2010年7月19日月曜日

12年春 ジャイアンツvsタイガース 8回戦

6月27日 (日) 洲崎


1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 計
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0   0   1   1 ジャイアンツ    36勝11敗1分 0.766 澤村栄治
0 0 0 0 0 0 0 0 0  0   0   0   0 タイガース       35勝11敗1分 0.761 西村幸生-景浦将


勝利投手 澤村栄治 21勝3敗
敗戦投手 景浦将    9勝4敗


二塁打 (ジ)筒井、三原


澤村と心中


 藤本定義監督はスタルヒン-澤村の継投策ではなく、澤村と心中する道を選んだ。首位タイガースに0.5ゲーム差と迫ったジャイアンツは今季初の二試合連続先発となる澤村栄治を建てて必勝を期す。一方タイガースは25日の大東京戦を4イニングで切りあげた西村幸生が万全の状態で先発。宇治山田の生んだ両雄により雌雄が決することとなった。
 試合開始午後1時ちょうど。主審二出川延明、塁審池田豊、沢東洋男。この日のスコアブックには観衆の数は未記載となっているが、日曜の洲崎は超満員であったと伝えられている。天候の欄には「曇 風強し 時々雨あり」と記載されている。センターからの強風で澤村の速球が威力を増し、西村の変化球が曲がらなかったとも伝えられている。大和球士氏著「真説日本野球史」では「名勝負六花撰」その一としてこの試合を詳細に伝えている。日本野球史に残る名勝負である。


 ジャイアンツは初回三者凡退。2回、永澤富士雄に初ヒットが出るが無得点。3回、先頭の内堀保が四球を選ぶが澤村は強攻策に出てレフトフライ、呉波三振、水原茂2ゴロで無得点。
 タイガースは3回まで3者凡退が続く。2回先頭の景浦将と3回最終打者の岡田宗芳が三振。門前真佐人と伊賀上良平が捕邪飛に打ち取られており澤村の速球の伸びを窺わせる。


 ジャイアンツは4回、二死から前川八郎が四球を選ぶが永澤は左飛に倒れる。5回、この回先頭の筒井修が右中間に二塁打を放ち出塁、内堀の三前送りバントが内野安打となり無死一三塁のチャンスを迎える。タイガースベンチは西村を諦めライトから景浦がマウンドへ、ライトには玉井栄が入る。今日の風では西村の変化球よりも景浦の剛球が合っているという判断も働いたのではないか。続く澤村の投ゴロで一死二三塁、しかし呉は二ゴロ、水原は左飛に打ち取られて得点はならず。6回、二死から又も前川が四球で歩くが永澤遊ゴロでチェンジ。
 タイガースは4回、二死から藤村富美男が中前に痛打を放ち初ヒットを記録するが景浦は遊ゴロに倒れる。5回も一死後門前が中前打を放つが伊賀上三ゴロ、玉井遊ゴロでチェンジ。6回は三者凡退に終わる。


 ジャイアンツは7回、先頭の筒井が左前打で出塁、内堀の送りバントをキャッチャー門前は二塁に送球するがこれが野選となり無死一二塁、澤村が送って一死二三塁、しかし呉は一邪飛、水原は一ゴロに倒れて無得点。8回、一死後中島治康が四球で出塁、前川の遊ゴロで二死二塁、永澤の二球目に捕逸で二死三塁とするが永澤三振。9回、二死から澤村がショートへの内野安打で出塁するが呉は二ゴロでチェンジ。
 タイガースは7回から9回まで三者凡退を繰り返し延長戦に突入。この試合は第一試合のため延長は12回で打ち切られる(翌日の読売新聞市岡忠男の論評の中で「第一試合は十二回までで無勝負の場合は引分」と説明されている。)。


 10回表、ジャイアンツは三者凡退。10回裏、タイガースは一死後景浦が右前打を放ち出塁、しかし山口政信は遊ゴロ、門前は左邪飛に倒れる。11回表、ジャイアンツは三者凡退、11回裏、タイガースは伊賀上捕邪飛、玉井三振、岡田も三振で三者凡退。いよいよ規程により打ち切られる最終回へ突入。

 12回表、ジャイアンツは先頭の内堀が四球で出塁、代走にベテラン山本栄一郎を起用する。澤村は三塁前に送りバントを決めて一死二塁、呉に代わる代打平山菊二は一邪飛に倒れて二死二塁、タイガースはライトを玉井から塚本博睦に交代、水原の当りは三塁内野安打となり二死一三塁、ここで三原脩が右中間に二塁打を放ち山本が還って遂にジャイアンツが1点を先制する。中島は遊ゴロでタイガース最後の攻撃へ。
 12回裏のタイガースはトップの松木謙治郎からの攻撃。現在首位打者の松木はライトフライ、藤井勇は二ゴロに倒れてツーアウト、最後は藤村が二ゴロに倒れ、澤村は延長12回を投げ抜きタイガース打線を散発の3安打無四球8三振に抑えて今季7度目の完封で21勝目。ジャイアンツはタイガースを逆転して0.5ゲーム差で首位に躍り出ると共に直接対決が終了し、ジャイアンツにマジックナンバー8が点灯する。

 職業野球を代表するこのカードは結局ジャイアンツ5勝タイガース3勝という結果であった。ジャイアンツの5勝は全て澤村栄治によるものであり、タイガースが今春行った投手版半尺手前からの打撃練習は遂に春季リーグ戦においては実ることがなかった。しかしこの後夏のオープン戦、秋季リーグ戦においてタイガース打線が澤村を打ち崩していくことは御承知の通り。相撲界では「3年先の稽古」ということが言われますが、野球のトレーニングは半年先に効果が出てきます。現役諸君はオフのトレーニングを怠らないように。

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