前打で出塁、ここで倉本信護が左翼スタンドに決勝の第3号ツーランホームランを放って5-3としてそのまま逃げ切る。

 西沢道夫は7安打3四球3三振の完投で今季3勝目をあげる。

 倉本信護は10月19日のサヨナラ満塁ホームランに続く殊勲のホームランを放った。10月19日の第1号から14日間で3本のホームランを放ったことになる。











2011年5月22日日曜日

13年秋 ジャイアンツvsセネタース 4回戦

11月1日 (火) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 1 3 2 4 1 3 1 0  15 ジャイアンツ 22勝6敗1分   0.786 水原茂 楠安夫
1 0 0 2 0 0 5 0 0   8  セネタース   14勝16敗1分 0.467 伊藤次郎 金子裕 塩田猪年男


勝利投手 水原茂 7勝2敗
敗戦投手 金子裕 7勝7敗
セーブ   楠安夫 1


二塁打 (ジ)中島、川上 (セ)北浦、今岡
本塁打 (ジ)中島8号、9号 (セ)佐藤 1号


ワンバウンドをホームランか?


 一昨日のライオン5回戦で16点を取られたセネタースは初回、先頭の苅田久徳が中前打で出塁、森口次郎が送って北浦三男の左中間二塁打で1点を先制する。

 ジャイアンツは2回、この回先頭の中島治康が初球を中前に弾き返して出塁、伊藤健太郎は見逃し三振に倒れるが川上哲治が初球を右前打、水原茂の遊ゴロで川上が二封されて二死一三塁、平山菊二の内野安打で中島が還って1-1の同点とする。

 ジャイアンツは3回、先頭の三原脩が中前打、白石敏男がワンスリーから左前打、千葉茂が珍しく捕前に送りバントを決めて一死二三塁、中島はストレートの四球で歩くがこれは敬遠でしょう。伊藤は二打席連続三振にたおれて二死満塁、川上がツースリーから押出し四球を選んで2-1、水原の三塁内野安打で3-1、平山のピッチャー強襲ヒットで4-1とする。セネタースは先発の伊藤次郎をあきらめて二番手に金子裕を投入、吉原正喜が遊直に倒れてスリーアウトチェンジ。

 ジャイアンツは4回、二死後千葉がツーツから右前打で出塁、中島がレフトスタンドに第8号ツーランを叩き込んで6-1とする。

 セネタースは4回裏、一死後尾茂田叶がピッチャー強襲ヒットで出塁、佐藤武夫が左翼スタンドにツーランホーマーを叩き込んで3-6と追い上げる。

 ジャイアンツは5回、この回先頭の川上がワンスリーから四球で出塁、水原が右前打を放って無死一二塁、二死後三原が中前にタイムリーを放って7-3、白石がストレートの四球で二死満塁、千葉もツーワンと追い込まれながら押出し四球を選び8-3、中島が右翼線にタイムリー二塁打を放って10-3とする。更に6回、川上、水原のれんだで無死一三塁として三田政夫の遊ゴロの間に川上が還って11-3とする。

 ジャイアンツは6回から先発の水原を下げて二番手に楠安夫を投入。セネタースは7回から三番手として塩田猪年男をマウンドに送る。

 ジャイアンツは7回、この回先頭の千葉の遊ゴロをショート今岡謙次郎がエラー、中島が左翼スタンドにこの日2本目となる第9号ツーランを叩き込んで13-3、伊藤ストレートの四球、川上左中間二塁打、楠四球で無死満塁、三田の中犠飛で14-3とする。

 セネタースは7回裏、この回先頭の佐藤が四球、今岡が左中間に二塁打、レフト伊藤からの返球が逸れる間に佐藤が鈍足を飛ばしてホームに還り4-14、今岡も三塁に進む。一死後青木幸造四球、磯野政次の三ゴロをサード千葉がエラーする間に今岡が還って5-14、トップに返り苅田が四球を選んで一死満塁、森口の二ゴロの間に青木が還って6-14、北浦のピッチャー強襲ヒットで7-14、尾茂田の遊ゴロをショート白石がエラーする間に磯野に続いて苅田もが還って8-14、とする。

 ジャイアンツは8回にも川上哲治間のタイムリーで1点を追加し15対8で快勝する。セネタースはここ2試合で31失点となった。


 中島治康は5打数4安打4得点6打点、二塁打1本、本塁打1本、今季通算124打数49安打で打率を3割9分5厘としてきた。ここまで29試合で5安打が1回、4安打はこの日で5回目である。本日の第三打席、金子裕から打ったレフトスタンドへのホームランが中島治康の代名詞とも言える「ワンバウンドのボールを打ったホームラン」かもしれない。大和球士著「真説 日本野球史 昭和篇その三」に書かれています。ここでは日付けが11月2日(私が見ているのは第1版第1刷)となっていますが11月1日です(因みに11月2日にはジャイアンツの試合はありません。)。中島本人は否定しているとも言われていますが、照れ屋の中島のことですから真偽の程は分かりません。



*中島の第三打席がワンバウンドをホームランした可能性がある。





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2011年5月21日土曜日

13年秋 セネタースvsライオン 5回戦

10月30日 (日) 甲子園


1  2  3 4 5 6 7 8 9  計
2  0  3 0 0 0 0 1 0  6 セネタース  14勝15敗1分 0.483 金子裕 伊藤次郎 浅岡三郎 塩田猪年男
1 11 0 0 0 0 0 4 X 16 ライオン     14勝15敗       0.483 菊矢吉男


勝利投手 菊矢吉男 7勝7敗
敗戦投手 浅岡三郎 4勝3敗


三塁打 (ラ)坪内、菊谷


1イニング二桁得点


 セネタースは初回、先頭の苅田久徳が四球で出塁、苅田がスタートを切って森口次郎が一塁線にドラッグバント、これが内野安打となってバントエンドランが決まり無死一三塁。因みに当ブログではスコアブックの記載から左打者による一塁線バントと判断できるケースはセーフティバントではなくドラッグバントと表記させていただいております。尾茂田叶が右前にタイムリーを放って1点を先制して再び無死一三塁、遠藤忠二郎の二ゴロの間に森口が還って2-0とする。

 ライオンは1回裏、坪内道則、鬼頭数雄が連続四球、水谷則一の左前打で無死満塁、中谷順次が中犠飛を打ち上げて1-2とする。

 ライオンは2回、この回先頭の山本尚敏が四球で出塁、続く福士勇のカウントがツーボールナッシングとなったところでセネタースベンチは先発の金子裕をあきらめて伊藤次郎を投入する。しかし福士も四球、酒沢政夫の右前タイムリーで2-2の同点、トップに返り坪内も四球を選んで無死満塁、セネタースは伊藤が降板して三番手に浅岡三郎を注ぎ込む。鬼頭が二飛に倒れて一死満塁、水谷のピッチャー強襲ヒットで3-2と逆転、中谷押出し四球で4-2、玉腰年男の中前タイムリーで5-2とする。更に菊矢吉男が左前にタイムリーを放って6-2、山本の遊ゴロで菊谷が二封される間に中谷が還って7-2、山本が盗塁を決めて福士四球で二死満塁、酒沢が右前に2点タイムリーを放って9-2、再びトップに返り坪内が右中間にこの回唯一の長打となる三塁打を放って11-2、鬼頭が右前にタイムリーを放ってこの回11点目をあげて12-1とし、水谷の遊ゴロで鬼頭が二封されてようやく打者15人によるライオンの歴史的攻撃が終了する。

 セネタースは3回、先頭の苅田が四球で出塁、パスボールで苅田は一気に三塁を陥れ、森口四球で無死一三塁、尾茂田が中前に二打席連続タイムリーを放って3-12、森口が三盗を決めて無死一三塁、ここで菊矢が一塁に牽制球を投げた隙を突いて森口がホームに走るとファースト玉腰からのバックホームが悪送球となって4-12、一走尾茂田も三塁に走り遠藤の遊ゴロの間に尾茂田が還って5-12とする。この辺りのセネタースの走塁を見てみると苅田久徳監督から「手を抜くな!」という檄が飛んでいるようである。

 セネタースは3回から四番手として塩田猪年男が登板して7回まで無失点に抑える。

 セネタースは8回、この回先頭の塩田が二遊間に内野安打、村沢秀雄の三ゴロでランナーが入れ替わり、磯野政次の右前打で一死一二塁、苅田が四球を選んで一死満塁、家村相太郎の二ゴロの間に塩田が還って6-12とする。

 ライオンは8回裏、鬼頭、水谷が連続四球、中谷の中前打で無死満塁、玉腰の左前タイムリーで13-6、ここで菊谷が左中間に走者一掃の三塁打を放って16-6として止めを刺す。

 菊矢吉男も乱調で8安打9四球4三振であったが完投で7勝目をあげる。

 セネタース守備陣が無失策であったことからライオンは16打点で16得点。ライオン打線は福士勇を除く先発全員打点を記録した。セネタース投手陣は16失点で自責点は16点であった。セネタースが試合を投げなかったおかげで3回以降だけを見れば4対4の好試合であった。8回裏のライオンの攻撃はセネタースの敢闘精神に対する返礼であろう。

 尾茂田叶が2打点をあげて今季21打点となり中島治康の25打点に迫ってきた。打率部門の佐藤武夫が落ちてきたので、中島の三冠を阻止するとしたら打点部門の尾茂田しかいない。


 1イニング二桁得点はプロ野球史上初の可能性があります。昭和12年以降の試合は目検ではありますが全て調べてみました。昭和11年にあったかどうかは知りません。1イニング9得点は2度記録されています。昭和12年春、5月5日(水)西宮、名古屋vs阪急3回戦、阪急7回裏に9得点。昭和12年秋、9月2日(木)西宮、イーグルスvsセネタース2回戦、イーグルス3回表に9得点。
 8得点は12年春にイーグルスが1度、12年秋にタイガースが2度、ジャイアンツが2度、金鯱が1度、13年春にライオンが1度、セネタースが1度、13年秋にタイガースが2度記録しています(いずれも目検によるもので正確ではない可能性がありますのでご注意ください。)。





          *ライオン2回の攻撃、11得点をあげた場面







2011年5月20日金曜日

13年秋 名古屋vsタイガース 2回戦

10月30日 (日) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 1 0 0 0 0 0 1 0 2 名古屋      14勝10敗3分 0.583 松尾幸造 田中実
0 0 0 2 0 1 0 3 X 6 タイガース 15勝11敗       0.577 西村幸生


勝利投手 西村幸生 6勝2敗
敗戦投手 田中実     0勝2敗


二塁打 (タ)門前


西村幸生、完投で6勝目


 タイガースは前節1試合しかなく10月23日以来のゲーム、しばらく景浦将が欠場することとなり四番には山口政信が入る。松木謙治郎著「タイガースのおいたち」には「四番打者景浦が健康を害した・・・」とあるが、額面通りに受け取るべきかは疑問。前の試合で書いたとおり景浦は松山商業の先輩森茂雄を慕ってタイガースに入ったが森が理不尽な解雇に合いイーグルスに移ると景浦もイーグルス移籍を希望したがかなわず、石本秀一監督には反目することとなる。以前にもレフトに飛んできた打球を追わなかったシーンを実況したことがありますが、今回の欠場はサボタージュの可能性があるのではないか。流石に松木もそこまでは書かなかった可能性がある。歴史は権力者の都合のいいように伝えられることが多く、野球史に関しては巨人の都合に合わせて書かれているものが大半を占めていますので注意を要します。松木は景浦の問題にも触れているので「タイガースのおいたち」は資料的価値が高いのですが、この部分だけはどうでしょうか。


 名古屋は2回、この回先頭の大沢清がピッチャー強襲ヒットで出塁、倉本信護の捕前送りバントをキャチャー門前真佐人が二塁に送球するがセーフ、犠打野選となって無死一二塁、村瀬一三が四球を選んで無死満塁、三浦敏一の中犠飛で1点を先制する。しかし松尾幸造の投ゴロは西村-皆川-松木と渡ってダブルプレーとなりスリーアウトチェンジ。

 タイガースは4回、この回先頭の奈良友夫がセンター右にヒット、藤村富美男の遊ゴロでランナーが入れ替わり、四番山口政信が中前打、門前が左翼線にタイムリー二塁打を放って二者還り2-1と逆転に成功する。

 タイガースは6回、この回先頭の松木謙治郎が右前打で出塁、一死後藤村四球、山口の投ゴロで藤村が二封されて二死一三塁、ここでダブルスチールを成功させて3-1とする。

 名古屋は8回、一死後桝嘉一が右翼線にヒット、白木一二の右前打で桝は三塁に走り一死一三塁、白木の代走に石田政良を起用する。大沢の一ゴロは3-6-3と渡るが二塁はセーフで一塁はアウト、この間に桝が還って2-3と追い上げる。代走に石田を起用したことが効を奏す。

 タイガースは8回裏、この回先頭の奈良友夫が左翼線にヒット、藤村、山口の連続内野安打で無死満塁、門前が中前に2点タイムリーを放って5-2、伊賀上良平が左前タイムリーで続き6-2と突き放す。

 ようやく調子が上がってきた西村幸生は最終回を三者凡退で抑えて7安打3四球5三振の完投で今季6勝目。タイガースは景浦将が不在ながら四番山口政信が4打数3安打、門前真佐人が2打数2安打4打点の活躍を見せる。








13年秋 ジャイアンツvsイーグルス 4回戦

10月29日 (土) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 0 0 0 3 0 0 0 4 ジャイアンツ 21勝6敗1分   スタルヒン
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 イーグルス   10勝13敗3分 亀田忠 古川正男


勝利投手 スタルヒン 13勝2敗
敗戦投手 亀田忠        3勝8敗


スタルヒン、今季六度目の完封


 ジャイアンツは初回、一死後水原茂が左前打で出塁、千葉茂右前打で一死一二塁、中島治康はストレートの四球を選んで無死満塁、中島は少々のボールであれば打っていくのでここは勝負を避けた可能性が高い。伊藤健太郎の三ゴロで水原は本封されて二死満塁、川上哲治がワンスリーから四球を選んで1点を先制する。続く白石敏男の記録は「1.6-3」でスリーアウトとなっているのでピッチャー亀田忠を強襲した当りをショート山田潔がバックアップして一塁に刺したものであろう。因みに山田潔は今季終了時点で遊撃手としては守備率第1位を記録することになります。

 ジャイアンツは6回、この回先頭の伊藤が四球で出塁、川上の投ゴロを併殺を焦った亀田が二塁に悪送球して無死一二塁、白石の送りバントは亀田からサード漆原進に送られて伊藤が三封、しかし吉原正喜の三ゴロを漆原が二塁に悪送球する間に川上が還って2-0としてなお一死二三塁、スタルヒンの中前タイムリーで3-0、トップに返り三原脩の三ゴロの間に三走吉原も還って4-0とする。

 イーグルスは1回、2回と三者凡退、3回一死から山田が遊失に生きるが漆原、中根之は連続遊飛に倒れる。4回二死から亀田が右前に初ヒットを放つが中河美芳は二飛に倒れてチェンジ。5回は三者凡退、6回は先頭の漆原が三塁への内野安打で出塁するが後続無く漆原は一塁に釘付け。7回、8回と三者凡退でここまで2安打で二塁を踏むもの無し。

 イーグルスは9回、先頭の中根がストレートの四球を選んで出塁、太田健一の投ゴロで中根が二封されてランナーが入れ替わり、ハリスの遊ゴロで太田が二封されて又もランナーが入れ替わり二死一塁。ここで亀田が右翼線にヒットを放ちハリスが二塁を回りかけるがこれを見たライト中島から二塁ベースカバーのショート白石に送球されてハリスは戻りきれずタッチアウトとなって試合終了のサイレンが高々と鳴り響く。

 最終回の亀田の当りにはヒットが記録されているので、ハリスは二塁ベースタッチ後オーバーランしたところに中島からの送球がきてタッチアウトとなったものでライトゴロにはならない。したがってハリスは二塁を踏んだことになるが、スタルヒンの3安打完封は実質二塁を踏ましめなかったものであり、翌日の読売新聞も「走者を二塁に生かすこと絶無」という書きぶりとなっている。スタルヒンは3安打1四球4三振、97球で今季六度目の完封を飾った。ここまで8試合連続ヒッとを継続中の中島治康は3打数無安打、打率は119打数45安打で3割7分8厘に落とした。

 イーグルスは7回から古川正男がリリーフのマウンドに上がり3回を1安打無四球1三振無失点に抑えた。イーグルス投手陣は9月23日のセネタース2回戦で中河美芳が完投勝ちして以降、10月26日の金鯱3回戦で望月潤一が完投負けするまで、16試合連続して先発投手が完投を続けてきた。この間7勝8敗1分。中河美芳が4勝2敗1分、亀田忠が2勝5敗、望月潤一が1勝1敗である。亀田は連投が2回と中一日が1回、中河は連投は無く中一日が2回である。


 以前にも書いたことがあるかもしれませんが、当ブログではこれは河野安通志の考え方が反映されているのではないかと推測しています。早稲田の河野安通志は慶應の桜井弥一郎と共に全盛期の旧制一高を破り、一高時代から早慶時代へと大きく時代の舵を切りました。現在まで続く早慶戦は、河野と桜井の投げ合いを起源としています。早稲田大学の第1回アメリカ遠征で投げまくり、「アイアンコーノ」と呼ばれた鉄腕を誇ります。日本初のプロ野球チーム日本運動協会を立ち上げた際も山本栄一郎(現=昭和13年当時・ジャイアンツ)が投げまくり、関東大震災後に引き継がれた宝塚運動協会でも大貫賢(現=昭和13年当時・イーグルス)が投げまくることとなります。昭和11年の名古屋を一年で飛び出し、理想のプロ野球チームとしてイーグルスを立ち上げ、昭和12年は畑福俊英が投げまくり、今年は16戦連続完投の記録を作りました。エースは一度マウンドに上がったら試合終了までマウンドを死守するものとの信念があったのではないでしょうか。

 河野安通志は監督ではありませんが、早稲田の後輩となる森茂雄監督を通じて河野の考え方がチームに浸透していたのではないでしょうか。河野安通志と市岡忠男は終生不仲であった訳ですが、この原因は市岡が早稲田の監督時代、先輩の河野が現場に介入してきたことを嫌ったことに起因していると言われています。純粋な理想主義者にしてリベラリストの河野と厳格な官僚主義の市岡は水と油であったと言われています。森茂雄は景浦将などが慕っていた人格者であり、河野の考え方にも同調していたのではないでしょうか。河野が名古屋からイーグルスに移ると名古屋からバッキー・ハリス、サム高橋吉雄、中根之、野村実などイーグルスの主力を形成することとなるメンバーが河野と行動を共にしました。タイガースを理不尽な形で解雇されてイーグルス監督に就任した森茂雄にも小島利男、佐藤武夫などが同調します。松山商業の後輩となる景浦将もイーグルスに移りたかった訳ですが、流石にタイガースもこれだけは引き留めました。景浦のイーグルス移籍が実現していたら景浦の本領が発揮されてイーグルスが戦前最強チームとなっていたことは間違いないでしょう。











2011年5月19日木曜日

13年秋 阪急vs金鯱 4回戦

10月29日 (土) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 1 0 0 1 1 2 0 0 5 阪急 17勝7敗2分 0.708 宮武三郎
0 0 1 0 0 0 0 0 3 4 金鯱   8勝23敗     0.258 中山正嘉 常川助三郎


勝利投手 宮武三郎 5勝1敗
敗戦投手 中山正嘉 4勝11敗


二塁打 (阪)山田


金鯱四連勝ならず


 阪急は2回、この回先頭の山下実がファウル3つ、ボール後の5球目を左前打、山下好一の二ゴロをセカンド五味芳夫が失する間に山下実は三塁に進み、五味からサード岡野八郎への送球の間に山下好一も二塁に進み無死二三塁、二死後大原敏夫四球で満塁、宮武三郎が押出し四球を選んで1点を先制する。

 金鯱は3回、この回先頭の高久保豊三が四球で出塁、長島進が三前に送りバントを決めて五味の遊ゴロの間に高久保は三進して二死三塁、トップに返り佐々木常助が四球を選んで二死一三塁、ここで鮮やかにダブルスチールを決めて1-1の同点に追い付く。

 阪急は5回、一死後西村正夫が左前打を放ち出塁、すかさず二盗を決めキャッチャー長島の悪送球で三進、フランク山田伝の一ゴロの間に快足を飛ばしてホームイン、2-1とする。更に6回、山下実、山下好一は二者連続三振、上田藤夫の三ゴロをサード岡野が一塁に悪送球、宇野錦次は二塁への内野安打で二死一二塁、大原が右前にタイムリーを放って3-1とする。

 阪急は7回、この回先頭の山田が中前打で出塁、黒田健吾の遊ゴロをショート瀬井清がエラー、山下実の中前打で無死満塁、山下好一の一塁内野安打で山田が還って4-1、上田藤夫の三ゴロで黒田は本封、宇野の三ゴロの間に山下実が還って5-1と突き放す。

 金鯱は9回裏、この回先頭の岡野が一塁への内野安打で出塁、瀬井は見逃し三振、ワイルドピッチで岡野は二進、二死後中山は四球、武笠茂男が右前にタイムリーを放って2-5、高久保に代わる代打小林茂太死球で二死満塁、長島が左翼線に2点タイムリーを放って4-5、更に長島に代わって代走に岡田源三郎監督が登場、岡田監督の登場にびびったか宮武がボークを犯して二死二三塁、五味も四球を選んで再度二死満塁、しかし佐々木は右飛に倒れて辛うじて阪急が逃げ切る。

 宮武三郎は3安打7四球1死球2三振の完投で5勝目をあげる。三連勝後の金鯱は惜しくも四連勝を逃したが最終回の粘りはお見事。















2011年5月18日水曜日

13年秋 10月 月間MVP

 今月はスタルヒンと中島治康が突出した数字をあげたことから選出作業は極めて楽であった。


月間MVP

投手部門
 
 ジャイアンツ スタルヒン 2

 スタルヒンは今月9試合に登板して6勝2敗1セーブ。防御率1.01、WHIP0.87、奪三振率6.08という成績で文句なしの2カ月連続選出となった。 

 松尾幸造も10試合に登板して6勝1敗であったが、防御率2.22、WHIP1.30、奪三振率4.75でスタルヒンと比較すると見劣りは否めない。



打撃部門

 ジャイアンツ 中島治康 1

 中島治康は今月14試合に出場して60打数26安打15得点16打点。5四球、二塁打4本、本塁打6本。打率4割3分3厘、出塁率4割7分7厘、長打率8割。OPSは1.277と驚異的な数字を叩き出して三冠王に躍り出た。

 今季から一試合当たりの使用球数制限が課せられ、2011年とも比較にならないほどの飛ばないボールの時代においての数字であることに留意されたい。




2011年5月16日月曜日

13年秋 第8節 週間MVP

 今節は波乱の一週間となった。セネタースが3勝0敗、タイガースが1勝0敗、金鯱が3勝1敗、名古屋が3勝1敗、ジャイアンツが2勝2敗、阪急が1勝1敗、イーグルスが1勝3敗、ライオンが1勝4敗、南海が0勝3敗であった。



週間MVP

投手部門

 名古屋 松尾幸造 1

 25日のジャイアンツ4回戦に完投勝利、28日のライオン4回戦は完封勝利、今節3試合連続完投で3勝0敗。

 セネタース 浅岡三郎 1

 25日のイーグルス4回戦では3安打完投、28日の南海4回戦では1安打完封。打っても24日のライオン4回戦で代打サヨナラスリーランホームランを放つ。




打撃部門

 ジャイアンツ 中島治康 2

 今節18打数11安打2得点4打点1本塁打。三冠王に躍り出る。




殊勲賞 

 ライオン 菊矢吉男 1

 26日のジャイアンツ3回戦で2安打完封勝利。



敢闘賞

 金鯱 中山正嘉 1

 今節3勝0敗うち2完投勝利。金鯱最下位脱出の立役者となる。

 金鯱 小林茂太 1

 岡田源三郎監督の「全員盗塁」」の指示に激走で応える。



技能賞

 名古屋 戒能朶一 1

 今節14打数5安打2得点3打点6四球。23日のライオン3回戦では4安打を放ち4本目はサヨナラ打、28日のライオン4回戦では四打席連続四球。




 








13年秋 名古屋vsライオン 4回戦

10月28日 (金) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 3 0 0 0 0 3 名古屋   14勝9敗3分 0.609 松尾幸造
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 ライオン 13勝15敗     0.464 大友一明 菊矢吉男


勝利投手 松尾幸造 8勝4敗
敗戦投手 大友一明 5勝4敗


二塁打 (ラ)菊谷


松尾幸造、完封で8勝目


 名古屋は初回、先頭の戒能朶一が四球を選んで出塁、鈴木秀雄が左前打打で続くが戒能が三塁を欲張りレフト鬼頭数雄からの送球にタッチアウト。2回、先頭の大沢清が四球で歩くが後続無し。3回、一死後戒能が二打席連続四球から盗塁、鈴木も四球を選ぶが後続無し。4回も先頭の大沢が四球で歩くが倉本信護の遊ゴロで6-4-3のゲッツー。

 名古屋は5回、この回先頭の松尾幸造が左前打で出塁、トップに返り戒能が三打席連続四球、鈴木も四球を選んで無死満塁、桝嘉一が中前にタイムリーを放って1点を先制、白木一二の右犠飛で2-0、大沢が中前にタイムリーを放って3-0とする。

 ライオンは6回から先発の大友一明に代えて菊矢吉男をリリーフに送り、菊谷は4イニングを1安打1四球3三振の好投。菊谷の投入が中途半端な形となったが大友も10月20日以来登板が無くここは致し方のないところか。

 25日にジャイアンツを破った松尾幸造はこの日も快投を見せて4安打7四球1死球6三振の完封で8勝目をあげ、ハーラー単独2位に躍り出る。

 名古屋は5安打で3得点、ライオンは14残塁で無得点。名古屋が5回に見せたクリーンナップトリオによる3得点が全てであった。


 26日の第二試合から菊矢吉男、浅岡三郎、松尾幸造と三試合連続完封となった。それぞれ甲乙付け難い好投を見せており、今節の週間MVPの選考は難航しそうである。









2011年5月15日日曜日

13年秋 セネタースvs南海 4回戦

10月28日 (金) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 1 0 0 0 0 0 0 0 2 セネタース 14勝14敗1分 0.500 浅岡三郎
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 南海       7勝20敗2分 0.259 政野岩夫 鈴木芳太郎


勝利投手 浅岡三郎 4勝2敗
敗戦投手 政野岩夫 3勝5敗


二塁打 (セ)尾茂田


浅岡三郎、1安打完封


 セネタースは初回、一死後今岡謙次郎が中前打で出塁、遠藤忠二郎右前打で一死一二塁、尾茂田叶が左翼線に二塁打を放って1点を先制、遠藤も三塁ベースを蹴ってホームを突くがレフト高野百介から7-6-2と渡ってタッチアウト。

 セネタースは2回、この回先頭の森口次郎が中前打で出塁して二盗に成功、青木幸造、磯野政次は連続三振に倒れるがトップに返り苅田久徳が左前にタイムリーを放って2-0とする。

 セネタースは3回、この回先頭の遠藤が中前打で出塁、尾茂田が右前打で続き無死一二塁、南海はここで先発の政野岩夫をあきらめ二番手に鈴木芳太郎を投入する。北浦三男の投ゴロで二走遠藤が三封、浅岡三郎が左前打放って二走尾茂田がホームを突くが又もレフト高野からの返球にタッチアウト、森口も左飛に倒れてスリーアウトチェンジ。

 南海二番手の鈴木は4回から8回まで無安打1死球無失点の好投、9回、浅岡に左前打を許すが青木を5-4-3の併殺に仕留めて無失点で投球を終える。

 浅岡三郎は3回二死から九番海蔵寺弘司に中前打を打たれたのみで5回まで1安打無四球。6回、上田良夫に四球を与え、海蔵寺の投ゴロでランナーが入れ替わり海蔵寺に二盗を許すが二塁牽制で刺してスリーアウトチェンジ。7回、8回も三者凡退に抑える。

 南海は9回、この回先頭の海蔵寺が四球を選んで出塁、トップに返り小林悟楼も四球で無死一二塁、西端利郎がセオリー通り三前に送りバントを決めて一死二三塁とこの日初めてのチャンスを迎える。しかし高野に代わる代打宮口美吉は三ゴロ、四番鈴木は一邪飛に倒れて試合終了を告げるサイレンが高々と鳴り響く。

 浅岡三郎は1安打4四球1三振の完投で今季4勝目を飾る。鈴木芳太郎も7回を2安打1四球3三振無失点の好投を見せる。


 南海はこれで今季7勝20敗2分、勝率2割5分9厘となってゲーム差では半ゲーム上回るものの勝率で金鯱を下回り最下位に転落した。





          *浅岡三郎の1安打完封を伝えるスコアブック






87打数28安打 ②

 15日のソフトバンク戦では3打数2安打3打点1本塁打、チームの全得点を叩き出してようやく明日は見出しを飾りそうです。中田と違って余程活躍しないと見出しにはなりません。スポーツ紙で取り上げられたのは4月26日付けスポニチ5面の「ウィークリーデータ」くらいでしょうか。


 当ブログとしてはファーストを守っているのが不満。理想は中島をサード、中村をファーストに回して浅村栄斗をショートで使うパターンですが、せめて中村をファーストに追いやってサードのポジションを奪い取るくらいの気合いを見せんかい! ホームランは出ているもののスランプにあえぐ中村の気分転換にもいいのではないでしょうか。


 と言うことで、このシリーズが続くもぽしゃるも浅村栄斗選手の活躍次第。繰り返しますが、次回のWBCは三番浅村、七番中田で三連覇です。

13年秋 ライオンvsジャイアンツ 3回戦

10月26日 (水) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 1 0 1 0 2 4 ライオン     13勝14敗    0.481 菊矢吉男
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 ジャイアンツ 20勝6敗1分 0.769 スタルヒン


勝利投手 菊矢吉男     6勝7敗
敗戦投手 スタルヒン 12勝2敗


菊矢吉男、一世一代の快投


 三試合連続サヨナラ負けのライオンはエース菊矢吉男が先発、前日名古屋・松尾幸造にしてやられたジャイアンツは満を持してスタルヒン先発で必勝態勢。

 立ち上がりからボールが先行するスタルヒンは3回までに5四球を与え、4回で投球数は既に68球を数えた。

 ライオンは5回、一死後酒沢政夫が中前打で出塁、トップに返り坪内道則の遊ゴロは6-4-3と渡るがセカンド三原脩からの一塁送球が悪送球となって坪内は二塁に進む。続く水谷則一の遊ゴロを今度はショート白石敏男が一塁に悪送球する間に坪内が還って1点を先制する。

 ライオンは7回、この回先頭の山本尚敏がショートへの内野安打で出塁、福士勇の投ゴロで山本は二進、酒沢が右前にタイムリーを放って2-0とする。


 菊矢吉男は6回までジャイアンツ打線を2安打2四球4三振無得点に抑える。

 ジャイアンツは7回、この回先頭の伊藤健太郎がストレートの四球を選んで出塁、続く川上哲治もワンスリーから四球を選んで無死一二塁、続く三原のカウントもノースリー、見逃しストライクでワンスリー、ここで三原がバントを失敗してツースリーから右飛に倒れて一死一二塁、吉原正喜の三ゴロで川上が二封されて二死一三塁、スタルヒンのカウントツーストライクナッシングとなったところでダブルスチールを敢行するがキャッチャー福士からの送球をカットしたセカンド山本がホームに返球して伊藤はタッチアウト、重盗失敗でスリーアウトチェンジ。

 ライオンは9回、この回先頭の山本が四球で出塁、福士の右前打で無死一三塁、酒沢は三振に倒れるが坪内が右前にタイムリーを放って3-0、水谷も右前タイムリーで続いて4-0として勝負を決める。

 菊矢吉男は8回、9回を抑え切り、結局2安打5四球5三振、106球の快投を見せて完封で6勝目をあげる。コントロールに苦しんだスタルヒンは8安打7四球5三振、153球の投球であった。


 菊矢吉男は大阪府立八尾中学出身、1年先輩に現在兵役のため戦列を離れている金鯱の黒澤俊夫がいる。昭和11年にタイガースに入ってからは打撃投手として、打倒澤村の打撃練習でプレート1メートル前から剛球を投げ込んで猛虎打線の基礎造りに貢献した。ライオン移籍後芽が出て本日一世一代のピッチングを見せる。戦後は大阪府立富田林高校の野球部監督として同校を初の甲子園出場に導くこととなる。



 

          *菊矢吉男の快投を伝えるスコアブック








13年秋 金鯱vsイーグルス 3回戦

10月26日 (水) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
4 0 0 0 1 0 2 0 0 7 金鯱        8勝22敗      0.267 中山正嘉
1 0 0 1 0 0 0 0 0 2 イーグルス 10勝12敗3分 0.455 望月潤一


勝利投手 中山正嘉 4勝10敗
敗戦投手 望月潤一 2勝1敗


二塁打 (金)古谷 (イ)望月
三塁打 (イ)ハリス


金鯱三連勝


 二連勝の金鯱は中山正嘉が先発、イーグルスは9月24日の同カード1回戦以来約1カ月ぶりの登板となる望月潤一が先発。前回も中山vs望月の対決となって望月が投げ勝っている。

 金鯱は初回、先頭の佐々木常助がツーツーからファウルで2球粘った末二塁への飛球、これをセカンド野村実が落球、岡野八郎がワンボールからの2球目をライト線に運び無死一塁、瀬井清が初球を中前にタイムリーして1点を先制する。続く古谷倉之助はワンボールからの2球目をセンター右奥に二塁打、二者が還って3-0、古谷はワイルドピッチで三塁に進み武笠茂男の中犠飛で4-0とする。

 イーグルスは1回裏、先頭の寺内一隆がツースリーから四球を選んで出塁、パスボールで二進、中根之の中飛で三進、バッキー・ハリスが左前にタイムリーを放って1-4とする。

 イーグルスは4回、この回先頭のハリスが左前打で出塁、太田健一の投ゴロでランナーが入れ替わり、中河美芳の二ゴロの間に太田は二進、望月潤一が右中間に二塁打を放って2-4と追い上げる。

 金鯱は5回、この回先頭の長島進が左翼線にヒット、トップに返り佐々木が投前に送りバントを決めて一死二塁、岡野の投ゴロを望月がエラーして一死一三塁、瀬井の右犠飛で5-2とする。更に7回、この回先頭の高久保豊三の三ゴロをサード漆原進が一塁に悪送球して高久保は二塁に進む。長島は三ゴロに倒れるが佐々木が三前にバントヒットを決めて一死一三塁、岡野が右前にタイムリーを放って6-2、瀬井がツースリーから四球を選んで一死満塁、古谷の三ゴロの間に佐々木が還って7-2と突き放す。

 金鯱はこれで三連勝、勝利投手は全て中山である。中山正嘉は7安打2四球7三振、118球の完投で今季4勝目をあげて前回の雪辱を果たす。望月潤一は7安打2四球6三振、122球の完投であった。


 両チーム7安打ずつであったが得点差は5点。金鯱は九番長島の1安打から佐々木2安打、岡野2安打、瀬井1安打、古谷1安打と九番から四番までに7安打が集中している。この結果二番岡野が1打点、三番瀬井が2打点、四番古谷が3打点となった。一方、イーグルスは二番野村が1安打、四番ハリスが3安打、七番望月が2安打、九番漆原が1安打と打線のつながりに欠けたことが得点が伸びない要因となった。三番中根、五番太田、六番中河が無安打で3安打の四番ハリスが孤立してしまった。

 最下位の金鯱は八位南海に1ゲーム差と迫ってきた。勝星では一つ上回り、勝率は2厘差。28日のセネタース戦で南海が敗れるとゲーム差では南海が上になるが勝率で金鯱が上回ることとなる。





     *中山正嘉の三連勝を伝えるスコアブック









2011年5月14日土曜日

13年秋 名古屋vsジャイアンツ 4回戦

10月25日 (火) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 3 0 1 1 0 0 5 名古屋    13勝9敗3分 0.591 松尾幸造
0 0 0 0 0 0 0 4 0 4 ジャイアンツ 20勝5敗1分 0.800 水原茂 前川八郎


勝利投手 松尾幸造 7勝4敗
敗戦投手 水原茂   6勝2敗


二塁打 (ジ)中島、吉原
本塁打 (名)倉本2号、白木 1号


松尾幸造、ジャイアンツを降す


 ジャイアンツは3回、この回先頭の吉原正喜がストレートの四球で出塁、しかしキャッチャー三浦敏一からの牽制球にタッチアウト、ここは三浦お得意のノールックスローが出たか。続く三原脩もストレートの四球で出塁して二盗を敢行、ここも三浦からの送球に刺されて二死無走者、白石敏男はツースリーから見逃し三振に倒れる。名古屋先発の松尾幸造はここまで3三振3四球、崩れかかったところを三浦の肩で救われた。

 名古屋は4回、この回先頭の大沢清が四球で出塁、倉本信護のバントは一塁正面、しかしこれをファースト川上哲治が二塁に悪送球して無死一二塁、村瀬一三がツースリーから四球を選んで無死満塁、三浦がストレートの押出し四球を選んで1点を先制、松尾の一ゴロの間に倉本が還って2-0、トップに返り戒能朶一の遊ゴロの間に村瀬が還って3-0、名古屋はこの回ノーヒットで3点をあげる。

 名古屋は6回、この回先頭の倉本信護がレフトスタンドにホームランを放って4-0、ジャイアンツは水原をサードに回しサード千葉茂がセンターに入りセンター平山菊二に代わって二番手として前川八郎がマウンドに上がり後続を抑える。名古屋は5回、二死から白木一二がライトスタンドにホームランを放って5-0と突き放す。

 ジャイアンツは8回、この回先頭の千葉が四球で出塁、中島治康が左中間深く二塁打を放って千葉が還って1-5、伊藤次郎の左前打で無死一三塁、この日二打席連続三振の川上に代わってファーストに入っている内海五十雄の二ゴロで伊藤は二封、中島は動かず一死一三塁、水原が左翼線にタイムリーを放って2-5、前川は浅い右飛に倒れて二死一三塁、ここで吉原が左中間に二塁打を放って二者還り4-5、トップに返り三原は三ゴロに倒れてスリーアウトチェンジ。

 ジャイアンツは9回二死から中島がこの日4安打目となる右前打を放つが伊藤が二飛に倒れてゲームセット。

 松尾幸造は11安打を許すが4四球12三振の完投で今季7勝目をあげて金子裕と並んでハーラーダービー第二位となる。12三振は7回までにあげたものであり、148球の熱投であった。
 翌日の読売新聞・市岡忠男の論評は「7回までの巨人軍が三振12を取られているに見てもその投球が如何に快刀乱麻ぶりを発揮したか察せられよう。・・・松尾懸命の投球といい最後まで松尾を見限らなかったベンチの策といい難局を切り抜け得る自身と決意の程が窺われた。」と伝えている。

 この日第二の殊勲は3回、牽制と盗塁で2補殺を記録した三浦敏一のスローイングであった。この回2四球の松尾はこれがなかったらここで崩れていたであろう。

 中島治康は一昨日に続いて5打数4安打を記録、これで6試合連続マルチヒットとなりこの間28打数20安打で打率7割1分4厘。今季通算112打数44安打、打率は3割9分3厘となって4割が視野に入ってきた。





*ジャイアンツ3回の攻撃、吉原正喜が四球で出塁するが三浦敏一の牽制にタッチアウト。







*続く三原脩も四球で出塁して二盗を試みるも三浦に刺されてタッチアウト。





     *松尾幸造の148球の熱投を伝えるスコアブック


13年秋 セネタースvsイーグルス 4回戦

10月25日 (火) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 0 3 0 0 0 0 0 4 セネタース 13勝14敗1分 0.481 浅岡三郎
0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 イーグルス 10勝11敗3分 0.476 亀田忠


勝利投手 浅岡三郎 3勝2敗
敗戦投手 亀田忠     3勝7敗


三塁打 (セ)今岡
本塁打 (セ)苅田 3号


浅岡三郎巧投、凡飛の山を築く


 セネタースは前日代打サヨナラスリーランホームランを放った浅岡三郎が10月5日以来の先発。イーグルスは相も変わらず亀田忠が先発。

 セネタースは初回、苅田久徳がワンボールからの2球目をレフトスタンドに第3号先頭打者ホームラン、1点を先制する。

 セネタースは4回、この回先頭の北浦三男がツースリーから四球を選んで出塁、浅岡の送りバントは三邪飛となって失敗、今岡謙次郎が左前打を放って一死一二塁、青木幸造の遊ゴロをショート山田潔がエラーする間に二走北浦が還って2-0、磯野政次の三ゴロで二者進塁して二死二三塁、亀田忠のワイルドピッチで今岡が還って3-0、苅田の左前タイムリーで4-0とする。

 イーグルスは5回、この回先頭のバッキー・ハリスが左前打で出塁、亀田左前打、中河美芳四球で無死満塁、しかし太田健一の二ゴロ併殺の間に1点を返すに止まる。

 浅岡三郎は9回に2四球を与えるが後続を抑えて結局、3安打3四球3三振の完投で今季3勝目をあげる。翌日の読売新聞・市岡忠男の論評は浅岡の投球を「浅岡は逸るイ軍打者を緩曲球をもって焦らした上巧みに直球を投じて飛球に討ち取る寸分の隙もない投球を示した。」と伝えている。イーグルスの27のアウトのうち、フライアウトは15を数えた。




     *浅岡三郎の3安打ピッチングを伝えるスコアブック













13年秋 ライオンvs金鯱 4回戦

10月25日 (火) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8  9  計
0 2 0 0 0 0 0 0  0  2 ライオン 12勝14敗 0.462 近藤久
0 0 1 0 0 1 0 0 1X 3 金鯱         7勝22敗 0.241 古谷倉之助 中山正嘉


勝利投手 中山正嘉 3勝10敗
敗戦投手 近藤久     2勝4敗


二塁打 (金)佐々木、五味
本塁打 (ラ)山本 2号


金鯱、6連敗後2連勝


 ライオンは2回、一死後玉腰年男の二ゴロをセカンド五味芳夫がエラー、山本尚敏が左翼スタンドに第2号ツーランを叩き込んで2点を先制する。

 金鯱は3回、一死後佐々木常助が中前打で出塁、岡野八郎はツーツーからの5球目を右前に運び一死一二塁、佐々木は盗塁を試みずエンドランンも掛かっていないようなので岡田源三郎監督からの「全員盗塁」の指示は本日は出ていない模様。瀬井清の中前打で一死満塁、小林茂太が右前にタイムリーを放って1-2とする。古谷倉之助は投ゴロ、武笠茂男は遊飛に倒れてこの回は1点止まり。

 金鯱は6回、この回先頭の古谷が中前打で出塁してワイルドピッチで二進、長島進の左前打で一死一三塁、浅井太郎に代わる代打中山正嘉の中犠飛で2-2の同点、センター坪内道則からのバックホームをカットしたピッチャー近藤久は一塁に送球して一走長島が刺されてスリーアウトチェンジ。

 古谷倉之助は8回まで2回に山本に打たれた本塁打1本に抑えて3回~8回は無安打ピッチングを続ける。

 ライオンは9回、この回先頭の中谷順次が左翼線にヒットを放ち菊矢吉男が送って一死二塁、玉腰が右前打で続いて一死一三塁、ここで好投を続けてきた古谷がファーストに回り、代打で出た後ファーストに入っていた中山正嘉がリリーフに登場、玉腰が二盗を試みるがキャッチャー長島が刺して二死三塁、山本は7球粘るが三ゴロに倒れてスリーアウトチェンジ。

 金鯱は9回裏、一死後五味が左中間に二塁打、トップに返り佐々木がストレートの四球を選んで一死一二塁、岡野が右前打を放って一死満塁、瀬井がツーボールナッシングからの3球目をライトに打ち上げ三走五味がホームに還ってサヨナラ勝ちをおさめる。

 勝利投手は7球投げただけの中山正嘉に付いたが古谷倉之助は8回3分の1を3安打4四球4三振の好投を見せる。2回に手痛いエラーを犯した五味芳夫が最終回に二塁打で出塁してサヨナラのホームを踏んだ。

 岡田源三郎監督からの「全員盗塁」の指示は出ていなかったようであるが本日の金鯱は消極的な走塁が目立ち10安打で3得点、10残塁を記録した。翌日の読売新聞・細見又郎記者の論評も「走塁にもっと活発さがあったらかくも苦戦しなかったろう」と手厳しい。