2010年5月12日水曜日

12年春 タイガースvsジャイアンツ 3回戦 その1

5月1日(土)洲崎


1 2 3 4 5 6 7 8 9 計
0 0 0 0 0          タイガース   景浦将
0 0 1 0 0        ジャイアンツ 澤村栄治


澤村栄治前半をノーヒットで折り返す


 現在9勝4敗で首位に立つジャイアンツと半ゲーム差で追うタイガースの首位攻防戦、お互い負けられない一戦とあってジャイアンツはエース澤村栄治が先発、タイガースは景浦将をマウンドに送る。天候は小雨であるが何とか持ちそうな気配、主審沢東洋男、塁審二出川延明、池田豊。2,534人の観衆が見守る中、午後2時58分沢主審が高らかにプレイボールをコール。

 澤村栄治は初回、先頭の松木謙治郎に四球を与えて出塁を許すも二番藤井勇をピッチャーフライに打ち取り一死一塁、今日はセンターを守り三番に入る御園生崇男をキャッチャーゴロに仕留めて内堀保がファーストの筒井修(三原脩の復帰後ファーストに回っている。)に送球して打者走者をアウトにする間に松木は二塁へ進み二死二塁、しかし四番小島利男をピッチャーゴロに打ち取り無難なスタート。先頭の松木に四球を与えた時はまたいつもの立ち上がりの悪さが出たかと心配されたがセットポジションの投球になって落ち着く。
 ジャイアンツは1回裏、先頭の呉波三振、二番水原茂セカンドゴロ、三番三原脩サードゴロで三者凡退、景浦将も好調な滑り出しで首位攻防戦の幕を開ける。

 澤村栄治は2回、この回先頭の五番景浦将から本日最初の三振を奪う。早くもライバル景浦に対して闘士満々。景浦を打ち取ってやや気が緩んだか続く六番藤村富美男を歩かせ一死一塁。しかし七番伊賀上良平をセンターフライに打ち取ると巧打者の八番岡田宗芳を三振に仕留めて藤村は一塁にくぎ付け。
 ジャイアンツは2回裏、この回先頭の中島治康がショートへの内野安打で出塁。五番筒井修は強攻策に出るがサードゴロ、サード伊賀上からセカンド小島に送球されて中島二封でランナーが入れ替わる。ここで景浦の一塁牽制をファーストの松木が後逸、一走筒井はセカンドを陥れて一死二塁となる。しかし六番白石敏男はセンターフライ、七番強打の伊藤健太郎は三振に倒れチェンジ。
 澤村栄治は3回、先頭の九番加藤信夫を三振に斬って取ると、トップに返って松木謙治郎も三振、更に二番藤井勇も三振、見事三者三振、前の回から四者連続三振となり、早くもエンジン全開。大和球士氏著「真説日本野球史」にはこの日の澤村のピッチングは「制球力のいい快速球と、三段落下の鋭く大きいカーブに、タ軍打棒を寄せ付けず」と記述されており、翌日の読売新聞では市岡忠男の論評に「この日の澤村投手はスピードも豊かで殊に直球、曲球申し分なきコントロールはタ軍打者の急所を衝いて余すところなく傍若無人にタイガースを翻弄」「三回の如き三者を三振に討ち取り」と記されています。
 ジャイアンツは3回裏、先頭の八番内堀保が右前安打で出塁、澤村の気迫の投球を受ける内堀としては何としてでも出塁してやるという気持ちであったであろう。九番澤村栄治の当たりは得意の流し打ちで遊ゴロ、ショート岡田からセカンド小島に送球、これを小島が後逸、内堀は三塁に進み無死一三塁と先制のチャンスが訪れる。トップに返り呉波の打球は右翼へゴロで抜けるヒット、内堀還りジャイアンツが1点を先制。ところがライト藤村富美男がこの打球を二塁に送球、澤村のスタートが遅れて二封となり、呉はヒットを一本損してライトゴロが記録される。この点、厳格な市岡忠男は論評に「呉の右前ゴロは当然安打となるべき質のものであったが一塁走者澤村の鈍足に安打の記録を失ったのは気の毒であると同時に澤村の不用意な走塁を戒めねばならない。」と厳しく指摘している。続く水原は三振、三原はセンターフライでこの回は1点止まり。

 澤村栄治は4回、この回先頭の三番御園生崇男をショートゴロに打ち取り、続く小島利男を三振に仕留める。この時キャッチャー内堀がボールをはじくが一塁に送球して事なきを得る。三振ナットアウトで記録は三振、内堀には補殺が記録される(捕手が捕球して三振が記録された場合は、公式記録員広瀬謙三氏の残したスコアブックには「SO」と記されており捕手には刺殺が記録される。本件のような三振ナットアウトの場合は「K]と記され、捕手に補殺、送球を受けた一塁手に刺殺が記録される。)。恐らく鋭く落ちるドロップを小島が空振りして内堀が捕り損ねたのではないだろうか。続く景浦将はサードゴロでチェンジ。
 ジャイアンツは4回裏、四番中島治康の当りはセカンドライナーで一死、筒井修はショートゴロに倒れ二死、続く白石敏男の当りはピッチャー景浦を強襲するがバックアップに入ったセカンド小島利男が捕球して一塁に白石を刺してチェンジ。前の回のエラーが失点につながっているだけに小島の気迫あふれるバックアップであった。
 澤村栄治は5回、先頭の藤村富美男に二打席連続の四球を与えるが、続く伊賀上良平のピッチャーゴロを二塁ベースカバーに入ったショート白石に送球、藤村を二封。続く岡田宗芳はライトフライ、加藤信夫からこの日7つ目の三振を奪い依然ノーヒットに抑えたままで前半を折り返す。
 ジャイアンツは5回裏、先頭の伊藤健太郎が三塁線にヒットを放ち無死一塁。続く内堀保はサードフライに倒れて一死一塁、澤村の当りは二打席連続ショートゴロとなり伊藤が二封、澤村が一塁に残り二死一塁、トップに返って呉波は三塁ファウルフライに倒れチェンジとなりいよいよ後半戦に突入。(明日に続く。)
 

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