2010年10月31日日曜日

12年秋 ジャイアンツvsライオン 6回戦

11月4日 (木) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 2 3 2 7  ジャイアンツ  25勝13敗  0.658  青柴憲一  澤村栄治
0 0 2 0 0 0 0 0 0 2  ライオン        12勝24敗  0.333  近藤久      菊矢吉男


勝利投手 澤村栄治 6勝5敗
敗戦投手 近藤久   3勝8敗


二塁打 (ジ)水原 (ラ)近藤
三塁打 (ジ)白石、青柴 (ラ)大友

クローザー澤村


 ライオンは3回、先頭の近藤久が左中間に二塁打、九番原一朗がレフトスタンドにホームランして2点を先制する。一死後大友一明も中越えに三塁打を放つが後続なし。ここで一気に青柴憲一を崩したいところであった。

 ライオン先発の近藤久は6回まで打たれたヒットは水原茂の二本と中島治康の一本だけ、秋季リーグ戦では春季程のピッチングが見られていなかったが久々の好投を見せる。一方、青柴も4回以降立ち直り6回まで無安打、ヒットを打たれたのは3回の長打三本だけであった。

 ジャイアンツは7回、ようやく近藤を捉えて、この回先頭の白石敏男がセンター右奥に三塁打、一死後青柴も左翼線に三塁打を放って1-2、更にレフト鬼頭数雄からの返球を6回の守備から藤浪光雄に代わって守備固めに入っていたサード柳澤騰市がエラーする間に青柴が一気にホームに還り2-2の同点とする。

 ジャイアンツは7回から満を持して青柴に代えて澤村栄治を投入、先頭の中野隆雄に投じたドロップは切れすぎたのか内堀保も捕球できず三振ナットアウトとなるが一塁に送球されてアウト、記録は三振。近藤には左前打を許すが原を遊ゴロに仕留めて6B-3(ショート白石が自らベースを踏んで一塁に送球)のゲッツー。

 ジャイアンツは8回、この回先頭の永澤富士雄が中前打、伊藤健太郎三振後、キャッチャー原の牽制悪送球で永澤は二進、白石の遊ゴロをファースト浅原が落球して一死一三塁、内堀が中前にタイムリーを放って3-2と勝ち越し、その際センター坪内道則のエラーがあり白石は三塁に進んでなお一三塁。ライオンは近藤に代えて菊矢吉男を投入、澤村の遊ゴロで三走白石は動かず、ショート中野は三塁ランナーを牽制してからセカンドに投げるがこれが野選となり一死満塁、トップに返り筒井修が右前に2点タイムリーを放って5-2とする。

 ジャイアンツは9回、先頭の中島右前打、永澤中前打、伊藤の遊ゴロで永澤は二封されて一死一三塁、伊藤が走って二三塁、二死後内堀が中前に2点タイムリーを放って7-2と突き放す。

 澤村は9回裏のライオンの攻撃を浅原、坪内、代打煤孫伝と三者三振に斬ってとり6勝目をマークする。澤村はクローザーとしても藤川並みの仕事をするようである。

 ジャイアンツはこの日の先発では一番センター呉波、二番セカンド前川八郎であったが、病み上がりの呉に第三打席で筒井修を代打に送っている。筒井はそのままセカンドに入り、前川が呉に代わってセカンドからセンターに入り、これが結果的に筒井のダメ押し打につながった。文才のあった前川八郎は澤村の優子さんあてラブレターの代筆をしていたことで有名であるが、不思議と澤村の投げる時に活躍している(本日は4打数無安打であるが間接的に筒井のダメ押し打に関わる。)。また、本日先発の青柴憲一は立命館大学時代快速球投手として名高く、京都商業時代の澤村の憧れの存在であったことで知られている。澤村は戦死、青柴は終戦後間もなく平壌で病死、筒井は戦争で指を飛ばされたが戦後長く審判として活躍し、1990年に亡くなられた翌年野球殿堂入り、前川八郎氏は本年3月に亡くなられています。

12年秋 セネタースvs名古屋 6回戦

11月4日 (木) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 0 1 0 0 0 0 3 0 5 セネタース   14勝21敗1分  0.400  野口明
0 0 0 1 0 0 1 0 0 2 名古屋        10勝25敗2分  0.286  繁里栄


勝利投手 野口明 10勝12敗
敗戦投手 繁里栄  0勝6敗


二塁打 (セ)中村民 (名)大沢
三塁打 (名)繁里、三浦
本塁打 (セ)尾茂田 2号、野口明 1号


野口明の独り舞台


 セネタースは初回、先頭の苅田久徳が四球で出塁、横沢七郎の右前打で無死一三塁、一死後中村民雄の左翼線二塁打で1点を先制する。更に3回、一死後尾茂田叶が左翼スタンドにホームランを叩き込んで2-0とする。

 名古屋は3回まで毎回走者を出しながら野口明に抑えられていたが4回、大沢清の左中間二塁打と繁里栄の右中間三塁打で1点返して1-2。更に7回、九番三浦敏一が左中間に三塁打、石田政良がスクイズを決めて2-2の同点に追い付く。

 セネタースは8回、この回先頭の横沢が左前打で出塁、本日ホームランを打っている尾茂田が送りバントを決めて一死二塁、四番中村民四球で一死一二塁、ここで五番を打つ野口明が左翼スタンドに決勝のスリーランホームランを叩き込んで5-2。

 本日セネタースでヒットを放ったのは苅田、横沢、尾茂田、中村民、野口明の上位打線のみで六~九番はノーヒット、上位五人で5点をとった。一方、名古屋は五番大沢清と八番繁里栄、九番三浦敏一が2安打と打線が途切れていたことが敗因となった。

 野口明は8、9回を抑えて、9安打3四球2三振の完投で10勝目。打っては決勝スリーランと独り舞台であった。

2010年10月30日土曜日

12年秋 金鯱vsタイガース 5回戦

11月2日 (火) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 金鯱           17勝18敗  0.486  塩田猪年男 松元三彦
2 4 0 0 1 0 0 0 X 7 タイガース  31勝6敗    0.838  御園生崇男 青木正一


勝利投手 御園生崇男 8勝0敗
敗戦投手 塩田猪年男 0勝1敗


二塁打 (金)瀬井 (タ)藤村、景浦
三塁打 (タ)門前 


御園生崇男、無傷の8連勝


 タイガースは初回、一死後藤村富美男が左中間に二塁打、二死後景浦将の左前タイムリーで1点を先制、二死後藤井勇が中前にタイムリーを放ち2-0とする。続く2回、一死後岡田宗芳が左翼線安打で出塁、本堂保次四球、藤村中前タイムリー、山口政信中前タイムリーで塩田猪年男をKO。二番手松元三彦から景浦が左犠飛、伊賀上良平が右前タイムリーで続いてこの回4点、6-0とする。

 タイガースは5回にも山口のタイムリーで1点追加して7-0。御園生崇男は7回まで4安打1四球1三振無失点で青木正一に交代。御園生は無傷の8連勝を飾り、タイガースはこれで9連勝。藤村、山口、景浦、伊賀上、藤井と二番~六番が全員打点で全7打点をあげる。

12年秋 イーグルスvs阪急 5回戦

11月2日 (火) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 2 0 0 4 0 0 6 イーグルス  20勝16敗1分  0.556  中河美芳
0 0 1 2 0 0 2 0 0 5 阪急            14勝20敗2分  0.416  中田武夫


勝利投手 中河美芳 8勝4敗
敗戦投手 中田武夫 2勝5敗


二塁打 (イ)ハリス (阪)宇野、山下実


バッキー・ハリス、5打数4安打


 阪急は3回、先頭の宇野錦次が左翼線に二塁打、大原敏夫が送って二死後、黒田健吾の中前タイムリーで1点を先制する。

 イーグルスは4回、先頭のバッキー・ハリス左前打、サム高橋吉雄死球、一死後杉田屋守右前打で満塁、中河美芳の一ゴロをファースト宮武三郎がバックホームするが野選となり1-1の同点、辻信夫が投前にスクイズを決めて2-1と逆転に成功。

 阪急は4回裏、山下好一が右翼線にヒット、山下実の中越え二塁打で2-2の同点に追い付く。宮武の中飛で山下実は三進、キヨ野上清光の一ゴロの間に生還して3-2と逆転。

 イーグルスは7回、この回先頭の辻信夫が四球で出塁、漆原進が送って、寺内一隆左前打、中根之死球で一死満塁、ここでハリスが三塁線を破り二者が還り、一走中根も三塁を蹴って本塁に突入、7-6-2と転送されてタイミングはアウトであったがキャッチャー大原は中根の気迫に圧倒されたか落球、5-3と逆転する。更に高橋の遊ゴロでハリスが三進、小島利男がピッチャー強襲ヒットを放ち6-3とする。

 阪急も粘りを見せ7回裏、タイムリーエラーの大原が右前打を放ち出塁、中田武夫の二ゴロでランナーが入れ替わり、黒田左前打、ジミー堀尾文人は左飛に倒れるが山下好一四球で二死満塁、山下実が右前に2点タイムリーを放ち5-6としてなお一三塁、しかし宮武は三ゴに倒れてチェンジ。

 中河美芳は8回~9回にかけて中田、黒田、堀尾から気魄の三者連続三振を奪う力投を見せ、8安打2四球4三振の完投で8勝目。バッキー・ハリスは5打数4安打2打点、投打の柱が揃い踏みしてイーグルスはこれで7連勝。



12年秋 ライオンvsジャイアンツ 5回戦

11月2日 (火) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 1 0 0 0 0 1 0 0  2    ライオン       12勝23敗  0.343  桜井七之助
0 0 2 1 0 0 0 7 X 10  ジャイアンツ  24勝13敗  0.649  成田友三郎 スタルヒン


勝利投手 成田友三郎 2勝0敗
敗戦投手 桜井七之助 2勝2敗
セーブ    スタルヒン 1


三塁打 (ジ)水原
本塁打 (ラ)桜井 2号


呉波復活!


 ライオンは2回、先頭の坪内道則がショート白石敏男のエラーに生き藤浪光雄右前打で一二塁、坪内が三盗を決めて一三塁から中野隆雄の遊ゴロの間に1点を先制する。

 ジャイアンツは3回、一番センターに復帰した呉波がピッチャー強襲ヒット、呉の復帰により二番レフトに入る前川八郎の遊ゴロでランナーが入れ替わり、水原茂左前打で一死一二塁、中島治康のピッチャー強襲ヒットの間に前川が還って1-1の同点としてなお一三塁、永澤富士雄の投ゴロで水原が還り2-1と逆転。更に4回、先頭の白石敏男が左前打で出塁、内堀保の代打平山菊二は左飛に倒れるが、成田友三郎の左前打で一死一二塁、呉の遊ゴロで成田が二封されて二死一三塁、ここでダブルスチールを決めて3-1とする。

 成田友三郎は3回から7回までライオン打線を1安打に抑える。桜井七之助も5、6回を三者凡退。ライオンは7回、その桜井が左翼スタンドに第2号を放って2-3。ジャイアンツは8回から成田に代えてスタルヒンを投入する。

 ジャイアンツは8回、水原が右中間に三塁打、中島の左前タイムリーで4-2、永澤の右前打と重盗で無死二三塁、二死後代打伊藤次郎の左前タイムリーで二者還り6-2、スタルヒン中前打、呉四球で二死満塁、前川が押出し四球を選んで7-2、更に水原と中島が連続タイムリーを放ってこの回一挙7点。

 水原が3安打2打点、中島が3安打3打点。スタルヒンは1点差の場面での登板で9回も抑えており、珍しくセーブを記録する。 

12年秋 名古屋vsセネタース 5回戦

11月2日 (火) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 1 0 0 4 5 名古屋       10勝24敗2分  0.294  松尾幸造
0 0 0 0 0 5 0 4 X 9 セネタース  13勝21敗1分  0.382  浅岡三郎


勝利投手 浅岡三郎 3勝6敗
敗戦投手 松尾幸造 3勝5敗


二塁打 (名)石田 (セ)青木、綿貫
三塁打 (セ)尾茂田


青木幸造、汚名返上の逆転二塁打


 浅岡三郎は5回まで4四球を与えるが要所を締めるピッチング。3回の無死一塁も百万ドル内野唯一の生き残り苅田久徳とのコンビで1-4-3の併殺で切り抜ける。松尾幸造は5回まで6四球と荒れ模様。

 名古屋は6回、一死後大沢清が珍しく左前へのヒットを放つとレフト青木幸造が中継のショートに悪送球、大沢はこの間に三塁に進む。続く田中実とのスクイズは呼吸が合わず大沢が三本間に挟まれるがキャッチャー中村民雄からの送球をサード横沢七郎がエラーする間に大沢が還って1点を先制する。

 セネタースは6回裏、野口明、綿貫惣司、浅岡三郎が三連続四球を選んで無死満塁、松尾にとっては毎度のことで続投、ここで青木が先ほどのエラーを帳消しにする左中間二塁打を放って2-1と逆転、一走浅岡は8-6-4-2の中継プレーに刺されるが打者走者青木はこの間に三塁を陥れる。今岡謙次郎四球で一死一三塁、苅田の投ゴロで三走青木がホームに突っ込むとピッチャー松尾のバックホームが野選となり3-1、更に尾茂田叶が中越えに三塁打を放って5-1とする。

 セネタースは8回、苅田の三ゴロを急造サード田中実が失し、キャッチャー三浦敏一の捕逸で苅田は二塁に進む。横沢の遊ゴロをショート倉本信護がエラーして無死一三塁、ここで再び三浦が捕逸して苅田が還り6-1、野口明、綿貫、浅岡の三連続タイムリーで3点を追加して9-1とする。

 名古屋は9回、大沢の二ゴロを苅田がエラー、高木茂左前打、倉本中前打で満塁とし、代打小島茂男の二ゴロの間に大沢が還って2-9、ショート今岡のエラーで二者生還して4-9、石田政良のタイムリーで5-9まで追い上げるがここまで。

 浅岡三郎は8安打5四球2三振の完投で3勝目。松尾幸造も完投するが11四球では苦しい。




12年秋 10月・月間MVP

 10月の月間MVP(対象期間:9月29日~10月31日)を発表させていただきます。


投手部門

イーグルス 中河美芳 1

 中河はシーズン途中に関大を中退して入団。秋季シーズンから一塁手として出場していました。投手デビューは10月3日のことであり、1ヵ月弱で頂点に上り詰めた異色のプレイヤーです(蛸足伝説は各種サイトを参考にしてください。)。投げないときは二番ファーストで出場します。

 今月12試合に登板して7勝4敗1セーブ(7勝と4敗は公式記録ですが、セーブは当ブログ独自で現行ルールに照らして算定していますのでご注意ください。)、84回3分の2を投げて防御率1.49、WHIP1.11、奪三振率3.11、完封勝利1回です。

 投手成績だけを見ればスタルヒンの方が上です。スタルヒンは今月11試合に登板して9勝2敗、75回を投げて防御率1.80、WHIP0.96、奪三振率5.40、完封勝利3回ですが、まだ安定味に欠けポカも多く(完封3回ですが防御率が中河を下回っている点にご注目ください。)、まだまだ発展途上というところでしょう。

 首位を独走するタイガースのエース西村幸生の2カ月連続受賞もありえました。西村は今月10試合に登板して6勝2敗、70回を投げて防御率1.53、WHIP1.15、奪三振率4.63でした。タイガースはベテラン若林忠志、無敗の御園生崇男、剛球景浦将がいるため西村だけが目立つ数字となりにくく、賞レースではどうしても不利になりがちです。実際、西村は昭和12年秋、昭和13年春と最高殊勲選手の最有力候補でありながら、12年秋はバッキー・ハリス、13年春は苅田久徳に持っていかれることとなります。



打撃部門

タイガース 山口政信 1

 山口政信は主に三番を打ち、景浦が欠場の試合では四番にも入ります。今月20試合に出場して71打数22安打17得点13打点、7盗塁20四球、二塁打2本、三塁打1本、本塁打2本、打率3割1分、出塁率4割6分2厘、長打率4割5分1厘、OPS0.912です。

 山口と甲乙付け難い活躍を見せたのが藤井勇でした。今月20試合に出場して76打数25安打9得点16打点、1盗塁9四球、二塁打4本、三塁打1本、本塁打1本、打率3割2分9厘、出塁率4割、長打率4割4分7厘、OPS0.847です。
 打順は主に五番か六番、鳥取一中時代から澤村キラーとして有名です。

 カイザー田中義雄も19試合で65打数18安打8得点15打点、景浦将は欠場が多く14試合の出場に止まりましたが8得点11打点、打率3割5分4厘、出塁率4割9分2厘、長打率4割7分9厘、OPS0.971です。

2010年10月29日金曜日

12年秋 第9節 週間MVP

 今節はタイガースが4勝0敗、イーグルスが3勝0敗、ライオンが2勝1敗、金鯱、セネタース、ジャイアンツが1勝2敗、阪急が1勝3敗、名古屋が0勝3敗であった。

 イーグルス、ライオン、金鯱、名古屋が3試合の理由は雨天中止のためであるが、ジャイアンツとセネタースの場合は無効試合となったためである。但し、正式に10月27日のセネタースvsジャイアンツ戦が無効試合と判定されたのはシーズン終了後のことですので、昭和12年10月31日時点ではセネタースの勝利としてカウントされています。当ブログでは、公式記録に準拠して現時点で無効試合として取り扱いますのでご了承願います。

 因みにこの試合の取扱いに不明朗なところがありますので、タイガースのマジックナンバーの計算にも影響することから(タイガースのマジック対象がジャイアンツとなるため)、秋季リーグ戦においてはマジックナンバーについては触れておりません。


週間MVP

 投手部門

 タイガース 若林忠志 1

 今節2勝0敗。ジャイアンツ戦では澤村栄治に投げ勝つ。

 
 イーグルス 中河美芳 2

 今節2完投2勝0敗、うち1完封。前節に続いて2節連続受賞。


打撃部門

 タイガース 藤井勇 1

 ジャイアンツ二連戦で二戦連続4打数3安打、澤村とスタルヒンを打ち崩して事実上の優勝を決定づける。


殊勲賞

 イーグルス バッキー・ハリス 1

 今節11打数5安打。イーグルス快進撃を牽引する。

 イーグルス 杉田屋守 1

 今節14打数6安打5打点。ハリスと共に好調イーグルスを牽引する。


敢闘賞

 阪急 山下好一 1

 今節17打数9安打5得点3打点、二塁打1本、三塁打2本、本塁打1本。

 阪急 山下実 1

 今節13打数5安打7得点7打点、二塁打1本、三塁打1本、本塁打2本。


技能賞

 イーグルス 漆原進 1

 今節10打数5安打、タイガース岡田宗芳同様、九番打者として見事なつなぎ役。











 

2010年10月27日水曜日

12年秋 金鯱vsライオン 5回戦

10月31日 (日) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 2 2 0 0 4 金鯱       17勝17敗  0.500  菊矢吉男
0 0 0 0 0 1 1 1 0 3 ライオン  12勝22敗  0.353  中山正嘉


勝利投手 中山正嘉 4勝6敗
敗戦投手 菊矢吉男 7勝9敗


二塁打 (ラ)鬼頭、菊矢


金鯱、3安打で4点
  3回まで両チーム無安打。ライオンは4回、水谷則一がこの試合の初ヒットを放つが無得点。金鯱は5回、瀬井清が中前打を放つが中山正嘉の遊ゴロでダブルプレー。ライオンは5回裏、坪内道則の中前打と藤浪光雄の四球でチャンスをつかむが後続を抑えられる。3回まで両チーム無安打。ライオンは4回、水谷則一がこの試合の初ヒットを放つが無得点。金鯱は5回、瀬井清が中前打を放つが中山正嘉の遊ゴロでダブルプレー。ライオンは5回裏、坪内道則の中前打と藤浪光雄の四球でチャンスをつかむが後続を抑えられる。 

 金鯱は6回、安永正四郎左前打、島秀之助の投前送りバントが一塁手のエラーを誘い、江口行男投ゴロで一死二三塁、矢野槇雄四球後、黒澤俊夫の一ゴロが野選を誘い1点を先制、相原輝夫が押出し四球を選んで1安打で2点を先制、2-0とする。

 ライオンは6回裏、鬼頭数雄の二塁打と水谷則一の左前タイムリーで1-2と反撃。

 金鯱は7回、先頭の中山正嘉が遊失で三塁に進む。安永四球、島四球で無死満塁、矢野の左前打で3-1、黒澤の投ゴロで安永が生還、又も1安打で2点を追加して4-2と突き放す。

 ライオンは8回、三失で二塁に出た水谷が浅原直人の中飛で三進、坪内の右犠飛で還って3-4と追い上げる。更に9回、代打桜井七之助が三塁内野安打で出塁、安藤之制が投前に送りバントを決めて一死二塁、菊矢吉男の当りはショートヘのライナー、桜井の代走柳澤騰市が飛び出しておりゲッツーとなりゲームセット。

 中山正嘉は8安打2四球1死球3三振の完投で激戦を制して4勝目。3安打の金鯱が8安打のライオンを降す。

12年秋 名古屋vsイーグルス 5回戦

10月31日 (日) 甲子園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 名古屋        10勝23敗2分  0.543  森井茂 松尾幸造
0 0 2 0 0 0 0 1 X 3 イーグルス  19勝16敗1分  0.303  中河美芳


勝利投手 中河美芳 7勝4敗
敗戦投手 森井茂   4勝7敗


二塁打 (イ)杉田屋


イーグルス内野陣、3併殺


 名古屋は初回、石田政良の左前打と桝嘉一の四球で一死一二塁と先制のチャンスをつかむが、本日四番に入った遠藤忠二郎が中飛、小島茂男が三振に倒れて無得点。2回は大沢清が四球で歩くが、倉本信護が5-4-3のゲッツー。3回も三浦敏一が内野安打で出塁するが石丸藤吉が4-6-3のゲッツー。

 イーグルスは3回、この回先頭の九番漆原進が左前打で出塁、寺内一隆が送って中根之のショート内野安打で一死一三塁、バッキー・ハリスのショート内野安打で1点を先制、ハリス二盗後、サム高橋吉雄の左犠飛で2-0とする。

 名古屋は8回、一死後石田が四球に歩くが、桝が6-4-3のゲッツー。イーグルスは8回裏、高橋四球、小島利男中前打で無死一三塁、小島二盗後、杉田屋守の三ゴロの間に高橋が還って3-0とする。

 中河美芳は3安打4四球4三振のプロ入り初完封で7勝目。イーグルスは三つのダブルプレーを見せるが、サム高橋吉雄がセカンドに固定されていることが大きく、これはショートに辻信夫を使えているからであり、また、中河美芳の投球テンポが良いことも寄与している。

 イーグルスはこれで6連勝、この間、中河が4勝、畑福が2勝である。


12年秋 ジャイアンツvsタイガース 6回戦

10月31日 (日) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 1 2 3 ジャイアンツ  23勝13敗  0.639  スタルヒン 成田友三郎 青柴憲一
0 3 1 0 0 0 2 0 X 6 タイガース     30勝6敗    0.833  西村幸生


勝利投手 西村幸生  12勝3敗
敗戦投手 スタルヒン 13勝4敗


二塁打 (ジ)永澤2、伊藤 (タ)藤井、藤村、山口


藤井勇、二試合連続猛打賞


 ジャイアンツは初回、先頭の白石敏男が内野安打で出塁するが三番水原茂が西村幸生のシュートに詰まり三ゴロゲッツー。

 タイガースは2回、先頭の景浦将が四球、伊賀上良平は中飛に倒れるが藤井勇がセンター左奥に二塁打を放ち景浦が還って1点を先制。カイザー田中義雄も中越えに三塁打を放って2-0、西村幸生の中犠飛で3-0とする。3回にも藤村富美男の二塁打と景浦の左前タイムリーで4-0。ジャイアンツはこの回でスタルヒンをあきらめて成田友三郎を二番手に投入する。

 左腕成田に抑えられていたタイガースは7回、二死から山口政信が右中間に二塁打、景浦死球、伊賀上四球で二死満塁、ここで藤井勇が中前に2点タイムリーを放って6-0とダメ押し。

 ジャイアンツは8回、この回先頭のの永澤富士雄が四球で出塁、伊藤健太郎が左翼線に二塁打を放って無死二三塁、筒井修死球で無死満塁、ここで内堀保に代わって久々復帰の呉波が代打で登場、左犠飛を打ち上げてようやく1点を返すが、成田に代わる代打澤村栄治は三振、白石も遊ゴロに倒れて追加点はならず。9回も二死から中島治康が遊失で二塁に進み、永澤の右中間二塁打で2-6、伊藤の中前タイムリーで3-6と追い上げ、筒井が左前打で続いて二死一二塁と粘るが最後は田代須恵雄が三ゴロに倒れてゲームセットのサイレンが高々と鳴り響く。

 ジャイアンツは初回の無死一塁で二番前川八郎が三振、スコアブックの記載からだけでは分からないが送りバント失敗の可能性がある。6点取られてからの終盤の反撃で粘りを見せるが8回は無死満塁で1点のみ、9回の反撃は二死からと常にちぐはぐな攻撃、それだけ西村幸生のピッチングが巧妙であったということか。

 西村幸生は8安打2四球1死球6三振の完投で12勝目。藤井勇は昨日は澤村から3安打、本日も4打数3安打3打点の活躍。特に7回の2点タイムリーが効いた。タイガースは澤村、スタルヒンを撃破してジャイアンツ戦6戦全勝。秋季リーグ戦の優勝を事実上決定付けた。

12年秋 セネタースvs阪急 6回戦

10月31日 (日) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 2 0 1 0 0 0 0 3 セネタース  12勝21敗1分  0.364  野口明
1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 阪急           14勝19敗2分  0.424  丸尾千年次


勝利投手 野口明    9勝12敗
敗戦投手 丸尾千年次 3勝4敗


二塁打 (セ)今岡、横沢
三塁打 (阪)山下好


今岡謙次郎、中村信一の穴を埋める活躍


 阪急は初回、先頭の黒田健吾が四球で出塁、西村正夫が送って山下好一は投ゴロに倒れるが、山下実が中前にタイムリーを放って1-0と先制する。

 セネタースは3回、中村信一の穴を埋めるべくショートに起用されている九番今岡謙次郎が左翼線に二塁打、中村信に代わり一番に入る苅田久徳が四球を選び無死一二塁、横沢七郎が送って尾茂田叶の中犠飛で一点を先制、苅田も三塁に進む。中村民雄が四球に歩き二死一三塁、中村民が二盗、キャッチャー大原敏夫からの送球をショート上田藤夫が処理にもたつく一瞬の隙をついて苅田がホームインして2-1と逆転。

 セネタースは5回、この回先頭の今岡謙次郎が四球で出塁、苅田のセカンドへのプッシュバントが結果的に犠打となって一死二塁、横沢七郎が左中間を抜いて3-1とする。

 野口明は2回以降ほぼ完ぺきなピッチング、8回には一死後山下好一に三塁打を許すが山下実を敬遠、山下実に二盗を許すが代打ジミー堀尾文人を三振、宮武三郎を敬遠して林信一郎に代わる代打山田勝三郎を三振に打ち取り、結局6安打3四球7三振の完投で9勝目をあげる。山下実が走らなければ野口明は宮武と勝負をしたであろうか、その場合勝負の行方は・・・、こればかりは永遠の謎である。

 中村信一を兵役で欠いたセネタースは今岡謙次郎がその穴を埋める活躍、苅田久徳の走塁、横沢七郎の快打など、4安打で3得点と久々にらしさを見せつけて快勝して五連敗でストップ。

2010年10月26日火曜日

12年秋 タイガースvsジャイアンツ 5回戦

10月30日 (土) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
2 0 0 2 0 0 0 0 0 4  タイガース     29勝6敗    0.829  若林忠志
2 0 0 0 0 1 0 0 0 3  ジャイアンツ  23勝12敗  0.657  澤村栄治


勝利投手 若林忠志 8勝2敗
敗戦投手 澤村栄治 5勝5敗


三塁打 (タ)藤井
本塁打 (ジ)水原 3号


若林忠志、澤村に投げ勝つ


 タイガースは初回、先頭の松木謙治郎が右前打で出塁、一死後山口政信の右前打で一三塁、打者景浦将の初球、澤村栄治のワイルドピッチでタイガースが1点を先制。景浦は三飛に倒れるが伊賀上良平が左前にタイムリーを放って2-0とする。

 ジャイアンツは1回裏、二番前川八郎が右前打、続く水原茂が、第3号同点ツーランをレフトスタンドに叩き込んで2-2。

 タイガースは4回、先頭の伊賀上が三失に生きると、澤村キラー藤井勇が中越えに三塁打を放って3-2、澤村はカイザー田中義雄を三振、若林忠志を三邪飛に打ち取るが、岡田宗芳が右前にタイムリーを放って4-2とする。

 ジャイアンツは6回、先頭の水原が左翼線ヒットで出塁、中島治康の投ゴロでランナーが入れ替わり、永澤富士雄が右前打、筒井修が中前にタイムリーを放ち3-4と追い上げるが若林の好投の前に敗れ去る。

 若林忠志は10安打1四球2三振の完投で8勝目。翌日の読売新聞によると、ショート岡田宗芳、センター山口政信の好守が若林を助けたとしている。

12年秋 阪急vsセネタース 5回戦

10月30日 (土) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
1 2 0 3 0 3 1 0 2 12  阪急          14勝18敗2分  0.438  中田武夫
2 4 0 0 0 0 0 0 0  6  セネタース  11勝21敗1分  0.344  金子裕 伊藤次郎


勝利投手 中田武夫 2勝4敗
敗戦投手 伊藤次郎 1勝3敗


二塁打 (阪)西村
本塁打 (阪)山下好 3号、山下実 5号、堀尾 3号 (セ)尾茂田 1号


阪急、本塁打攻勢


 10月31日付け読売新聞は「セネタース遊撃手中村信一選手は応召を命ぜられ30日任地へ向かった。」と報じている。セネタースは百万ドル内野の要と核弾頭を失うこととなった。

 阪急は初回、一死後西村正夫が四球から盗塁、更にワイルドピッチで三塁に進み、山下実の右犠飛で1点を先制する。セネタースは1回裏、二死から尾茂田叶が右前打で出塁、中村民雄、綿貫惣司連続四球で満塁とし、家村相太郎の中前タイムリーで2点を入れて逆転。

 阪急は2回、先頭の中田武夫が四球、セネタースは先発金子裕を下げて早くも伊藤次郎を投入。大原敏夫四球、黒田健吾が送りバントを決めて一死二三塁、西村の二ゴロで中田が還り、山下好一の二ゴロで大原が還って3-2と逆転。

 セネタースは2回裏、先頭の青木幸造四球、今岡謙次郎左前打、苅田久徳が左前タイムリーを放ち3-3の同点、横沢七郎の投ゴロで今岡は三封、一死一二塁で尾茂田が右翼スタンドにスリーランホームランを叩き込んで6-3とリードする。

 阪急は4回、二死から西村正夫が中越えに二塁打、山下好一が右翼スタンドに第3号ツーラン、山下実がバック・ツー・バックとなる第4号をライトスタンドに叩き込んで6-6の同点とする。

 阪急先発の中田武夫は3回以降がらりと立ち直り9回まで伊藤のヒット1本に抑える好投、特に6回以降はパーフェクトピッチングであった。阪急は6回、一死一二塁から代打ジミー堀尾文人が左翼スタンドにスリーランを叩き込んで9-6とリードする。更に7回と9回には宮武三郎の二本のタイムリー等で3点を加えて12対6で快勝する。

 翌日の読売新聞の論評の書き出しは「攻守の中心中村信を名誉の応召に送りだしたセネタースの悲壮な決意は一回・・・」とある。昭和11年に苅田久徳、高橋輝夫、中村信一で築いたセネタース百万ドル内野はここに完全崩壊することとなった。

2010年10月24日日曜日

12年秋 金鯱vsイーグルス 4回戦

10月28日 (木) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9  計
0 0 0 0 0 0 0 0 1  1    金鯱           16勝17敗        0.485  塩田猪年男 松元三彦
5 4 0 0 1 2 0 1 X 13  イーグルス  18勝16敗1分  0.529  畑福俊英


勝利投手 畑福俊英 9勝10敗
敗戦投手 松元三彦 0勝4敗


二塁打 (金)小林茂2
三塁打 (イ)高橋
本塁打 (イ)畑福 3号、高橋 4号


杉田屋守、4打点の活躍


 イーグルスは初回、先頭の寺内一隆は三振に倒れるも中河美芳死球、バッキー・ハリス四球、サム高橋吉雄四球で一死満塁、小島利男が左前にタイムリーして1点を先制、杉田屋守の左翼線タイムリーで3-0、この間に小島は三塁に走りなお一死一三塁となり金鯱先発の塩田猪年男は早くもKO(当時の読売新聞では旧字で「鹽田」と表記されています。)、二番手に松元三彦が登場する。畑福俊英の一ゴロをファースト安永正四郎が失する間に小島が還り4-0、更に安永は杉田屋を刺さんと二塁に送球するがこれが悪送球となるダブルエラーで一死二三塁、辻信夫はセカンド前にプッシュバント、三走杉田屋はこれを見てからスタートを切り鮮やかにセーフティ・スクイズが成功して5-0、二走畑福はこの高度なプレーについていけず二塁にくぎ付け、辻には犠打と打点が記録されている。続く漆原進の左前打で畑福は二塁からホームを突くがレフト黒澤俊夫の好返球に刺されてチェンジ。今日は圧勝したから良いものの、負けていたら畑福の走塁はボーンヘッドとして歴史に残っていたはずである。因みにダブルエラーの安永は2回の守備からベンチに下げられています。

 イーグルスは2回、先頭の寺内投ゴロ後、中河左前打、ハリス右前打と流し打って一死一二塁、高橋四球、小島押出し四球、杉田屋中前に2点タイムリーを放ち8-0としてなお一三塁、畑福の遊ゴロの間に小島が還って9-0とする。辻が中前打で続くが漆原が三振に倒れてこの回も打者9人で攻撃を終わる。

 3回、4回は一転三者凡退のイーグルスは5回、先頭の畑福俊英が左翼スタンドに第3号ホームランを叩き込んで10-0。投手部門のシルバースラッガー賞にはスタルヒン、野口明、伊藤次郎など候補が目白押しであるが長打力では畑福が一歩抜きん出ている。更に6回、ハリスが左前にヒットを放つが「1-4」(ピッチャーから二塁手への送球)でアウト、何かトリックプレーを試みたが失敗したのではないか。直後、高橋が左翼スタンドに第4号ホームラン、小島が左前打を放ち遊失で還って12-0。8回にも高橋の三塁打を杉田屋が今日4打点目となる中前タイムリーで還して13-0。

 金鯱は最終回、佐々木常助の四球と島秀之助のピッチャー強襲ヒットで一二塁とし、ショート辻のエラーで1点を返し完封を免れるも焼け石に水。

 畑福俊英は10安打を許すも4四球4三振自責点ゼロの完投で9勝目、イーグルスは守っても4-6-3と6-4-3の二つの併殺を決めて五連勝。高橋をセカンドに固定できていることがイーグルス好調の原因となっている。


 辻信夫に関しては、春季リーグ戦デビュー間もない時に、守備のセンスが感じられることを書かせていただきました(2010年4月30日付けブログ:4月19日洲崎「12年春 イーグルスvs大東京2回戦」参照)。本日のセーフティスクイズもセカンド前へのプッシュバントで、三走が名手杉田屋守だったからこその判断であり、二走畑福はこの高度なプレーについていけず二塁ベースから動いていません。春季リーグ戦におけるイーグルス大敗の原因はショートサム高橋吉雄の守備にあることは再三指摘させていただきましたが、秋季リーグ戦では高橋をセカンドに固定して好成績につなげています。このところショートには辻信夫を起用して成功しています。辻信夫は打力には劣りますが、打力には目をつぶってでも使い続けていく価値がありそうです。

 1975年、太平洋クラブライオンズは各チームから主力打者を集めて「山賊打線」と呼ばれる強力打線を形成しましたが、江藤慎一監督はショートには打力に目をつぶって梅田邦三を使い続けました。当時のパ・リーグのショートは阪急の大橋がダイヤモンドグラブ賞を独占していましたが、肩では負けますがフィールディングでは梅田が上でした。梅田の守備ぶりは西鉄時代後楽園球場の東映vs西鉄戦で何度も見ました。巨人時代には全く出番に恵まれませんでしたが、西鉄に移籍してきて張り切っていました。観客のまばらな後楽園球場に梅田の声が響き渡っていたことをはっきりと覚えています。江藤慎一監督の監督としての評価は低かったようですが、私は「梅田だけは打力には目をつぶって使う」と言っていた監督としての慧眼を高く評価していました。監督としての資質は弟の江藤省三が35年後に証明してくれました。東京六大学2010年春季リーグ戦、母校慶應義塾大学の監督に就任して1シーズン目に優勝に導いた手腕は、兄・江藤慎一にも宿っていたDNAのなせる業でしょう。弟・省三の学費は、江藤慎一が出していたものです。


*写真は辻信夫がセカンド前へのプッシュバントスクイズを決めた場面。少し見えにくいですが、杉田屋守が辻信夫(h)の犠打により生還して辻に打点が記録されている(hが丸で囲ってあるのが辻信夫に打点が記録されていることを意味します。)が、畑福俊英は二塁から進塁していない。畑福俊英は続く漆原進(i)の左前打で三塁を回ってホームを突きますがレフトからの返球に刺されてスリーアウトチェンジになっています。単なるサインの見落としの可能性もありますが、普通のスクイズのサインであれば確実に転がす方法を選択するはずであり、ここは辻のプッシュバントによるセーフティスクイズであると考えられる。杉田屋守は辻信夫の意図を瞬時に理解したが、畑福俊英にはついていけなかったのではないか。

 


12年秋 名古屋vsライオン 4回戦

10月28日 (木) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 2 1 0 0 0 3 名古屋    10勝22敗2分  0.313  森井茂 繁里栄 田中実
3 0 4 2 0 0 0 0 X 9 ライオン  12勝21敗        0.364  桜井七之助 近藤久


勝利投手 桜井七之助 2勝1敗
敗戦投手 森井茂    4勝6敗
セーブ    近藤久 1


二塁打 (名)大沢
 
ライオン、一二番コンビが5安打6得点


 名古屋は初回、石丸藤吉四球、石田政良投前内野安打、遠藤忠二郎左前打で無死満塁とするが後続が無く無得点に終わる。

 ライオンは1回裏、先頭の鬼頭数雄が四球で出塁、大友一明が中前打で続きダブルスチールを決める。水谷則一三振後、浅原直人四球で一死満塁、打者坪内道則の時、キャッチャー三浦敏一からピッチャー森井茂への返球が高く逸れる間に三走鬼頭がホームに生還、二走大友も三塁に走り、バックアップのショート芳賀直一からの三塁送球が悪送球となる間に大友も還って2-0、この間に三塁に進んだ浅原も坪内の遊ゴロの間に生還して1安打で3点を先制する。

 ライオンは3回、先頭の鬼頭中前打、大友左翼線ヒット、水谷の投前バントは野選を誘い無死満塁、浅原の左犠飛で4-0、坪内の三塁内野安打で5-0、その後遊失とワイルドピッチで2点を加えて7-0とする。
 ライオンは4回、又も先頭の鬼頭が四球で出塁、大友の遊ゴロをショート芳賀が失して無死一二塁、水谷はセオリーどおり引っ張って一塁ゴロ、この間にランナーがそれぞれ進塁して一死二三塁、浅原の中前打で8-0、坪内の遊ゴロの間に大友も還って9-0とする。

 名古屋は5回、先頭の石丸が一失に生きボークで二進、石田の遊ゴロをファースト浅原が落球、石田は二盗を決めて無死二三塁、遠藤の右犠飛で1-9、小島茂男の三ゴロの間に石田も還って2-9。更に6回、高木茂左翼線ヒット、石丸ピッチャー内野安打から石田が右前にタイムリーを放ち3-9とするが追い上げもここまで。

 ライオンは桜井七之助ー近藤久のリレーで最下位争いのライバル名古屋に連勝。一番鬼頭数雄が3打数2安打3得点、二番大友一明が5打数3安打3得点。四番浅原直人が2打点、五番坪内道則が3打点と上位が出て中軸が還すという理想的な攻撃であった。

 なお、10月29日付け読売新聞は、本日六番ショートで出場している芳賀直一と金鯱の四番小林利蔵の応召を伝えている。金鯱の不動の四番として勝負強い打撃ぶりを見せていた小林利蔵は24日を最後に出場しておらず、19日から5試合連続ノーヒットで15打数無安打を最後に入営している。ここ二試合を欠場していた(入営準備のためであろう)芳賀直一はこの日が最後の出場となり4打数無安打3失策であった。
  澤村の秋季リーグ戦の不振は7月の徴兵検査に甲種合格したことによる精神的動揺に起因していると言われていますが、これは澤村に限ったことではないことは小林利蔵と芳賀直一の成績が物語っています。幸せな時代の選手たちと、残された数字だけで同列に比較することは公平さを欠いていると思います。

2010年10月23日土曜日

12年秋 ジャイアンツvsセネタース 4回戦

10月28日 (木) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 1 0 0 0 0 2 0 0 4 ジャイアンツ  23勝11敗       0.676  スタルヒン
0 0 0 0 1 0 0 1 0 2 セネタース    11勝20敗1分  0.550  野口明


勝利投手 スタルヒン 13勝3敗
敗戦投手 野口明          8勝12敗


二塁打 (セ)中村信
本塁打 (ジ)伊藤 5号、中島 4号、永澤 3号


ジャイアンツ、一発攻勢


 ジャイアンツは初回、先頭の前川八郎が四球で出塁しワイルドピッチで二進、筒井修の遊ゴロで三進、水原茂の二ゴロの間に生還してノーヒットで1点を先制する。更に2回、二死後伊藤健太郎がホームランキングに躍り出る第5号を左越えに放ち2-0とする。

 4回までスタルヒンにパーフェクトに抑えられていたセネタースは5回、先頭の中村民雄が四球から盗塁、野口明も四球を選び綿貫惣司の左前タイムリーで1点を返す。この後浅岡三郎、横沢七郎、武田勇は三連続三振、スタルヒンは5回までに7三振を奪う。

 ジャイアンツは7回、中島治康、永澤富士雄がバック・ツー・バックのホームラン競演を見せ4-1とリードを広げる。セネタースは8回、中村信一が左中間に二塁打を放ち、苅田久徳の左前タイムリーで2-4とするがここまで。

 スタルヒンは4安打3四球8三振の完投でハーラー単独トップを守る13勝目をあげる。野口明もジャイアンツ打線を4安打に抑えるがその内三本がホームランでは今のスタルヒンには勝てない。

12年秋 タイガースvs阪急 4回戦

10月28日 (木) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 5 1 4 0 0 0 2 12  タイガース  28勝6敗          0.824  御園生崇男
0 0 0 0 0 2 0 2 1  5   阪急           13勝18敗2分  0.419  丸尾千年次 石田光彦 重松通雄


勝利投手 御園生崇男 7勝0敗
敗戦投手 丸尾千年次 3勝3敗


二塁打 (タ)景浦、松木 (阪)山下好、山下実
三塁打 (阪)山下実、山下好
本塁打 (阪)黒田 2号


両軍無三振


 タイガースは3回、先頭の御園生崇男四球、岡田宗芳がピッチャー強襲ヒット、松木謙治郎の投前送りバントが野選を誘い無死満塁、藤村富美男が中前に2点先制タイムリーを放ち2-0。山口政信二ゴロ、景浦将四球で一死満塁、藤井勇が中前に2点タイムリーを放って4-0、伊賀上良平死球で三度満塁とし、カイザー田中義雄の右犠飛で5-0とする。

 タイガースは4回、松木の右翼線ヒットと景浦の左中間二塁打で6-0、更に5回、伊賀上良平のヒットと松木の左中間二塁打に三つのエラーが重なり4点を追加して10-0として試合を決める。
 阪急は6回、山下好一の二塁打、山下実の三塁打等で2点を返し、8回には今度は山下好の三塁打、山下実の二塁打等で2点、最終回にも黒田健吾の左翼線本塁打で1点を返すがタイガースが12対5で圧勝する。

 御園生崇男は9安打5四球1死球無三振の完投で無傷の七連勝を飾る。阪急は長打が単発、タイガースは打線に切れ目が無く当たりだしたら止まらない。両軍無三振と言う試合であった。

島秀之助著「プロ野球審判の眼」岩波新書

 昨日付けブログ「イーグルスvs金鯱3回戦」でイーグルス3回表の攻撃における「五者連続安打ながら無得点」をお伝えし、島秀之助著「プロ野球審判の眼」(岩波新書)をご紹介しました。同著は二年ほど前にヤフオクかアマゾンで購入したまま読んでおらず、現在読み進めているところなのですが、本日同著の114ページに達したところで偶然にも昨日ご紹介した昭和12年10月27日のイーグルスvs金鯱での「五連続安打ながら無得点」についての回想場面に出くわしました。

 同著を転載させていただきますと、「三回表、先攻のイーグルスは八番の辻が右翼線近くに安打を放って二塁を望んだが、右翼手の強肩に刺されてアウト。続く九番漆原、一番寺内が内野安打して一二塁のチャンスを迎えたが、二番中根の中前安打で漆原が一挙本塁を狙い、8-4-2(島ー五味ー中村)の転送球で憤死、二死となる。しかしなお走者が二塁(寺内)・一塁(中根)に残る場面で、三番ハリスが左前に痛打。二塁走者寺内が本塁を突いたのだが、左翼手(故黒澤)の好返球でまたも本塁寸前でタッチアウト。イーグルスは、この回連続五本の安打を放ちながら無得点に終わってしまったわけだが、プロ野球の珍しいプレーとして記録に残っている。」となっており、ほぼ昨日お伝えした通りです。

 島秀之助が同著を書いたのは昭和61年なので、上記プレーを全て記憶していたとは考えられません。同著の前書き「はじめに」において、参考文献等を紹介しており「・・・コミッショナー事務局所蔵の「スコア・カード」などを参考にさせていただきました。」と書かれています。島はこの「スコア・カード」=「スコアブック」を見ながら上記のプレーを再現させた(私がやっていることと全く同じ!)のではないでしょうか。

 この島が言う「スコア・カード」こそが私が入手して解読作業を進めているスコアブックの原本(あるいは島が見たのも原本のコピーかもしれない)であることは間違いないでしょう。
 当ブログ第一回2010年3月22日付けブログ「解読」において、「入手先の神田の古書店店主の話では原本は野球体育博物館に保管されているはず」と書きましたが、実は野球体育博物館図書室の職員と話した時に、同博物館には原本は保管されておらず、あるとしたらコミショナー事務局ではないかというような話を聞いたことがあります。

 この点に関しては、秋季リーグ戦終了後に詳述させていただく予定です。


 本日の本題ですが、上記島の記述の中に島自身が関わったプレーとして漆原を本塁で刺した中継プレーについて「島ー五味ー中村」としているのは、昨日お伝えした通り「島ー江口ー相原」の間違いです。尤も、中村輝夫は昭和12年に登録名を相原輝夫に改めていますので、ここでいう中村は相原と同一人物であると考えられます(というよりそれ以外にはありえません。)。この試合ではセカンドで先発出場したのは江口行男であり、7回に江口はファーストに回り、五味芳夫がセカンドに入っていますので、3回の中継プレーに参加したのは江口で間違いありません。

 島秀之助がスコアブックを間違えて読むとは考えられませんので、基本的にはスコアブックを読みながら書いたのですが、中継プレーの部分だけは自身の記憶に頼ったのではないでしょうか。この年相原輝夫と改名した中村輝夫を「中村」と書いていることからも、この部分は自らの記憶に従ったのだと思います。恐らく他の試合で五味芳夫の中継で二塁走者を刺したことがあったのでしょう。


2010年10月22日金曜日

一騎討ち ⑭

 古来より「予想はうそよ」と言いますが、昨日の⑬において本日の「一騎討ち」最終章はティム・リンスカムの勝利となると予言し、24時間も経たないうちに釈明会見を開く結果となりました。

 ベースボールにタラレバは禁句ですが、サード パブロ・サンドバルの足がもう少し長ければ歴史は変わっていたでしょう。3回の3失点ですが、解説の大島さんのおっしゃる通り、無死一塁からカルロス・ルイーズに与えた死球が痛かった。続くロイ・ハラデーの送りバントに対してリンスカムは最もバントしにくい内角低め(打者にとって最もバントしにくいコースは内角低めです。ちばあきおの傑作野球漫画「キャプテン」においても、バントを避けたい場面で近藤に対してキャッチャー小室が「ここよ」と内角低めを指示するシーンが登場します。)に快速球を投げ込みました。ハラデーのバントはワンバウンド目はファウルグラウンド、ツーバウンド目はフェアグラウンドでしたが、キャッチャー バスター・ポージーが捕った地点はファウルグラウンドでした。ポージーは三封できると判断して三塁に送球しますが、無死一二塁での送りバントの場面ですので当然三塁手は三塁側へのバントを警戒して前進守備をとります。

 ということでサード サンドバルはポージーからの送球を捕球すると前進守備から一転サードベースタッチのために後ろに足を伸ばしますが、残念ながらサンドバルの足の長さが足りずベースタッチできずに二三塁となってしまい、プラシド・ポランコのタイムリー等で3点を許します。


 第七戦までもつれこめば、第七戦先発予定のマット・ケインに続いてリンスカムの中二日での投入は十分あり得るでしょう。ハラデーは股関節を痛めたとのことですので中二日はないでしょうが、ワールド・シリーズに進んだ場合はどうするのか、まだまだ目が離せません。

 

一騎討ち ⑬

 とうとうサンフランシスコ・ジャイアンツが3勝1敗でティム・リンスカムvsロイ・ハラデーによる「一騎討ち」第二弾にして最終章を迎えることとなりました。ちょうど仕事も一段落したところなので明日(すでに今日ですが)は休暇をいただいております。

 4月26日の①でナショナル・リーグサイ・ヤング賞争いが二人の「一騎討ち」となると予言して始まった当シリーズですが、サイ・ヤング賞争いの予想ははずれましたが(ロイ・ハラデーの確率65%はどうやら当たりそうではありますが)、二人が故障することなくシーズンを送るという予想は大的中でした。

 ロイ・ハラデーは若い頃は故障に悩みましたが、トレーニングにより克服してきました。一見無理のありそうなリンスカムのフォームは興南高校の島袋投手同様理想的なフォームであるという予想もどうやら的中したようです。

 リンスカムがシーズン中盤調子を崩したことがリンスカムが早々とサイ・ヤング賞争いから脱落した理由です。すなわち、5月20日のダイヤモンドバックス戦までは奪三振率が11.01でしたが、7月7日のブルワース戦時には10.11に落ちており、7月25日のダイヤモンドバックス戦時には9.30まで落ちました。その後盛り返し、最終的には212回3分の1を投げて231奪三振(三年連続奪三振王)で奪三振率は9.79でした。2008年10.51、2009年10.43と比べて大幅に落としていますので三年連続サイ・ヤング賞は100%ありえません。

 しかし奪三振率の推移に見られるようにシーズン終盤に調子を上げてきたことがポストシーズンに活きています。

 昭和12年の職業野球春季リーグ戦で例えれば、シーズンを通じて安定していた澤村栄治がロイ・ハラデー(ピッチングスタイルは全く違うことは無視して)、波がありながらも投げ続けた野口明がティム・リンスカムというところでしょう。

 昭和12年春季リーグ戦の澤村栄治は24勝4敗でしたが、野口明との直接対決では0勝2敗です。

 昭和12年春季リーグ戦の澤村vs野口明の「一騎討ち」が2010年ナショナル・リーグにおけるティム・リンスカムvsロイ・ハラデーによる「一騎討ち」を予言しているとの大胆な仮説に立てば、明日(今日ですが)の「一騎討ち」最終章はティム・リンスカムの勝利によって大円団を迎えるということになります。

 ということで、今年最後の大予言として、明日(今日です)の決戦は、ティム・リンスカムの勝利と予想させていただきます。
 

12年秋 イーグルスvs金鯱 3回戦

10月27日 (水) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 1 0 1 1 0 0 3 イーグルス  17勝16敗1分  0.515  中河美芳
0 0 0 1 1 0 0 0 0 2 金鯱            16勝16敗        0.500  鈴木鶴雄 中山正嘉


勝利投手 中河美芳 6勝4敗
敗戦投手 中山正嘉 3勝6敗


二塁打 (金)小林茂


イーグルス、五者連続安打で無得点ながら四連勝


 イーグルス中河美芳、金鯱鈴木鶴雄と好調同士の先発ということで投手戦が期待される。

 イーグルスは3回、五者連続安打を放ちながら無得点という珍記録を樹立する。この回先頭の辻信夫は右翼線への安打、辻は二塁に向かうが、打球を処理したライト小林茂太は逆モーションのまま二塁に送球して辻を刺す。続く漆原進が三前にバントヒット、トップに返り寺内一隆も三前内野安打で一死一二塁。中根之の中前打で二走漆原は俊足を飛ばして三塁を蹴ってホームに向かうがセンター島秀之助からの返球を中継のセカンド江口行男が漆原を刺して二死一二塁。続くバッキー・ハリスが左前にヒットを放ち二走寺内は三塁を蹴ってホームに向かうがレフト黒澤俊夫からのダイレクト返球にタッチアウトとなり、5打者連続安打を記録するが無得点。

 イーグルスは4回、先頭のサム高橋吉雄が四球から盗塁、小島利男の遊ゴロの間に三進し、杉田屋守の遊ゴロをショート瀬井清が失する間に1点を先制する。

 金鯱は4回裏、先頭の島が遊失に生き二盗、ピッチャーからの牽制をベースカバーに入ったショート辻が逸らす間に島は一挙にホームに還り1-1の同点とする。更に5回、小林茂太が右中間へ二塁打、藤浪光雄の中前タイムリーで2-1と勝越しに成功。

 イーグルスは6回、この回先頭の小島が四球で出塁、杉田屋の投ゴロでランナーが入れ替わり、中河美芳右前打、辻に代わる代打野村実の二ゴロをファースト鈴木鶴雄が失して一死満塁、ここで漆原進が見事にスクイズを決めて2-2の同点に追い付く。

 イーグルスは7回、中根四球、ハリスの投前送りバントをピッチャー中山正嘉が悪送球して無死一三塁、高橋も四球で無死満塁、小島利男が押出しの四球を選んで3-2と逆転に成功する。
 中河美芳は4安打4四球7三振の完投で投手戦を制して6勝目。本日の東西四試合は全て1点差ゲーム、秋深まってますます熱戦が展開される。


 金鯱のセンター島秀之助は、昨年肩を痛めたため遠投ができない。そこで本日の3回のようにランナー二塁でセンター前ヒットの場合は中継の内野手に素早くトスしてランナーをホームで刺している。島秀之助の著書「プロ野球審判の眼」(何と岩波新書から出ています。)によると、「私はプロ野球選手としては成功しなかった(筆者注:もちろん謙遜して書いている)。それは入団後しばらくして肩を痛めたからである。・・・(中略)・・・強肩の濃人遊撃手、あるいは五味二塁手にそばまで来てもらい、捕球後、私がただちにトスしたものをバックホームするという方法を考えだしたが、この方法で走者を本塁で刺したことが二度ある。・・・」と書かれている。
 本日中継に入ったのは江口行男二塁手なので島の記憶と違うプレーかもしれないが、翌日の読売新聞は当該プレーについて「島ー江口ー相原(捕手=筆者注)の快足リレー」と伝えており、島の著書に書かれているような中継プレーであったと強く推認できる。

12年秋 ライオンvs名古屋 3回戦

10月27日 (水) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 2 0 0 0 0 2 0 0 4 ライオン  11勝21敗        0.344  菊矢吉男
0 0 0 1 1 0 1 0 0 3 名古屋    10勝21敗2分  0.323  松尾幸造


勝利投手 菊矢吉男 7勝8敗
敗戦投手 松尾幸造 3勝4敗


二塁打 (ラ)鬼頭、大友
三塁打 (ラ)柳澤 (名)石丸


菊矢吉男、完投で7勝目


 名古屋はショートの芳賀直一が怪我で欠場、石丸藤吉がショートに回り、桝嘉一をセカンドに配すという緊急事態。ライオンの鬼頭数雄は左利きながら起用にセカンドをこなすが、果たして桝は如何に。

 ライオンは2回、先頭の浅原直人が遊失に生き、藤浪光雄の一ゴロで二進、中野隆雄の三ゴロで三進、柳澤騰市の右前への当りをライト遠藤忠二郎が後ろに逸らして三塁打となり1点を先制、ライトからの中継に入った急造セカンド桝嘉一がホームに無用の悪送球して2-0とする。

 名古屋は4回、遠藤、小島茂男が連続四球、大沢清の一ゴロが3-1Aと渡る間に一死二三塁、高木茂の内野安打で1-2とする。更に5回、一死後桝が右前打、遠藤も右前打で一死一三塁、小島の遊ゴロの間に桝が還って2-2の同点に追い付く。 

 ライオンは7回、先頭の鬼頭数雄が中前打で出塁、大友一明の右中間二塁打で鬼頭が快足を飛ばしてホームに還り3-2、この際ライトからの中継に入った桝がホームにこの日二つ目の悪送球を犯し大友は三塁に進み(記録は二塁打とエラー)、浅原の右前タイムリーで4-2とする。名古屋もその裏、石丸の三塁打を小島の右前タイムリーで還して3-4と追いすがるがここまで。

 菊矢吉男は9安打7四球4三振の完投で接戦を制して7勝目をあげる。急造二塁手桝嘉一は二つの悪送球、接戦のこの試合では致命傷となった。

 松尾幸造は秋季リーグ戦でデビューして3勝4敗であるが、完封勝利が二度、負けても本日のように必ず試合は作っている。

2010年10月19日火曜日

12年秋 セネタースvsジャイアンツ 3回戦(無効試合)

10月27日 (水) 後楽園



1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 1 0 1 0 0 0 0 2 セネタース   無効試合  伊藤次郎 野口明
1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 ジャイアンツ  無効試合  澤村栄治


二塁打 (ジ)中島、前川
三塁打 (ジ)水原、永澤


無効試合


 この試合は、試合後ジャイアンツが聯盟に提訴して無効試合になっておりますのでご注意ください。但し、スコアブックは残されていますので、試合内容のアップは通常通り行います。


 ジャイアンツは初回、水原茂の左中間三塁打と中島治康の左中間二塁打で1点を先制する。

 セネタースは3回、一死後九番武田勇が四球で出塁、二死後苅田久徳の打席で武田が二盗に成功、直後に苅田が中前にタイムリーを放ち1-1の同点とする。更に5回、この回先頭の伊藤次郎が中前打で出塁、横沢七郎が送って武田が右前打、中村信一の三ゴロをサード水原茂が失して一死満塁、苅田が二本目のタイムリーを中前に放って2-1と逆転。

 問題のシーンは最終回に登場する。ジャイアンツは9回、澤村栄治が左前に流し打って出塁、前川八郎の右中間二塁打で無死二三塁、呉波の代打スタルヒンの遊ゴロで澤村がホームを突くもショート中村信一からのバックホームにタッチアウト、スタルヒンの代走に平山菊二が起用される。一死一三塁となり、水原の当りは投ゴロ、野口明からセカンドベースカバーの苅田に送球、苅田は一塁転送するがこのボールが一走平山の頭に当たってセーフとなり三走前川が生還する。しかし苅田久徳監督がインターフェアであると抗議、苅田のアピールが通ってダブルプレーが完成しゲームセット。


 この後ジャイアンツが聯盟に提訴して後日無効試合として取り消される。

 この試合については松木謙治郎著「タイガースのおいたち」の記述を転載させていただきます。「・・・打者水原が投ゴロ、投手野口から二塁に投げられ、一塁走者平山が封殺された。併殺をねらった苅田の送球がこの平山の頭部にあたり、この間三塁から前川が還って同点となった。これに対して監督兼務だった苅田が、平山が故意に当ったと抗議し、主審二出川、塁審池田、沢の三氏が協議の結果、この抗議を受け入れて打者走者水原のアウトを認めたためだった。提訴を条件に試合を終了したが、この提訴を聯盟がとりあげ、平山は故意に当ったのではないとして再試合と決定した。再試合は選手権の日程上打切りとなったが、連盟と言っても巨人の圧力が強く、この打切りは後日に汚点をのこしたといえる。このため秋のリーグ戦は七回総当たりだったが、巨人とセネタースは48試合に終わったのである。」

 なお、昭和12年秋季リーグ戦の澤村の成績は9勝5敗です。この日の無効試合がカウントされてしまったためか9勝6敗と伝わっているケースがありますが、正しくは9勝5敗ですのでご注意ください。ベースボールマガジン社編「プロ野球50年史」62ページにも「澤村は9勝6敗」との誤記載(1984年12月10日、第一版第一刷)がありますが、同書でも689ページの巻末成績欄には「9勝5敗」と正しく記載されています。


*後日書き加えられたと考えられますが、雑記欄に「この試合を取り消す」と記載されています。





*無効試合となりましたがスコアブックは残されています。






12年秋 阪急vsタイガース 3回戦

10月27日 (水) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 2 0 0 2 阪急           13勝17敗2分  0.433  中田武夫
0 0 0 0 0 2 0 1 X 3 タイガース  27勝6敗          0.818  西村幸生 若林忠志


勝利投手 若林忠志 7勝2敗
敗戦投手 中田武夫 1勝4敗


二塁打 (阪)山下好2、宮武、黒田 (タ)伊賀上2
三塁打 (タ)松木
本塁打 (阪)山下実 4号


岡田宗芳、決勝タイムリー


 5回まで毎回走者を出しながら無得点のタイガースは6回、一死後本日初めてスタメン四番の藤村富美男が三失で一気に二塁へ、藤井勇左前打、伊賀上良平の左中間二塁打で1点を先制、カイザー田中義雄の三ゴロで藤井は本封されるが、続く西村幸生の三ゴロをサード林信一郎が失して2-0とする。

 阪急は7回、この回先頭の山下好一が右翼線に二塁打、山下実が右越えに第4号ツーランを放っ2-2の同点とする。タイガースは西村から若林忠志にスイッチ。

 タイガースは8回、先頭の伊賀上四球、田中が送って若林の遊失で一死一三塁、ここで当たっている岡田宗芳が左翼線に決勝タイムリーを放って3-2として若林で逃げ切る。

 阪急先発中田武夫はヒットを許しながらも好投、8回を8安打3四球3三振で完投するが惜敗。

12年秋 第8節 週間MVP

 今節はイーグルスとタイガースが4勝1敗、金鯱とジャイアンツが3勝2敗、名古屋と阪急が2勝3敗、ライオンとセネタースが1勝4敗であった。


週間MVP

 投手部門

 イーグルス 中河美芳 1

 今節3勝1セーブ、イーグルス4勝の全てに貢献した。セネタース4回戦では味方が17点、6回戦では11点の猛攻を見せたが、中河のテンポの良い投球が打線にも好影響を与えている。


 打撃部門

 タイガース 松木謙治郎 1

 秋季リーグ戦は不振が続いていたが、今節は21打数6安打、一番打者ながら5試合で8打点をあげる活躍を見せる。

 ライオン 鬼頭数雄 1

 チームは1勝4敗ながら、今節21打数11安打、5試合中猛打賞3回という猛打を見せる。


殊勲賞

 イーグルス サム高橋吉雄 1

 セネタース4回戦で5打数5安打。イーグルス不動の四番。


 金鯱 鈴木鶴雄 1

 名古屋5回戦では2回から7回までパーフェクトピッチングで3安打完封。


敢闘賞

 名古屋 松尾幸造 1、阪急 丸尾千年次 1

 今節は同一カード三連戦が組まれたが、19日の名古屋vs阪急4回戦では丸尾が2対1で松尾を降し、21日の6回戦では松尾が3対0で丸尾に雪辱。二度にわたる名勝負を見せたことから二名同時受賞となった。


技能賞

 タイガース 岡田宗芳 1

 今節15打数7安打6得点。九番打者としては異例の5試合連続得点を記録する。一番松木の8打点は岡田のつなぎによるところが大きい。九番打者の連続得点試合記録を調べた人は歴史上一人もいないのではないかと思われますが、岡田の記録は世界記録の可能性がある。

2010年10月18日月曜日

1975年10月15日 広島初優勝!

 スポニチを購読されている方はご存知のとおり、今月の「我が道」は山本浩二です。「我が道」とは、日経を読まれている方には「スポニチ版・私の履歴書」と言えば分かりやすいでしょう。本日はいよいよ広島初優勝の場面でしたので、緊急特別企画として、「当ブログ的広島初優勝」の模様をお伝えいたします。

 私が広島ファンとなったのは1973年からであり、理由は、大ファンだった西鉄ライオンズが消滅したからです。当時の広島は山本浩司、衣笠、三村、水谷が力を付けてきた時期でありましたがまだまだ下位を低迷していました。

 広島を変えたのは、ジョー・ルーツ新監督です。ルーツ監督は4月27日の阪神戦を最後に帰国しましたので公式戦で指揮をとったのは15試合だけです。日本初の外国人監督をこの目で見に行くべく4月最初のヤクルトvs広島戦を神宮球場で観戦しましたので、貴重なルーツ監督の目撃者でもあります。

 この年最も印象に残っている試合は6月19日のヤクルト戦に永本裕章投手で勝った試合です。この年の広島は序盤戦からトップ争いに加わり、例年ですと鯉のぼりの季節までと言われていたのが6月に入っても上位争いに踏み止まっていましたが遂に息切れ、それもそのはず、外木場、佐伯、池谷の三人で回していたのですから。

 この試合はいわゆるローテーションの谷間に当たり、この頃には私も古葉監督になったつもりで毎日ローテーションを考えていたのですが、外木場で強硬突破論が出ていた中、ここは永本を使って三本柱を休ませるべきであると考えていたら本当に永本が先発しました。
 当時の永本はオーバーハンドからのストレートに力があり、期待されながら結果が出ないという状況でした。しかし球の力では佐伯に負けないものを持っていると考えていましたので、ここは思い切って永本先発で行くべきであると結論付けたのです。

 確か5回まで無失点に抑え、6回か7回で降板したと記憶しています。その後は当然渡辺-宮本の阪急からの移籍コンビによる必勝リレーだったはずです。

 後年、古葉監督の著書でもこの日の永本先発に触れており、この試合が優勝への決め手になったと読んだときは感動モノでした。永本裕章投手はその後も成績は上がらなかったのですが、サイドスローに転向して1982年の阪急時代、突然15勝して素質を開花させました。

 続いて登場してもらうのは渡辺、宮本の阪急からの移籍コンビです。この二人がいなかったら広島初優勝はあり得ませんでした。

 とにかく渡辺弘基は毎日投げていました。本当は毎日のようにと書くべきかもしれませんが、私の記憶では間違いなく毎日投げていました。最初は左打者へのワンポイントが多かったのですが、徐々に1イニング、2イニングと投げる回数も増えていきました。

 この年のリリーフエースは金城であったと記憶されている方も多いかもしれません。金城は下手からの快速球で前年20勝しました。オフの交通事故で失明の危機となりましたがシーズン後半復帰して抑えの切り札となり胴上げ投手にもなりました。
 しかし、シーズン序盤から中盤にかけての最も苦しいところで抑えの切り札だったのは宮本幸信です。この年痛む肘を庇いながら10勝10セーブを上げています。私が宮本を最も評価している点は、金城がクローザーとなってからもくさることなくセットアッパーとして任務を全うし切った点にあります。広島ではリリーフ投手であったためあまり打席に立つシーンはあまりありませんでしたが、打者顔負けのスウィングでした。Wikipediaによると阪急時代にはサヨナラホームランを打ったことがあるそうです。

 いよいよ10月15日の優勝決定試合に行きます。この日私は高校の授業をサボって後楽園球場の三塁側スタンドにおりました。下の写真は物的証拠であるこの日後楽園の三塁側スタンドに応援に行った観客に配られた「しゃもじ」です。

 大下の先制点となる二塁打はレフト線に飛んだため私の位置からではフェアかファウルか分からなかったのですが、歓声によりフェアであることを認識しました。

 ホプキンスがスリーランを打った直後、あのおとなしかったホプキンスがガッツポーズをしました。この場面の写真は紙媒体では見たことがなかったのですが、インターネット時代になって某サイトでホプキンスのガッツポーズシーンの写真を見た時に、鮮やかに記憶が甦ってきました。

 柴田のレフトフライを私の目の前で水谷が捕球して優勝が決まりました。古葉監督に続いてインタビューに出てきたのは、私の記憶ではこの日ノーヒットだった山本浩二でした。絶叫と涙で何を言ってるのかあまり分かりませんでした。続いて殊勲のスリーランのホプキンスと誰もが思った瞬間、インタビューが終わりました。一瞬白けた雰囲気の後、球場全体から突如として「ホプキンス・コール」が沸き起こりました。この日のスリーランだけにとどまらず、広島ファンがいかにホプキンスに感謝していたかを如実に物語るシーンでした。優勝の瞬間よりも感動したことを鮮明に覚えています。
 
 以上が私が目撃した広島初優勝の全てです。



*写真は1975年10月15日、後楽園球場三塁側スタンドに駆けつけた観客に配られた応援用の「しゃもじ」。




*日付は私が書き込んだものです。



 

2010年10月17日日曜日

一騎討ち ⑫

 遂にロイ・ハラデーとティム・リンスカムによる当シリーズタイトル通りの「一騎討ち」が実現いたしました。試合前のワクワク感と言う点においては、1986年オールスターゲームのドワイト・グッデンvsロジャー・クレメンスの対決以来のものです。

 ハラデーがナショナル・リーグに移ってきた今季は直接対決がなく、昨年のオールスターの先発対決以来となりますが、100%間違いなく近年のオールスターゲームは80年代のオールスターのような面白味がありませんので、本日が初の「一騎討ち」であることは疑う余地がありません。

 因みに大リーグ史上1980年代が一番面白かったことは多くの方が認めていることであり、客観的数値でいえば、80年代はワールドシリーズの視聴率が30%を超えていたのに比べ、近年の視聴率はヤンキースが出場すれば10%を僅かに超えますがヤンキースが不出場の場合は一桁台が普通です。因みに80年代はヤンキースは一度もワールドシリーズに出場しておりません。

 本題に戻りますが、本日の対決がいかに注目を集めていたかを測る指標としては、例のヤンキース大好き某国営放送ですら、ヤンキースvsレンジャース戦を午後の録画放送に回して本日の「一騎討ち」をライブ放送したことに如実に現れています。
 但し、本日の放送はアナウンサーからも解説の佐野氏からも興奮が伝わってくる名放送でした。国営放送である立場を思い起こして、視聴率の取れそうなカードばかりの放送体制を改め、本日のような真に国民に伝えるべき価値の高いゲームの興奮を伝えてもらいたいと切に願っています。
 

12年秋 阪急vsジャイアンツ 6回戦

10月24日 (日) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 阪急       13勝16敗2分  0.448  重松通雄 石田光彦 笠松実
0 0 0 2 2 0 2 2 X 8 ジャイアンツ  22勝11敗        0.667  スタルヒン


勝利投手 スタルヒン 12勝3敗
敗戦投手 重松通雄   1勝1敗


二塁打 (阪)黒田、野上
三塁打 (ジ)筒井


スタルヒン、今季三度目の完封


 ジャイアンツは4回、この回先頭の水原茂が四球で出塁、中島治康の投ゴロが野選を誘い、伊藤健太郎三振後、白石敏男の右前打で一死満塁、内堀保が押出し四球を選んで1点を先制、更に重松通雄のワイルドピッチにより2-0とする。

 ジャイアンツは5回、一死後筒井修が右中間に三塁打、水原茂の中前タイムリーで3-0。阪急ピッチャーは石田光彦に交代、伊藤が左前打で続き、白石の右前タイムリーで4-0とする。更に7回、筒井が四球に歩くが盗塁失敗、水原四球、中島左前打、石田の二塁牽制悪投の間に水原が一挙に生還して5-0、伊藤左前打から白石が再び右前にタイムリーして6-0。8回にも代わった三番手笠松実からスタルヒン、前川八郎、水原がヒットを連ねて2点を追加、8対0で快勝する。

 スタルヒンは5安打無四球6三振、今季三度目の完封で12勝目をあげる。6分後に後楽園で西村幸生が11勝目をあげるがハーラー単独トップの座を守る。

12年秋 名古屋vs金鯱 6回戦

10月24日 (日) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 名古屋  10勝20敗2分  0.333  松尾幸造 森井茂
1 0 0 6 0 0 0 0 X 7 金鯱      16勝15敗        0.516  中山正嘉


勝利投手 中山正嘉 3勝5敗
敗戦投手 松尾幸造 3勝3敗


二塁打 (金)相原
三塁打 (名)小島 (金)松尾


金鯱、効率よく加点


 金鯱は初回、二番江口行男が四球で出塁、続く矢野槇雄が左中間に三塁打を放って1点を先制。

 名古屋先発の松尾幸造は2回、3回と2三振ずつを奪って立ち直ったかに見えたが金鯱は4回、初回の死球で3回から退いた黒澤俊夫に代わりレフトに入っている佐々木常助が四球で出塁、小林茂太右前打、瀬井清のバントが内野安打となり無死満塁、相原輝夫、中山正嘉と連続押出し四球で3-0となり松尾はKO、森井茂がリリーフで登場。島秀之助は二ゴロに倒れるがこの送球をファースト小島茂男が後逸する間に二走相原までホームに還り5-0となりなお無死二三塁、江口が中前に2点タイムリーを放ちこの回6点、7-0とする。

 中山正嘉は久々に好投を見せ名古屋打線を8回まで零封、大沢清、森井、石丸藤吉のヒットで満塁とされ、石田政良に押出し四球を与えて完封は逃すが結局6安打7四球1死球5三振の完投で3勝目をあげる。

 金鯱は6回以降無安打、4回にヒットを集中させて6安打で7点を奪う効率の良い攻撃を見せる。

2010年10月16日土曜日

12年秋 セネタースvsタイガース 6回戦

10月24日 (日) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 1 0 0 0 0 0 0 0 2 セネタース  11勝19敗1分  0.367  野口明 浅岡三郎
0 0 0 1 1 0 4 0 X 6 タイガース  26勝6敗          0.813  西村幸生


勝利投手 西村幸生 11勝3敗
敗戦投手 野口明    8勝11敗


二塁打 (セ)中村信 (タ)西村、岡田
三塁打 (タ)藤村
本塁打 (タ)西村 1号


西村幸生、投打に活躍


 セネタースは初回、先頭の中村信一が死球で出塁、苅田久徳の投ゴロでランナーが入れ替わり、尾茂田叶中前打、中村民雄四球で一死満塁、野口明の右犠飛で1点を先制する。更に2回、二死後北浦三男が死球で出塁、中村信が左中間にタイムリー二塁打を放って2-0とする。

 タイガースは4回、一死後三番伊賀上良平が四球で出塁、山口政信の遊ゴロは6-4と渡り得意の併殺かと思われた瞬間、ショート中村信の送球が高く逸れて一死一二塁、二死後藤井勇が中前にタイムリーを放ち1-2。更に5回、西村幸生が右翼スタンドに同点ホームランを放ち2-2とする。

 タイガーは7回、この回先頭の藤村富美男が右中間に三塁打、西村が左中間に二塁打を放って3-2、岡田宗芳も左中間二塁打で続き4-2、松木謙治郎の右前タイムリーで5-2、二番ライトに入る御園生崇男のピッチャー強襲ヒットで無死一二塁、伊賀上の中前タイムリーで6-2とする。

 西村幸生は3安打4四球3三振の完投で11勝目、打っても4打数2安打2得点2打点の活躍を見せる。

12年秋 ライオンvsイーグルス 6回戦

10月24日 (日) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 1 0 0 0 2 0 0 0 3 ライオン       10勝21敗       0.323  近藤久 菊矢吉男
2 0 0 0 1 0 3 0 X 6 イーグルス  16勝16敗1分  0.500  畑福俊英 中河美芳


勝利投手 畑福俊英 8勝10敗
敗戦投手 近藤久   2勝7敗
セーブ    中河美芳 1


二塁打 (ラ)大友、桜井 (イ)小島
本塁打 (ラ)水谷 1号


中河美芳、八面六臂の活躍


 イーグルスは初回、先頭の寺内一隆が左翼線にヒット、本日は二番ファーストに入る中河美芳の投ゴロでランナーが入れ替わり、バッキー・ハリスの右前打で一死一三塁、サム高橋吉雄は浅い中飛に倒れて二死一三塁、ハリスが二盗を決め小島利男四球で二死満塁、杉田屋守が右前に2点タイムリーを放ち2-0と先制する。

 ライオンは2回、坪内道則が中前打で出塁、藤浪光雄の遊ゴロで坪内は二進、柳澤騰市が右前にタイムリーして1-2とする。

 イーグルスは5回、先頭の小島が左中間に二塁打、杉田屋の遊ゴロで小島は三進、畑福俊英四球で一死一三塁、辻信夫に代わる代打野村実の三ゴロをサード柳澤が失する間に小島が還り3-1とする。

 ライオンは6回、先頭の大友一明が左中間に二塁打、続く水谷則一が右翼スタンドに同点ツーランホームランを叩き込み3-3とする。

 イーグルスは7回、一死後畑福が三打席連続で四球を選び出塁、野村左前打で無死一二塁、ライオンはここで先発近藤久から菊矢吉男にスイッチ、しかし漆原進四球で無死満塁、寺内が右前に殊勲の2点タイムリーを放って5-3、ワイルドピッチで一死二三塁とすると、中河がスクイズを決めて6-3。

 イーグルスは8回から畑福に代えてファーストの中河がマウンドへ上り、2イニングを抑えて快勝。中河美芳は先発しない時は二番ファーストに入り本日はスクイズを決めてセーブをあげるという八面六臂の活躍。かつて大石大二郎が売り出し中の時、大石のルーキー時代に監督最終年だった西本幸雄がテレビ解説(多分プロ野球ニュース)で「大石は何をやらしても巧い」と言っていましたが、イーグルス森茂雄監督は「中河は何をやらしても巧い」」と言っていることでしょう。

12年秋 ジャイアンツvs阪急 5回戦

10月23日 (土) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 3 0 0 1 2 0 6  ジャイアンツ  21勝11敗       0.656  前川八郎 青柴憲一
5 0 0 0 2 0 0 0 X 7  阪急             13勝15敗2分  0.464  中田武夫 丸尾千年次 石田光彦


勝利投手 中田武夫 1勝3敗
敗戦投手 前川八郎 2勝3敗
セーブ    石田光彦 2


二塁打 (ジ)筒井、前川
本塁打 (阪)山下実 3号


復活石田光彦、見事な火消し


 阪急は初回、一死後黒田健吾四球、二死後山下実、宮武三郎連続四球で一死満塁、キヨ野上清光押出し死球、林信一郎押出し四球で2-0、大原敏夫の中飛をセンター平山菊二が落球して4-0、中田武夫が右前にタイムリーを放ち、制球のままならない前川八郎から1安打で5点を奪う。

 ジャイアンツは4回、一死後伊藤健太郎が三失に生き、前川、永澤富士雄連続四球で一死満塁、内堀保が左翼線にタイムリーを放ち1-5、青柴憲一の三ゴロが野選を誘い2-5、白石敏男の右飛で3-5と追い上げを見せる。

 阪急は5回、一死後山下好一が四球で出塁、山下実が右翼スタンドに第3号ツーランホームランを放って7-3と突き放す。
 
 ジャイアンツは7回、先頭の白石が四球で出塁、阪急はここで先発中田武夫から好調丸尾千年次にスイッチ、しかし筒井修左前打、水原茂四球で無死満塁、中島治康の右翼後方への犠飛で4-7とする。この際一走水原もタッチアップから二塁を狙うがライト山下実-セカンド野上-ショート黒田と転送される見事な中継プレーで水原はタッチアウト、試合の分岐点となる。

 ジャイアンツは8回、先頭の前川四球、永澤中前打、内堀四球で無死満塁、阪急はここで丸尾を下げて三番手に久々登場となる病気療養明けの石田光彦を投入、青柴の左犠飛で5-7、更に二走永澤も三塁に走り、レフト山下好一からの返球をサード林が失する間に永澤も還って6-7、一走内堀も三塁に達してなお一死三塁、続く白石の打球もレフトへの飛球、山下好一が捕球するや三走内堀は本塁へ突進、山下好一からのバックホームをカットしたピッチャー石田光彦が内堀を刺してダブルプレー。

 病気療養のため10月2日以来の登板となる石田光彦は9回も先頭の筒井を四球で歩かせるものの最後は中島を一ゴロ併殺に打ち取って見事な火消しを見せる。阪急は僅か2安打で7点をあげてジャイアンツに快勝。

12年秋 金鯱vs名古屋 5回戦

10月23日 (土) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 金鯱      15勝15敗        0.500  鈴木鶴雄
0 0 0 0 0 0 0 0 X 0 名古屋  10勝19敗2分  0.345  繁里栄


勝利投手 鈴木鶴雄 8勝4敗
敗戦投手 繁里栄   0勝5敗


二塁打 (金)黒澤


鈴木鶴雄、3安打完封


 名古屋に本拠を置くライバル同士の5回戦は白熱の投手戦となった。金鯱先発の鈴木鶴雄は初回の先頭打者石丸藤吉に三塁内野安打を許した以降はパーフェクトピッチングを続ける。すなわち、初回二番の三浦敏一の送りバント以降、7回まで一人の走者も許さぬ好投。一方、名古屋先発の繁里栄も7回まで金鯱打線に6安打を許すも得点を許さず0対0のまま試合は8回を迎える。

 金鯱は8回、この回先頭の矢野槇雄が四球で出塁、四番小林利蔵が送って黒澤俊夫も四球、小林茂太は二飛に倒れるが、瀬井清が左前に決勝タイムリーを放って遂に均衡が破れる。

 鈴木鶴雄は8回一死後、石田政良に右前打を許すが無失点で切り抜け、9回も一死後高木茂に左前打、石丸藤吉にこの日唯一の四球を許すが三浦敏一を遊ゴロ併殺に打ち取り、結局3安打1四球2三振の完封で8勝目、エース古谷倉之助病気休養の穴を埋める活躍を続けており金鯱は勝率5割に復帰する。繁里栄もよく投げたが球運に見放され五連敗。

 翌日の読売新聞は「金鯱の老獪鈴木投手は徹頭徹尾うま味タップリの投球・・・(中略)・・・カーブに或はスローボールに全く感服すべきピッチングであった、これに対する名古屋の繁里も最初から力で対し金鯱の好調な攻撃を完全に近く抑え・・・」と伝えている。名古屋ダービー第五戦は両軍無失策の引き締まった試合、鈴木鶴雄、繁里栄という歴史に埋もれた二人の投手による白熱の投手戦であった。

12年秋 タイガースvsセネタース 5回戦

10月23日 (土) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 3 3 0 0 4 10 タイガース  25勝6敗         0.806  御園生崇男 若林忠志
3 0 0 0 1 0 0 0 0 4  セネタース  11勝18敗1分 0.379  野口明


勝利投手 若林忠志 6勝2敗
敗戦投手 野口明   8勝10敗


二塁打 (タ)田中、本堂、岡田 (セ)中村信
三塁打 (タ)門前
本塁打 (タ)松木 1号 (セ)苅田 2号


若林忠志、好リリーフで6勝目


 セネタースは初回、先頭の中村信一が左中間二塁打で出塁、苅田久徳の遊ゴロで中村信は三進、尾茂田叶は投飛に倒れるが中村民雄四球で二死一三塁、ここでダブルスチールを決めて1点を先制。中村民が二盗、野口明の中前打で二死一三塁、家村相太郎が左前にタイムリーを放ち2-0、野口は三塁に進み家村も送球の間に二塁に達して二死二三塁、ここで野口明が単独ホームスチールを決めて3-0、セネタース得意の脚を絡めての攻撃で3点を先制する。

 タイガースは5回、この回先頭の本堂保次が四球で出塁して盗塁、一死後岡田宗芳も四球を選んで一死一二塁、ここで松木謙治郎が右翼スタンド上段に同点スリーランホームラン。春季リーグ戦4本塁打の松木の今季第1号で3-3の同点に追い付く。

 セネタースは5回裏、二死後苅田が左翼スタンドに第2号ホームランを叩き込んで4-3。タイガースは6回、山口政信四球、藤井勇左前打、山口三盗を決めて無死一三塁、ここで久々先発マスクとなる門前真佐人が右中間に逆転三塁打を放って5-4、御園生崇男が右前にタイムリーして6-4とする。

 タイガースはリードを奪ったところで先発御園生をライトに下げて若林忠志をリリーフに投入、ライトの藤村富美男をセカンドに回して本堂を下げ、殊勲の門前真佐人に代えてカイザー田中義雄がマスクを被る。タイガースは9回、岡田左翼線二塁打、松木中前打、藤村中前打、伊賀上良平四球、山口右前打、藤井中前打とヒットを連ねて4点を追加、10対4でセネタースを降す。

 リーリーフの若林忠志は4イニングを1安打無四球1三振。現行ルールでは5回を投球完了して6回に味方が逆転した場面でマウンドを降りた御園生崇男が勝利投手となりますが、公式記録では若林忠志が6勝目。当時の勝利投手の決め方は記録者の主観に委ねられている部分があることはこれまでもお伝えしている通りです。先発の御園生は5イニングを投げて5安打2四球2三振4失点4自責点、ピッチング内容は明らかに若林の方が上ということで勝利投手が記録されたものと考えられます。

12年秋 イーグルスvsライオン 5回戦

10月23日 (土) 後楽園


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
1 3 0 0 0 0 0 0 0 4 イーグルス  15勝16敗1分  0.484  中河美芳
0 0 0 0 0 1 0 1 0 2 ライオン      10勝20敗        0.333  菊矢吉男


勝利投手 中河美芳 5勝4敗
敗戦投手 菊矢吉男 6勝8敗


二塁打 (イ)漆原、中根、高橋 
三塁打 (ラ)鬼頭
本塁打 (イ)中根 1号


中根之、完全復活


 イーグルスは初回、一死後二番に復帰して四試合目となる中根之が何とレフトスタンドに流し打ってのホームラン。翌日の読売新聞で評論家・宇野庄治氏も「中根が珍しくも左翼スタンドに放った本塁打」と伝えている。

 イーグルスは2回、二死後九番漆原進が左越えに二塁打、寺内一隆四球後、中根が今度は右中間にゴロで抜ける二塁打を放ち二者が還って3-0、バッキー・ハリスの遊ゴロをショート中野隆雄が失する間に中根が還って4-0とリードする。

 中河美芳の軟投にライオン打線は5回まで散発の2安打。ライオンは6回、先頭の一番鬼頭数雄が右中間に三塁打、一死後水谷則一の遊ゴロの間に鬼頭が生還して1-4。8回には中野、菊矢吉男、鬼頭の三連打で1点を返すがここまで。

 中河美芳は7安打1四球2三振の完投で5勝目、球界を代表する軟投派に急成長してきた。中根之は完全復活をアピールする3打点の活躍。

 2回のイーグルス3点のきっかけとなった漆原進の左越え二塁打について翌日の読売新聞は「平易な左飛を煤孫が目測を誤って二塁打とした」と伝えている。ライオンは本日も鬼頭数雄がセカンドで先発、煤孫伝をレフトに入れたが、結局3回から煤孫を下げてキャッチャーに原一朗を入れ、先発マスクの藤浪光雄をサード、サードの大友一明をセカンドに回して鬼頭数雄をレフトに戻している。煤孫はバッティングがいいので小西徳郎監督は何とかして使おうとしているが、春季リーグ戦にファーストでデビューした際にはタイムリーエラーを連発し、外野に回っても守備で足を引っ張るケースが散見される。