2010年6月13日日曜日

12年春 タイガースvsジャイアンツ 6回戦

5月30日 (日) 西宮


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
2 0 0 1 0 0 0 3 0 6 タイガース  21勝7敗1分 0.750 西村幸生-景浦将
0 0 0 0 0 0 3 0 0 3 ジャイアンツ 21勝8敗1分 0.724 前川八郎-スタルヒン-澤村栄治


勝利投手 景浦将  6勝2敗
敗戦投手 前川八郎 3勝3敗


二塁打 (タ)景浦 (ジ)白石
三塁打 (タ)藤井2、山口
本塁打 (タ)松木 3


松木謙治郎、決勝スリーラン


ジャイアンツに首位の座を明け渡したタイガースは満を持して西村幸生が先発。一方ジャイアンツは前川八郎の先発で応戦、スタルヒンへの代え時がポイントとなるであろう。
 タイガースは初回、松木謙治郎が右前にヒットで出塁、藤井勇が右中間を深々と破る三塁打で先制、藤井も山口政信の遊ゴロの間に生還して2-0と先制パンチを見舞う。4回にも二死から松木が中前打で出塁すると藤井が又も右中間に三塁打を放ち3-0とする。そろそろ左の成田友三郎が出てこないと苦しいか。

 西村幸生は6回までジャイアンツ打線を2安打無得点に抑える好投を見せる。ジャイアンツは7回、遂に西村を捕えて水原茂、三原脩が連続四球、中島治康の三ゴロは内野安打となり更にサード伊賀上良平の悪送球が重なり水原が生還して1-3、白石敏男が三遊間を破り2-3。ここで西村が退き景浦将がライトからマウンドへ登場、ライトには上田正が入る。伊藤健太郎に代わる代打永澤富士雄のスクイズはピッチャーへの小飛球となり白球を掴んだ景浦からサード伊賀上に渡りゲッツー、しかし続く内堀保が中前に弾き返して遂に3-3の同点に追い付く。

 ここでスタルヒン投入かと思われたが前川が続投、タイガースは先頭の門前真佐人四球、上田に代わる代打玉井栄が左前に運び無死一二塁、岡田宗芳が送って一死二三塁とする。ジャイアンツベンチはようやく重い腰をあげて前川に代えてスタルヒンを投入。バッターは本日も3安打と当りに当っている松木謙治郎、スタルヒンは松木に対してボールが先行しノーストライクスリーボールとなる。ここでジャイアンツベンチはスタルヒンを降板させて何と澤村栄治を投入。澤村の初球はストライクでカウントはワンストライクスリーボール、次の澤村の高めストレートを松木がライトスタンドに叩き込み6-3となり、景浦が8、9回を無得点に抑えてタイガースが昨日の雪辱を果たして首位の座に返り咲くこととなった。


 問題のスタルヒンから澤村への継投の場面であるが、現行ルールではスタルヒンが一人を投球完了していないのでアクシデントがない限り交代は認められない(当時のルールは不明)。なお、翌日の読売新聞にはスタルヒンから澤村に交代した場面はカウント2ボールの時と書かれているがスコアブックの記載(下写真参照)及び後述の松木の著書のとおり事実は3ボールの時である。そもそもこの日の前川先発が疑問符のつく起用であり、投手陣と首脳陣の間で意思の疎通を欠いていたのではないか。松木を歩かせることで意思統一が図られていたならスリーボールで澤村投入はあり得ない話であり、スタルヒンの投球が逃げ腰と映ったからこその澤村投入であろう。しかし、投げたくてうずうずしていたスタルヒンがベンチの優柔不断に反発していたと考える方が自然ではないか。


 松木謙治郎著「タイガースのおいたち」にはこの場面が詳細に記述されている。「このときのことを中村三五郎氏(のち中日代表)が戦評として次のように書いている。「・・・・岡田のバントに二走者を進塁せしめるや、巨人は初めてスタルヒンを救援せしめた。近頃物凄き当りを見せ、この日も既に三安打を放てる松木に対し、スタルヒンは敬遠の四球に満塁策を決意せるものか、3ボールを投じた瞬間、巨人軍は澤村を突然登場させた。・・・・松木に右翼観覧席に本塁打を叩き込まれる結果を招き、一挙3点のリードで・・・・。」澤村との対決はカウント1-3となったが、彼の性格からみて絶対歩かせることはしないと考えた。とにかく外野フライをねらっていたとき、高めに直球がきて、これがマグレの本塁打となったものだった。澤村の名がでると、このときの一打がすぐ頭に浮かんでくる。人間とはまったく身勝手なものだと思う。」










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