2010年4月26日月曜日

一騎討ち ①

 新連載のご案内をさせていただきます。今年のナショナル・リーグサイ・ヤング賞争いは、早くもティム・リンスカムVSロイ・ハラデーの一騎打ちになったと言っても過言ではありません。ここまで共に4勝0敗、所属するサンフランシスコ・ジャイアンツ、フィラデルフィア・フィリーズも二人に引っ張られて好調です(ジャイアンツがリンスカムに引っ張られているのは明白ですが、フィリーズはハラデーがいなくても現在の位置をキープしているでしょう。)。

 そこで、緊急企画として、今年のナショナル・リーグサイ・ヤング賞争いをウォッチしていくこととさせていただきます。ご存じのとおり、ハラデー(ハラデイと表記するべきなのかもしれませんが、昔からハラデーと呼んでいるので当ブログではハラデーと表記させていただきます。)は2003年のアメリカン・リーグサイ・ヤング賞を受賞しており、リンスカムは2008年、2009年と2年連続ナショナル・リーグサイ・ヤング賞を受賞しております。リンスカムの三振奪取率が高い(と言うより突出している)ため、どうしてもサイ・ヤング賞候補No1になってしまいがちですが、3年連続受賞となれば、当然そのハードルが高くなるのは必然であり、現在のところ65対35でハラデー有利と考えております。

 4月の段階でサイ・ヤング賞を論じるなど早計過ぎるという反論が来ることは当然予想されますので、その前に再反論を準備させていただきます。4月に論じるのは早計過ぎるという意見の論拠は主に二つあると想定されます。すなわち、一つ目は、単純に現在調子がいいだけという意見、これに対しては過去の二人の実績から4月だけの特異性と断じるだけの根拠が見いだせないと反論させていただきます(すなわち、春の珍事とは言えないだけの実績を二人が有しているということです。)。二つ目は、故障するかもしれないのに何故4月にそんなことが言えるのかという意見、これに対しては、松坂等と違って二人は故障する確率が少ないためと反論させていただきます。ハラデーに関しては、過去の実績、投球スタイル、トレーニング理論の正確性から極めて故障は考えにくいことは多くの方に賛同していただけると思います。リンスカムに関しては、実質2年半しかない実績、一見無理のあるフォーム、シーズンオフのマリファナ事件から、ハラデーよりもはるかに故障する可能性が高い点は否めません。私の評価は、リンスカムの投球スタイルとフォームは故障しにくいものであるというものです。リンスカムの持ち球はきれいな回転のフォーシーム(Wikipediaにはツーシームと出ていますが、あの伸びのある速球がツーシームとは思えません)、正統派のカーブ、チェンジアップですが、このうち故障の原因となる可能性が最も高いのはカーブにあることは誰にでも思いつく点だと思います。果たしてスライダーは故障しにくく、カーブは故障しやすいのかという点が論点の中心となると思いますが、リンスカムが猿腕の持ち主であればカーブを持ち球としていても故障しにくいということは容易に想像できます。リンスカムが猿腕の持ち主であるかどうかは私は知りませんが、リンスカムが尊敬する父親(マイナーリーグの選手であった聞いています。違っていたらゴメンナサイ。)と現在の投球フォームを作っていく過程で、スライダーでいくかカーブで行くかの議論は再三にわたってなされたことは想像に難くなく、カーブのほうがスムーズに投げらるという確信から現在の投球スタイルになったと考えるほうが必然であると考えるならば、リンスカムが猿腕の持ち主であり、カーブを投げることにより故障しやすくなるという論拠が否定されることとなります(松坂等と敢えて固有名詞を出して例示させていただきましたが、私には2008年の投球フォームを見て2009年の故障は容易に予測できました。(この点に関してはリアルタイムで私の松坂評を聞いていた私の周りの友人たちに確認してください。)。2008年のフォームは、全盛期に比してかなり肘が下がっており(この点については左打者に対する外に逃げるツーシームを投げるために敢えて肘を下げているという解説が圧倒的に多かったと思います。)、肩をやるまで(現在の松坂が肘止まりであり肩まできていないと願っています。)の過程としてよくあるパターンであることは過去何人ものケースが実証しております(代表的事例としては昭和15年の澤村栄治)。松坂のそれまでの実績から本格的な故障にはつながらないと考えていた(穿った見方をすると、そうコメントしておかないと取材活動に支障をきたす恐れがあった)評論家が多かったようですが、2009年の故障を見てから「肘が下がっている」論が圧倒的に増えてきたのは残念です。)。
 リンスカムのような正統派オーバースローは、極めて故障しにくい理想的なフォームなのではないでしょうか。野茂は何度も手術を繰り返していますので故障がなかったとはとても言えませんが、松坂のように本格的にシーズンを棒に振るような故障はありませんでした。この点、今年のセンバツを制した興南高校の島袋投手も同様の理想的なフォームなのではないでしょうか。

 岐阜県の長良川球場に建立されている松井栄造投手(岐阜商業ー早稲田大学ー戦没)の銅像を見てください(Wikipedia「松井栄造」で見るのが一番容易でしょう)。松井栄造のフォームは左投手として理想的といわれておりますが、理想的なオーバースローのフォームです。もちろん松井栄造は肩を壊したため大学では打者に転向しておりますが、これは当時はローテーションという概念がなく、「アイアンコーノ」に代表されるようにエースは常にマウンドに立つものという理想論を現実に当てはめていたことによる肩の酷使によるものであり、フォームに起因しているものではありません。

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