2010年11月3日水曜日

12年秋 阪急vsタイガース 5回戦

11月7日 (日) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 0 1 0 0 0 2 0 4  阪急          14勝22敗2分 0.389  中田武夫
2 1 0 0 0 5 0 0 X 8 タイガース  32勝7敗         0.821  西村幸生


勝利投手 西村幸生 13勝3敗
敗戦投手 中田武夫  2勝6敗


二塁打 (阪)黒田 (タ)景浦2


景浦将、タイムリー二塁打二発


 阪急は初回、先頭の黒田健吾が左中間に二塁打、宇野錦次の一ゴロで黒田は三進、山下実の遊飛で黒田がタッチアップからホームに還り1点を先制する。昭和12年当時は犠牲フライは記録されていませんが、当ブログでは現行ルールに照らして犠飛と判断される場合は犠牲フライとしてお伝えしております(2010年3月14日付ブログ「解読」参照)。本件については、スコアブックには山下実のショートフェアフライにより黒田が三塁から生還と記載されており、タイガースの野手にはエラーは記録されておらず、山下実に打点が記録されています。考えられるケースとしては①三塁後方に飛んだ飛球をショート岡田宗芳が向こうむきで捕球した、②ショート後方の飛球を岡田がダイビングキャッチした、のを見て黒田がタッチアップからホームを突いて生還したケースなどが考えられます。いずれにしろショート岡田ならではのファインプレー級の捕球であり、捕った後体勢が崩れているのを見て黒田がスタートを切ったものと考えられます。このケースでは現行ルールでも山下実には犠飛は記録されないのではないかと思います(私の理解が間違っていたら申し訳ございません)。

 タイガースは1回裏、二死から山口政信が内野安打と敵失で二塁に進み、景浦将が左中間に二塁打を放って1-1の同点、藤井勇も右前にタイムリーを放ち2-1と逆転する。続く伊賀上良平も右前打して二死一三塁とするが伊賀上盗塁失敗でチェンジ。タイガースは2回、先頭のカイザー田中義雄が左前打で出塁して二盗、岡田四球、藤村富美男遊失、山口押出し四球を選んで3-1とする。

 阪急は4回、一死後キヨ野上清光、大原敏夫が連続四球、中田武夫の右飛で二走野上がタッチアップから三進、黒田のピッチャー強襲ヒットで野上が還り2-3と追い上げる。

 タイガースは6回、一死後松木謙治郎の三ゴロをサード野上がエラー、藤村左前打、山口の二ゴロをセカンド宇野が悪送球して一死満塁、ここで景浦が又も左中間を破る二塁打を放ち二者還り5-2、藤井の左前タイムリーで6-2、レフト山下好一の送球が逸れる間に景浦は三塁、藤井も二塁に進む。伊賀上の中犠飛で7-2として藤井は三塁に、田中死球で二死一三塁からダブルスチールを決めて8-2と突き放して勝負を決める。

 阪急は8回、宮武三郎中前打、ジミー堀尾文人左前打から野上の三前内野安打とサード伊賀上の悪送球で1点、黒田の今日5本目のヒットがタイムリーとなり2点を返すがここまで。

 西村幸生は11安打5四球5三振の完投で13勝目。二日間の雨でグラウンド状態が悪く、本日の第一試合ではイーグルス6失策、金鯱7失策、この試合でも阪急は5失策であったがタイガースは伊賀上の悪送球一つだけ。この辺りがタイガースの強さを物語っており、決して豪打ばかりではない。


 ついでに付言しておくと、9月12日に両翼78メートルの後楽園球場が開場して以来、81本のホームランのうち70本が後楽園で飛びだしている。この間ジャイアンツはチーム本塁打総数17本のうち後楽園で15本、阪急は同16本のうち14本を後楽園で打っているが、タイガースのチームホームラン総数は8本でありうち後楽園が7本である。ジャイアンツ及び特に阪急が狭い後楽園でのホームラン病にとりつかれているのに対して、豪打と言われるタイガースは打線のつながりで得点を重ねているケースが圧倒的に多い。一発だけでは勝つ続けることができないということを、この数字が端的に表している。昨日終了した2010年ワールドシリーズでも、勝ったのは金で強打者ばかりをかき集めてくるヤンキースでもなければ地上最強軍フィリーズでもなく、また強打でワールドシリーズに勝ちあがってきたテキサス・レンジャーズでもなく、ティム・リンスカムを中心とする投手力と接戦に強いチーム力で勝ち進んできたサンフランシスコ・ジャイアンツであることに鑑みれば、野球の本質は昭和12年においても2010年においても、何も変わっていないことが良く分かる。

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